第十四話 領主
朝が来た。
この4文字を考えるだけで憂鬱だった社会人生活から逃れられるこの世界は最高だと改めて実感する。
朝が来たらやることはひとつ。
村の人間全員を村の中央部分に集めることだ。
村の中央部分はだだっ広い平野部になっている。
広めに柵を立てたはいいもののすぐに壊されると言うオチが見えるが大丈夫なのだろうか?
村の人間全員、約50人程に中央に集まってもらうように伝えて回った。全員が集合し、静かになるタイミングを待つ。
「つい昨日、我が領の館が燃えてしまったことは記憶に新しいと思う」
村人たちが悲痛な顔をする。
少なくとも相当嫌われていたわけではなさそうで安心した。
「残念なことに、私以外の全てのアルフレッド家の人間は燃え尽きてしまった。ならば、ここは私が領主になるのは必然だと確信している。誰かこの中に反対する者はいるか?」
「…お前は誰だ?お前のような年齢のやつはアルフレッド家にはいなかったはずだが」
麻布のローブとフードを着ている男性が反対意見を持ち出してきた。
まあ村人たちが俺のような人物がいなかったことを知らないわけがないことくらいはわかっている。
「私はアルフレッド家領主の弟だ。ここにある紋章がそれを証明しているだろう」
「…...............」
さて、どういう風に反論してくるのだろうか「ならば、この村の中で一番強い私と戦え」
脳筋のお方だったようで。
ただ、ここサルデラ帝国は強さを重視する国だ。どれだけ個人が武力を所有しているかが一種の社会的地位とも言えるこの国では当然の決め方とも言える。
要するにこいつに勝てば村人全員から認められるということだ。まだレベル1だが、スキルのごり押しでなんとかなるだろう。
「…よろしい。勝負を受けてたとう」
「なら、今すぐにお前の武器を取り出せ」
「そこまで言うなら見せてやろう。こういう時のために取っておいたとっておきをな!」
と言って俺は練習用武器…の刃潰ししていないバージョンを取り出す。
まだまだ少ないSTRで持てる限界まで重量加算しているこの武器でどうにかしたい。というかどうにかなってくれ、頼む。
「なかなか奇怪な武器を使うようだな。そんな悍ましい見た目の武器でこの剣に勝てるかな?」
麻布のローブ…もういいや、謎の男にしよう。謎の男が取り出したのは恐らく【溶接剣】。
常に鈍く赤く光り、高い熱エネルギーを持つその剣は様々な物を溶かすことに特化している。
ただの鋼の塊で挑むにはあまりにも分が悪い戦いだ。
ならば、魔法で叩くしかないだろう。
「そこの…最前列の左から3番目の君、合図を頼む」
「分かりました。じゃあ、よーい…スタート!」
明らかに戦闘の号令ではないが、そんなことを気にしている場合ではない。
この世界に来て初めての実戦なので多少は緊張しているが、それでも冷静に呪文を唱える。
「火は風と化し、風は水と化し、水は土と化し、土は雷と化し、雷は光と化し、光は闇と化し、闇は無へと化す。全ての結合を解き放ち、全ての縁を断ち切り、全ての物を空気とせよ。物の時を戻し、物を分解して破壊し、化合して再生し、原初へと回帰させる極光。音を置き去りにする…」
消費MPを削減するために詠唱をひたすら長くする。ただし、その間も容赦なく剣で切り掛かってくる謎の男の剣を交わしておく。右、上、上、右、下…リズムゲームレベルで避けられる程度のDEXで助かる。
「そしてそれは全てを還す!《極光・分解光線》ッ!」
詠唱がようやく終わる。そこから放たれるは手加減された全てを分解できる光線。今覚えている全ての魔法と錬金術を混ぜた光は、謎の男に直撃した。それと同時に男の麻布のフードが分解され、白い煙で辺りが覆われる。
霧が晴れると、そこには身体中から血を流しつつもなんとか生存している謎の男。
「無…念……」前に倒れる謎の男。
「………誰かお医者さんか神官呼んできてー!!」
…まあ、死んでないし?これで成功だし?
《極光・分解光線》
様々な魔法、属性を混ぜ混ぜすると全ての属性が相殺しあい、ほぼ無色で、一種の無属性魔法に近い超高出力のビームが出せる
この魔法はそれに錬金術の分解の能力と時魔法の過去へ戻す力を最大限載せている
この世界の魔法は制御するのにテクニックが必要で、難易度が高くなればなるほど全ての魔力が収束したタイミングで魔法を放たなければならない
その周期はどんな魔法でも2秒に1度どこかのタイミングで来るが、難易度が上がると成功判定が厳しくなる
この魔法の成功判定は1/20秒しかない
つまり理論上は使用可能でも実際に戦力として運用するのは不可能だとされているが、主人公は度重なる練習の結果これをほぼ100%成功させる
化け物かな?




