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妹は激おこ

実は是親伯父さん、父さんの高校の先輩だ。なんでも、中学で荒れていた父さんは高校に進学した際には随分と周りに対して舐めた態度を取っていたそう。その当然の帰結として早々に柔道部部長だった是親伯父に目をつけられ、そして呼び出された挙句締められてしまった、と。


しかも父さんはそのまま伯父さんによって強制的に柔道部に入部させられてしまったんだとか。伯父さん、恐ろしい限りだ。


なので父さんは今も伯父さんに頭が上がらない。とはいえ、二人は仲が良く、父さんが警察官になったのも先に伯父さんが警察官になっていたからだ。


しかも、父さんは伯父さんと連む事で伯父さんの妹である母さんと知り合い、そして紆余曲折が有りながらも結婚しているのだから尚更伯父さんに頭が上がらないよね。


そんな是親伯父は警察を退職し、現在は警備会社の社長さんだ。大学を卒業した伯父さんは警視庁に入庁、元から柔道を始めとした格闘技の達人であった事もあってSPになった。そして30歳を過ぎに退職して警備会社を起業、それまでに培った知識や経験、そして人脈を駆使して要人警護を主とする内容で業務を展開して見事成功を収めている。


伯父さんの警備会社、今じゃ年商数億円だそうで、起業する際は機動隊員だった父さんも誘われたんだとか。父さんは伯父さんの誘いを断って現在に至っているのだけど、きっと父さんには父さんの男として、警察官としての信念があるのだろう。伯父さんの誘いに乗っていたら父さんは今頃その警備会社の幹部になっていただろうに。でも僕はそんな父さんを尊敬してる。勿論伯父さんもね。


「「是親伯父さん!」」


ホテルのロビーで是親伯父さんを見つけた僕と真樹は早速駆け寄ると、出迎える僕達2人を認めた伯父さんは笑顔で応じてくれた。


「よぉ、勇樹に真樹、久しぶりだな」


「大きくなったな」とか「えらく別嬪になったな」とか言わないところがまた伯父さんの良いところだ。


僕より一つ歳下の妹は伯父さんがチェックインを済ませると、早速手を取って自分達家族の部屋へと引っ張って行く。


「真樹、伯父さん荷物とか置きに行きたいんじゃないか?」


苦笑しながらも真樹に引っ張られて行く伯父さんを見ながら僕が真樹を軽く嗜めると、


「荷物はお兄ちゃんが持って行けばいいじゃん!」


と取り合わないばかりか、僕に押し付けやがった。


結局、我が家の姫さまには誰も敵わない。僕は台車に乗せられた伯父さんの荷物を押し、真樹が「開」釦を押して待っているエレベーターに乗り込んだ。


〜・〜・〜


是親伯父さんを部屋に迎え、僕達家族と伯父さんは舟盛りを中心に添えた夕食(大人は飲酒を伴う)を摂りつつ話に花を咲かせる。その後、僕達は一風呂浴び、僕と真樹はゲームコーナーでレトロなゲームに興じてからフロントのソファで大人達を待った。


「ねぇ、お兄ちゃん」


僕が携帯でネット記事を読んでいると、不意に真樹に呼びかけられた。


「ん?何?」


「美織ちゃんと話さなくなって寂しくない?」


何かと思えば美織の事か。


「別に。もう慣れたよ」


すると真樹ははぁ〜と溜息を吐く。


「わかってないなぁ。お兄ちゃん、そういうところだよ?」


「そういうって、どう「だから、そういうところ!」」


真樹は僕の言葉を遮るように「そういうところ」を被せて強調した。


「幼馴染でずっと仲良しだったのに、ちょっと避けられたからって自分も避けちゃってさ。そしたらもう慣れたとか何それ?お兄ちゃんがそんなだから美織ちゃんだって自分から何も出来なくなっちゃうんだよ」


何故か真樹から一方的に責められる僕。寂しくないのかって?そりゃあ寂しいに決まってる。でも僕が美織に何した訳でもないのに一方的に避けられて、汚い物の様に見られて、憎々しげに睨まれてさ。そんな事されたら寂しいとか、それ以前に僕だって傷付くんだよ、腹が立つんだよ。


と、そんな事を真樹に言った。そして自分で言って気付いたんだけど、僕は美織の態度に腹を立てていただけじゃなくて、傷付いてもいたんだな。


真樹は尚も何か言っていたけどそれは耳に入らなかった。そのうち風呂から上がった父さんが呼びに来たので真樹も口をつぐみ、僕達の口喧嘩はそれ以上激しくなる事無く終わった。


〜・〜・〜


その夜、僕は一人伯父さんの部屋を訪れた。どうしてかっていうと、風呂から部屋へ戻る時に伯父さんから「ちょっと話があるから後で俺の部屋に来いよ」なんて言われちゃってからだ。


ドアをノックすると中から鍵が開けられて招き入れられる。


「よう、悪いなわざわざ」


「うん、話って何?」


「そう急かすなって。まぁ、入んな」


僕はお邪魔しますなんて言いながら伯父さんの部屋へと入った。


部屋の中は基本的に僕等家族の部屋と同じ。既に布団が敷かれていて、伯父さんと僕は窓辺の濡れ縁のソファに座る。伯父さんはカーテンを少し開け、次いで冷蔵庫からオレンジジュースを1本取り出して小テーブルに置くと僕に飲むように勧めた。


「さて、俺がお前に何を話すのか、というとだな」


「うん」


「昔々あるところに「そういうのはいいよ」」


僕が伯父さんのボケに即行で突っ込む。伯父さんは「なかなかやるようになったな、勇樹」と言ってテーブルに置いてあったコップのお酒(水割りって奴?)を一口飲んだ。その仕草が妙に様になっていて、何か揶揄われたようで腹立たしい。


「じゃあ単刀直入に言うとだな、勇樹、お前、幼稚園から一緒の幼馴染の女の子、ほら、ちょっと気の強そうなポニテの」


「美織の事?」


「そうそう、その美織ちゃん。お前その子と喧嘩したんだって?」


まさかここで伯父さんから美織の事を言われるとは思っていなかった。さっきの妹に続いてまた美織の事か。僕は美織に何もしていないし、何も悪くない。なのに何で僕がああだこうだと言われなきゃならないんだ?しかも喧嘩した事になっているし。やっぱり何か腹立たしい。


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