第十三話 帰還
目の前に見えるのは村だ。
出てくるときにちらっと見えたアルフレッド家の紋章である金床マークが象られたボロボロの赤い旗が見える。
一応1mほどの木の柵で囲まれてはいるが、モンスターの徘徊するこの世界でどこまで意味があるのやら。
あのイベントが発生した時点で家は全焼していることが確定しているので家には期待しないが、領地経営しないことには何も始まらない。
門番に話しかけて通してもらおう。
「すまない、ここを通してもらいたいんだが」
「兄ちゃん、すまないがもう門を開けるわけにはいかない「これを見てどう思う?」……た、大変申し訳ございませんでした!どうぞお通りください!」
こういうときに貴族の称号って超便利だよね。
子ども服に縫い付けられたアルフレッド家の紋章を見せるだけでフリーパス。
急いでいたから門を飛び出した前回とは違い、じっくりと村の現状を見ることができる今この村を見ておくことにする。
はっきり言うとこの村はギリギリ文明集落くらいのレベルだ。衣食住を見るだけでもそれがわかる。
家は基本的に藁と土壁で作られ、漆喰が塗りたくられている。
地理的に川からは遠いことはほぼ全ての民家の外に置かれているバケツに水が入れられていることから間違いない。
畑作はギリギリジャガイモの近縁種を栽培している。恐らくウエシラズという品種だろう。
名前の通り痩せ細った大地でもよく育ち、水が少なくても水を蓄えることができるスーパージャガイモだ。ただし味はあまり美味しくない。
武器は石の槍を用いているようだ。
果たしてこれも狩りにまともに使用できるのかは怪しいところだ。
「鑑定」
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石の槍 ランク:F+
武器攻撃力+5
ただの黒曜石を用いた槍。黒曜石と木の枝の結びが甘かったり十分に研磨されていなかったりと粗雑な作りなのでランクと性能が落ちている。
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もしかして:廃棄物
かと疑うレベルの低性能石槍だった。
これたんぱく質取れてるのだろうか??
衣類は植物の繊維を用いた麻布。
まあ俺が着てる服と大して変わらないから周りの住民から変な目で見られないことはいいことだ。
と、なかなかどうしてひどい生活レベルだ。
この世界でも首都などの栄えた場所はそれなりに発展しているはずなのだが、この土地は商業ルートには掠りもせず、海岸はなく、土地も痩せていてとても商業作物を栽培できる栄養状態ではない。
代わりにこの土地には大量の鉱物が眠っているはずなのだが、この様子を見るにそのことも知られていないらしい。
とにかく言えることはひとつ。
「今すぐに改革を断行しなければこの村はちょっとした旱魃や飢饉で簡単に滅ぶ」
今手元にある資源はほぼない。鉄は練習用武器と基本的な生活用品を作るために全て使ったし、家に資産もほぼない。
まずはこの土地の領主にならないと話にならないことも明確なので、さっさと領主になろうと思う。
さて、やってきました先代お屋敷。綺麗に全焼してしまったっぽい。イベントの強制力すごい。
もちろんそこは瓦礫の山があるだけで誰の声もせず誰の気配もしない。全員お亡くなりになられたようだ。しかしこうなってしまっては誰かの手を借りて領地を正式に自分のものにするのは極めて困難だと言えるだろう。親がいないからな。
でも、このくらいの状況なら想定していた。
これくらいならなんとかなる筈だ。
まあ、もう夜遅くなってきてるし寝るんですけどね。
感覚的には12年ぶりだが、肉体的には1日ぶりの睡眠だ。




