第六話 精神
夜中の森を歩き回って早2時間。森はどれだけ奇行をしても許される場所だと勝手に認識しているので、石を投げまくりながらそこら辺のベリーと薬草を手当たり次第に採取して放棄されていたカバンに入れていく。
さらに足音を消しながら歩く。ついでに投石用の石は遺棄されたカバンに入っていた石のナイフでちょっとだけ削る。これで重要なスキルが生えてくるに違いない。
そして、
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《投石:LV1》を獲得しました。
《投石:LV2》を獲得しました。
《投石:LV3》を獲得しました。
《投石:LV4》を獲得しました。
《投石:LVMAX》を獲得しました。
LVMAX特典としてSP10を獲得しました。
《採取:LV1》を獲得しました。
《採取:LV2》を獲得しました。
《採取:LV3》を獲得しました。
《採取:LV4》を獲得しました。
《採取:LV5》を獲得しました。
《忍び足:LV1》を獲得しました。
《忍び足:LV2》を獲得しました。
《忍び足:LV3》を獲得しました。
《忍び足:LV4》を獲得しました。
《忍び足:LV5》を獲得しました。
《忍び足:LV6》を獲得しました。
《忍び足:LV7》を獲得しました。
《基礎制作:LV1》を獲得しました。
《基礎制作:LV2》を獲得しました。
《基礎制作:LV3》を獲得しました。
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まあまあいい感じにスキルをとれた。これらのスキルは初級スキルに分類されるため、LVを上げるのがとても簡単である。実際片っ端から《鑑定》してるのにスキルLVは一向に上がらない。
まあポンポンスキルが上がるとやりこみ要素が薄くなるから俺は嫌いではないが。
さらに、ここら辺でそろそろ…
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個体名の中の人格の耐久値が負の値になりました。《精神分裂》を取得します…
…
失敗。
代替案として個体名に《精神崩壊:重》を付与します…
…
成功しました。
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ついに待ち望んだ事態がやってきた。
取り敢えずステータスチェック。
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名前:ユキノフ 状態:精神崩壊(重)
RANK:0
LV:1
HP:10/10
MP:323/4760
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ATK:50+20
DEF:10+5
RES:10
DEX:10
TEC:50+10
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本来自分として生まれる予定だった人間の魂がこの体にも当然入っている。その魂に引き摺られて、今の自分の思考能力や判断力が鈍っているのは間違いようがなかった。もし本当に最初から自分100%であったなら、家族のことを覚えることすらしなかっただろう。所詮赤の他人である。
この世界には感情によって自分のステータスが変動するという特徴がある。例えば、憤怒などではATKとRESが1.1倍上昇するが、TECが0.5倍に低下するなどが代表的だ。残念なことに、この感情システムは多くの場合バフよりデバフの方がはるかに重い。誰だってボス戦の前に怒り狂わないと本領発揮できないとかは嫌だろうから当然ではある。
この感情を無効化するにはいくつかの手段があるが、一番手っ取り早いのは感情の効果を無効にするアクセサリーをつけたり精神を安定させるポーションを飲んで誤魔化すのが普通の手だ。
しかし、それ以外でも感情システムを無効にする方法がある。それは自分の感情を破壊する、つまり感情を感じない精神崩壊状態に追い込むことである。
状態異常の一種であるこの状態は、軽、中、重、重大の4段階に分けられている。
軽では精神崩壊の原因となった感情を感じづらくなる。例えばそれが痛みであれば、針で刺されても何も感じなくなるくらいである。
中では大体槍で突き刺されてちょっと痛いくらい。
重になるとどう頑張ってもその感情を知覚することができなくなる。
重大とまで来ると完全に廃人となって精神崩壊の原因以外の感情すらも感じられなくなる。
正直日常生活で用いる感情を無くしたら不便だし、最初から自分をそこまで追い込むつもりはなかったのだが、今回の精神崩壊の原因は親族の死とそれを知っていて尚且つ止める方法も知っていたのにそれもできなかった罪悪感。
おそらく今回無くした感情は怒りと悲しみ辺りだろうか。
取り敢えず邪魔な体の元の持ち主は精神崩壊状態に陥った。
ちなみに精神分裂が付与されなかったのは元から精神分裂状態と同じように二つの魂が体の中に存在していたためどちらを分裂させればいいのかわからなくなるプログラムの穴をついている。もっとこういうバグ修正を行なっていればよかったのに。まあ今は感謝すべきだろう。