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全国大会、試合を勝ち進む

不安な気持ちが払拭され、更に最強三唱で盛り上がった俺達に高橋先生から声がかかった。


「は〜い、みんな。盛り上がったところで私から一ついいですか?」


高橋先生が挙手している。また何を言い出すのだろうか?一難去ってまた一難に成らなければいいのだけど…


「折角なので私、作戦名を考えたの!」


ずいと身を乗り出す高橋先生。また何を言い出すかと思えば。


「「「作戦名?」」」


皆の声が重なると得意げな高橋先生とは対照的に高遠先生は口をへの字に曲げた何とも言えない表情となった。それでも高橋先生を止めない辺り、二人の間にその作戦名とやらに関する合意が出来ているのだろう。


「どんな作戦名ですか?スターダスト作戦とか?」


ショウがワクワク感を出しながら高橋先生に尋ねる。お前、さっきまで泣いていなかったっけ?


「いや、捷一号作戦がいいと思うな。俺は」


ショウに触発されたのか、歴史好きなタイチが作戦名論争に参戦。


「チェンバロ作戦とかどうですか?」


更に一年生にまで波及して侃侃諤諤の作戦名論争しそうな勢いになったところで高橋先生がチッチッチと右手の人差し指を左右に振ってその全てを一蹴する。


「折角だけど作戦名はもう決まっているの。ねぇ高遠先生?」


高橋先生が振り向いて同意を求めると、高遠先生は不承不承といった体で頷く。男子剣道部最大の後ろ盾を得た高橋先生は作戦名とやらを発表する。


「本作戦名はデェダラァス作戦!」


「「「デェダラァス?」」」


どうだ!と言わんばかりに胸を張る高橋先生は作戦名について滔々と説明を始める。何でも昔のSFアニメに由来するとかで、その作品に破壊力を一点に集中させて突っ込ませ、敵艦を内部から破壊する攻撃があるのだそうだ。


「それに因んだという事ですか?」


「ええ、そうよ」


「それって、ダイダ○スアタックじゃないですか?」


俺の疑問を当然とばかりに肯定する高橋先生に貴文が冷静に問い糺す。昔のSFアニメって事は貴文は特撮・アニメオタの兄ちゃん絡みで作戦名の元ネタを知っていたんだな。


「そ、そうとも言うけど、そのままじゃ捻りが無いじゃない?だからそれをギリシャ語の音にしたの」


きっと大人の事情があるんだろうな。まぁ俺は作戦名なんてどうでもいいし。試合前にそれで盛り上がって良かったのかな。俺は俺がこの作戦で課せられた俺の役目をこなして対戦校に力を見せつけるだけだ。


〜・〜・〜


開会式が終わると、俺達は最初の試合に臨むべくAブロックの会場へと移動する。


「お兄ちゃん、頑張って!」


と、2階席から知った声の声援が送られた。見上げて見ると妹の美樹が満面の笑顔で手を振っていて、当然だけど妹と共に両親も来ていて俺に手を振っている。


俺にとってはこの全国大会は中学三年間どころか、是政伯父さんの言葉でそれまでの自分を顧みて全てに努力するようになってからの集大成と言える大会だ。だけど両親と妹にとっては夏の家族旅行のイベントの一つであろう。だがそれがいい。これは俺が自分の力で成し遂げる事であり、家族を巻き込む事じゃない。気に留めてくれ、こうして応援に来てくれるだけで十分だ。


(折角来てくれたんだから、美樹にもいいところ見せなきゃな)


俺はそう思うと2階席の家族に大きく手を振り返した。


〜・〜・〜


そしてAブロック第2試合。高遠&高橋先生起案によるデェダラァス作戦(だっけ?)は功を奏し俺達は対戦校に5対0で初戦を勝利で飾る事が出来た。


先鋒として俺は試合開始と共に速攻で打突を放ち、相手に反応する暇も与えず面一本を先取。続いての二本目も打ち合う事も無く速攻で小手を決めて勝利した。


対戦校は初出場の公立中学校と侮った五浦中に自分達の先鋒が瞬く間に二本取られて負けた事に動揺したようだった。続く次鋒戦でも対戦校の選手は貴文を警戒してか動きが悪くこちらも二本取られ、中堅以後の試合でも一本取られて時間切れとなって敗れている。


一回戦を突破して二回戦に進出し、対戦相手の大阪府代表を撃破した俺達。


三回戦では沖縄県代表と対戦。ここで俺達は苦戦を強いられる事となる。沖縄県代表の選手は瞬間的に素早く距離を縮める動きを見せ、俺はその素早さと読めない動きにやや翻弄された。


とはいえ、俺は対戦相手の動きをどうにか見切る事が出来、小手の先取で一本勝ち。次鋒戦は先鋒戦の直後に始まるため、貴文に俺が先鋒戦で掴んだ沖縄代表攻略方法を伝えられなかったためここで一敗。しかし中堅以降には伝えられたため最終的には3対2で勝つ事が出来た。


四回戦、準決勝だね。この試合、対戦相手のは愛媛県代表。


愛媛県って某みかんジュースや『坊ちゃん』、道後温泉ってイメージだね。以前には日本史の先生が愛媛県は明治維新の直後に「石鉄県」という県名だったと脱線した授業で教えてくれた事もあった。


何でも当時の県知事が「伊予者はナヨナヨしているから強そうな県名にするのだ!」と暴走してそんな県名になったとか(諸説あり)。


しかし実際に対戦した愛媛県代表はナヨナヨどころか隙の無い正統派の剣道をするめちゃめちゃ強い連中で、この対戦は2対1で勝つ事は出来たものの、一本取るのがやっとの辛勝だった。


そして遂に進んだ決勝戦。この対戦で今、俺は二度目の試合に臨もうとしている。一度目は先鋒戦、二度目は、そう、延長戦だ。








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