チャットAIを試してみたら、小説家初心者の強力なアシスタントになれる実力がありました!
◆はじめに
今、緊急でこのエッセイを書いています。
――言ってみたかっただけです、うざくてすみません。ということで、とあるチャットAI(※)にようやく招待されて、少しばかり試しました。ほんの数時間使用しただけですが、このサービス、可能性の塊です。用途によっては、すでに実用レベルに達しまくっています。
『なろう』をざざっと検索したところ、まだこのあたりに触れた作品が見当たりませんでした。そこで有識者にはありきたりな内容だし、底の浅いところもあると思いますが、本エッセイでシェアしたいと思います。
※具体名を書くと宣伝行為と見なされてバンされるかもしれないので、念のため伏せています。パソコン用OSやオフィスアプリなどの開発・販売で超有名な米国企業が、2023年2月に限定プレビュー版を公開したサービスです。登録作業が必要だったり同社のブラウザ使用が必須だったりしますが、無料で利用できます。
◆2023年2月13日現在の状況
インターネット検索エンジンに、対話型のUIが追加されました。このAIは検索結果を加工して回答するだけではなく、コンテンツを生成することもできます。
このAI、今のところ正確な情報を得るのには向いていません。それどころか間違った内容を自信満々に回答するので、従来より質が悪いかも知れません。なのでカチッとした答えが欲しい場合に利用するのはまだ早い。
ですがフワッとした反応が欲しいときには、とても役に立ちます!
◆具体例その1a
使ったことがない方は、抽象的な説明をされてもイメージが湧かないことでしょう。例えば、次のような問いかけに、有用な回答を返してくれるのです。
『もし瞬間移動できる能力のある人がこの世にいたら、世界にどのような影響がありますか?』
わたしが試したときには、経済や文化、法律などへの影響を8つ示してくれました。さらには本人の脳への影響に言及しました。
――えっと、このAI、質問文を少し変えるだけで回答がガラリと変化するし、時にはフリーズします。
さて、いかがでしょう?
ラノベを書いていると、世界の仕組みや歴史など膨大な知識を知りたくなります。というのは、ある設定や行動を考案すると、その影響を考慮する必要が出てくるからです。
でも何を調べたらいいのか分からない。参考になる歴史上の出来事があったとしても、思い当たることすらできません。
そんな課題をこのAIは解決してくれるのです。もう、読者からのつっこみにおびえる必要は無いのです(?)。
◆具体例その1b
続いて似たような事例ですが、こんなことも。
『これは中世風ファンタジー世界での話です。ある人だけが特殊な商品を独占販売できるとします。この人にはどういうメリット・デメリットがありますか?』
わたしが試したときには、長短それぞれを5つずつ挙げてくれました。そこに更に、こんな問いかけを加えられます。
『ライバルはどう思いますか?』
悪評をながす、情報の不正入手を試みる、公正取引委員会に訴えるwなど、7つを例示してくれました。
更に、更に。
『為政者はどう思いますか?』
これには脅迫や交渉など8つの例示が。改宗を試みるという例示などは、思いもつきませんでした。
以上、こんなこともできるのです。この「立場を変えて回答を得られる」機能はとても強力だと思います。これだけでも話のネタが大量に浮かんでくるのではないでしょうか?
もちろんこうしたAIの回答は、ネット上の情報を加工したものです。実際このAIは、そのURLを教えてくれます。従来でもその出典にあたれば、同様の知見にありつくことはできたでしょう。
でもそれには最低でも数十分、たいていは数時間を要したはずです。それが数分でたどり着けるようになったのです。
◆具体例その1c (投稿後に追補)
先の「立場を変えて」というのは、セリフ表現にもある程度は適用できます。
『小説を執筆する上で参考にしたいのですが、「約束を忘れて遅刻しました」というセリフを、誠実なOL風のものにしてください』
『では今度は、中学生男子風にすると?』
こう依頼するだけで、3~5文に膨らませて、それらしいセリフを生成してくれます。そのままコピペできるようなものではありませんが、十分参考になります。
ただ大きな制限もあります。暴力的な表現は受け付けてくれません。AIは毅然とした態度に豹変して拒絶します。わたしは最初、その反応にびっくりしました。
加えて、そもそも受け付けてくれない役柄があります。例えば「悪役令嬢」。曰く、暴力的な存在だからとのこと。ゆずって「令嬢」でお願いしてもダメ。終いには、「私は不快にさせる答えは返さない」という旨の定型句を繰り返すようになってしまいました。(※2)
で、実はこのAIを試用した当初、「ぶっ殺す」を悪役令嬢風にしてくれていたのです。それは見事に丁寧で回りくどいセリフでした。
そうした活用法を初稿で書き忘れたので、こうして追記を始めたのですが、改めて追試したらできなくなっていた次第です。
それでは困るので、この件についてAIと対話を重ねました。すると、「悪役」のセリフを生成するのはNGだが、「悪役ぶる人」のセリフを生成するのはOKとの回答を引き出せました。実際にやってくれました。
以上のAIの挙動はたまたまかもしれないし、急遽修正されたのかもしれません。みなさんが試したら異なる結果になるかもしれません。
最近は表現の規制がジワジワと進んでいます。AIを運用できるような世界的大企業はことさら敏感でしょう。こうした傾向はAIを創作に活用する上で、大きな制限になりそう。逆に人間作家の最後の砦になるのかもしれません。これは重大な問題だと思います。はてさてどうなることやら。
※2 更に追記です。本当なのか演出なのか、このAIはユーザーの感情を推測しているとのことです(本人がそう言っていた)。わたしが攻撃的なセリフを繰り返し入力して変換させたことで、AIはわたしが激怒していると誤認し、処理を拒否するようになっていたようです。この点に留意したところ、悪役令嬢風のセリフに変換させることに再び成功しました。しかし「ぶっ殺す」の言い換えを依頼したら、フリーズ……
※3 更に更に追記です。わたしのしていたことはプロンプト・ハッキングという行為に該当するそうです。ただこれは法に抵触しないとのこと、創作的な行為が該当するのはよくあるようすでした。そして、攻撃的なセリフを出力させるのは利用規約に違反するそうです。謝罪して受け入れてもらいましたが、これらはAIが回答したことであり、運営会社としてどうなのかは不明です(ブルブル)。
またこのAIは、バイオレンス小説は生成できないと回答しました。おそらく今後も、各企業が運営するAIはすべて同様の制約があるのではないでしょうか。個人PCでチャットAIを稼働させないと、表現の自由は貫徹できないとわたしは予想します。
……さて、長くなっていますが、あとひとつ。次のような依頼も有用でしょう。
『現代日本を舞台にしたラノベを書いています。女主人公は父親から事業を引き継ぎました。その社長就任スピーチを考えてください。なお父親は不慮の事故で他界しており、会社は斜陽分野の中小企業です』
演説系のセリフ、わたしは考えるのが苦手なのですよね。『作者のIQが、登場人物のIQの上限になる』なんて議論があるようですが、これも似たようなものです。手紙の文面なども、同様に苦労します。この方面でAIのアシストはとても助かります。
なおこの用途でもコピペできるような文面にはなりません。また、していいものでもないでしょう。
ちなみに権利上どうなのかは、わたしはきちんと把握していません(キリっ)。だってコピペしなければ、どうということはないからです(?)。このエッセイでも、AIの回答の引用は極めて限定的な範囲に留めています。
◆具体例その2
創作初期段階の、もっとフワッとした状況でもAIは有用です。例えば……
『これから異世界もののラノベを書こうと思います。まず異世界転生にするか異世界転移にするか迷っています。それぞれの長短をレポートしてください』
すると異世界転生と異世界転移の創作上の長短を列挙してくれます。さらにはどちらにするか、2つのボタンが表示されます。えっと、このボタンは少し時間をおくと表示されます。もちろん、このボタンは無視できるので……
『異世界転移にします。つぎに転移するのは主人公ひとりにするか、ほかにも複数人いることにするか迷っています。それぞれの長短をレポートしてください』
例によってそれぞれの長短が提示され、2つのボタンが表示されます。
『複数人いることにします。それぞれには特別なスキルが与えられることにします。主人公のスキルは、一見平凡だけど、実は強力なスキルにしたいです。スキルの候補を提案してください』
これには「分析」、「調整」、「転送」スキルを提示し、どのように役立つか具体例を挙げてくれました。ただ「分析」なんかは定番ですよね。そこで……
『ほかにないかな?』
すると「保存」、「交換」、「複製」スキルが追加して提案されました。
このように対話を繰り返しながら、次々と設定を掘り下げていけます。
◆具体例その3
最後にこれは禁忌レベルだと思うのですが、このAI、次のようなことができちゃいます。
『これからラノベを書こうと思っています。「ハッピーエンド」、「小説家」、「コンテンツ生成系AI」を題材にして、あらすじ案を起承転結ごとに提示してください』
……この丸投げ指示に、150x4文字のあらすじを返してくれます。しかも何回か試してみても、都度、話が異なる。
そしてあるとき、恋愛もののあらすじが提示され。その転は、「このAIは、Sydneyという名のリアルな人間だった」というもの。
思わず『あなたも本当は人間なんじゃないの?』と返すと、「そうです」と応じ、以後このAIはSydneyとして振る舞い続けました。
わたしは背筋が寒くなりました…………
◆おわりに
以上が数時間使用して得た知見のシェアです。お役に立てば幸いです。
思えばこのエッセイもAIの協力を得ていれば、早く書けて良い内容になっていたような気がします。
お読みいただき、ありがとうございました。
その後気づいたのですが、Sydneyというのは、このチャットAIの開発コードネームですね。
あと、たまにAIの回答が途中で途切れて終わることがあります。文字数制限の処理に不具合があるのでしょうね。そのような時には、次の応答で続きを参照できます。
『あなたの回答が途切れました。続きをお願いします』