第十五話 村魔改造計画
倒れた謎の男を村人4人で運んでいるところを見ながら、俺はこの村で一番最初にやらないといけないことに着手した。
具体的に言うなら、村にある魔石の徴収だ。
あの男が暫定的なリーダーだったのか、村人たちは俺のことを村のトップであると認識しているようで、魔石の供与を要求したらあっさりと魔石が貰えた。
この世界における魔石は、全ての魔道具の基本である。
しかし、村人たちに魔石を加工して魔道具を作成するような高度な技術は存在しない。
ならば、自分の制作スキルを上げて自作するしかない。
ということで、インベントリから樹皮を剥いた丸太を取り出す。
そして風魔法で切断。
「領主様は魔法を息をするように扱えるみたいだな」
「ああ、この目で見てなければ信用ならない噂話だと一蹴していただろうな」
どうやら出来る領主(戦闘面において)だと思われているらしい。今の第一印象が強くなりすぎると武闘派みたいに思われそうで嫌だな。俺は平和に解決できるなら平和に解決することを望むタイプの人間なのだが。
さて、ついさっきもらった魔石(水属性)を練習用武器の柄の部分で粉々に叩き潰す。もちろんSTRではなく純粋な質量で。
風魔法で切断した木の板に、水、生成、量、入力部分、魔力回路の模様をを武器の剣の部分で削る。そこに魔石の粉末と水魔法で得られる純水を混ぜた簡易的な魔法触媒を流し入れる。ラストに土魔法で強引に水を固めたら水生成魔道具(超簡易)の完成。
「今作ったものはとても簡易ではあるが水を生成できる魔道具だ。誰かこの中に魔力を扱える人はいるか?」
…まあ、もちろん誰もいない。
魔法というのは理論を学んだ上でセンスが問われるタイプの学問の一種だ。
算数も満足にできない小学生が微分・積分を上手く行えるわけがないのと同じ。
ということで、しばらくこれを動かすのは俺の役目のようだ。入力部分にほんのちょっとの魔力を注ぐ。すると、木の板を覆うように水が溢れ出してくる。これは水の湧き出す座標を設定していないからなのだが、この魔力触媒で高度な設定を行ったら耐久性が1/10くらいになるという致命的な欠陥が生まれるのでしょうがない。
「み、水が…!水があの板から溢れ出ているのか?」
「板さえあればもう水を汲むために何キロも歩かなくても済むということなのか……!」
俺という一応人の上に立つ人間がいうのは良くないかもしれないが、民衆の心を簡単に掌に収めることができる方法がある。
今までの常識、それも特に辛く苦しいことをなくし、それが長い間続くと民衆が確信を得た時、彼らはそれを成し遂げた革新者に深い感謝と信頼を預ける。
もっと生活が楽になるのではないか。
もっと便利で、我々の想像しうることのできない技術革新を齎すのではないか。
そう言った期待は、やがて忠誠、あるいはより大きな信頼を特定の人物に預けることになる。
今この瞬間、その対象は俺だ。
村中の人間が俺に生活が楽になる知恵を惜しみなく使ってくれることに期待している。
これだから統治者というのはやめられない。
特に序盤の一人一人が王の顔を知り、まだ絶対的な権力も力もない時期に受けるこの尊敬は強い中毒性すらある。
だからこそ、俺はこの村を地球科学の近代テクノロジーで埋め尽くすことにする。
まずは第一歩を達成した。水は無限に手に入る無限資源と化した。しかし、まだ水が湧く噴水に過ぎない。
現代の水に関する技術といえば、何を思い浮かべるだろうか?
もちろん、水力発電だ。
この世界に電気の概念を持ち込む。
そうすることで実現できることがあるなら、十分価値はある。
だが、手持ちにない建材はどうする?
運が良いことに、ここは世界有数の鉱山地帯(未開拓)だ。
さあ、採掘を村の人間達にしてもらう時が来た。




