第十七話 転機
今日も晴れ渡った快晴…ではなく、珍しく曇りからのスタートだ。
この地域は降水量が少ないため、こうして空が雲で覆われることも珍しい。
昨日途中で放り出した水力発電を作っておきたい。
今手元にある材料で水力発電機を作るのは無理なことに気づいた。
魔法というものはエネルギー保存の法則に真っ向から喧嘩を売るような性質を持っているので、無限に水を流して無限に発電することができるのはいい点だ。
しかし、原理は現代のものと同じでモーターを回転させてその物理エネルギーを電気エネルギーに変えている。
手元には磁石も、コイル作成用の銅も、そもそもあそこまで精密な部品を作れる鍛治スキルもないじゃないか。
しょうがないで済ませることが出来る程度の問題(?)を放り出して俺は村人たちに簡易的な武器を持たせることにした。
石槍なんて使ってるのは弥生時代までで結構。
この時代は少なくとも近世くらいなんだから、文明の利器(鉄製道具)を使っていただきたい。
手始めに鉄をひたすら槍の穂先にする。
次に木を風魔法で棒の形にする。
一日寝れば余裕でMPが全快するのはこのMP総量が少ない体だからこそできる芸当かもしれないなどと考えながら棒と槍を接合する。
あんまり手間をかけると良いものが出来上がってしまうので刃先が嵌ってはいるけど品質は低めの鉄槍を作る。
村人たちには是非自分たちの力で金属やら道具作成やらを行ってほしい。
まあまだ無理なのはわかっているからこうして自分で作成しているんだけど。
手元にできた鉄槍を村人の槍置き場に立て掛けておく。
見た目は黒曜石の槍と大して変わらないから新しい槍の補充として使ってくれるだろう。
…………ところであの全力でこっちに走ってくる馬はなんだ?
この村に馬を飼えるような備蓄や余裕はないはずだが…
「アルフレッドはいるか!?」
「…領主の館は燃え尽きて、生存者は…」
傷心してる風のセリフと声で騙すことにする。
甲冑の籠手に刻まれている紋章が明らかにアルフレッド家関係の人間だからね。
「…そうか…ところで君は誰だ?見た感じ貴族のようだが…」
「私はアルフレッドの親戚です。これが証明の紋章です。館が火事で焼けたと聞いて急いでここまで来て、とりあえず村人たちに事情は説明しました」
「ありがとう。助かるよ」
このイベントはあれだ、現当主が死んだ時に親戚が来て3〜4年程領地経営してくれるイベントだ。
本来は領地経営は自分でしたいのだが、今考えるとレベリングしてないし、折角の異世界転生なのに楽しむこともチート能力振るうこともしていない。チートとかないけど。
「じゃあ君は自分の領地に帰りなさい。君は多分まだ成人していないだろう?」
「すみません、後のことはよろしくお願いします。3年後くらいに恐らく私がここの領地を任されることになると思います。今のところ私の領地にはこれ以上分けられるスペースがないので…」
狭い狭い男爵領は分けることも困難なので嘘ではない。
まあもっと重大な嘘をついているのは確かだが。
「そうか、じゃあそれまでは私がこの領地を管理させていただこう」
「失礼、最後にお名前をお聞きしたいのですが…」
「ああ、まだ名乗っていなかったか。私はアルフレッダー・アルフレッドだ」
……どうしてそんな変な名前ばかり考えつくんだよあの青色球体。
とにかく、これで俺がこの領地を管理することは不可能だ。少なくとも3年間は。
12年間結界の中でゆったり過ごしたんだ、少しくらい戦闘訓練は積んでおかないとな。




