第五話 "反社会的行動"発生
その日、飛び起きた自分が最初に分かったのは、真っ赤に染まった空と焦げ臭い臭いだった。
一階から剣裁の音が聞こえた。
端的に言ってしまえば、放火である。
木造の屋敷は、面白いように燃えた。
もし、自分が《水魔法》を最初に会得していたら、この火災も沈められただろう。
しかし、実際には《火魔法》と《光魔法》を最初に取得していた。
この二つでは、火災を助長させることしかできない。
仮にもまだ三歳の身では、ようやく安定して走れるようになった足で階段を駆け下り、屋敷近くの森に猛ダッシュで逃げることしかできなかった。とにかく、逃げ切れたことを確認して安心する。
なにしろ、このイベントは明らかな幸運であり|、ご都合主義的なイベントだからである。
このイベント―反社会的行動―は国家の幸福度が50%を切ると確率で発生する。常に食糧が足りていないなら簡単に幸福度は底をついていただろう。
イベントの概要として、その家系の一番年齢が低い子供一人が逃げた場合にのみ確定で逃亡が成功するが、ほかの家族は逃げなければ確実に死亡し、逃げても生きられる確率は半々であるといういわゆるバッドイベントのなかでもかなりまずいものだ。
ただし、プレイヤーの年齢がまだ低い場合は、自由に単独行動ができるようになるという仕様があり、本来は成人するまでダンジョンや家族なしでの旅行には行けないが、生存目的で許可されるようになる。
もちろん家族を失うという代償がないとは言わない。しかし、この国はほぼ100%の確率でこのイベントが起こる仕様になっている。つまり避けられない運命は回避しようがない。
とりあえずまずは三歳なのに野営をする準備をしななければならない。
本当はもうちょっとベッドで寝ていたかった。
まあ、これからの生活が大変になることは間違いない。今日はおそらく4時間は寝たので徹夜しても大丈夫だろう。