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転機、到来!

「じゃあ美織ちゃんの友達が裏切って体育館裏に行くお兄ちゃんの足止めをしたと。そして美織ちゃんに横恋慕した岡田って奴が美織ちゃんの行動を妨げたって事なのね?」


「横恋慕って。うん、まぁ、それで大体合ってる」


真樹ちゃんは「はぁ」と溜息を吐くと面倒くさそうに私を見る。


「で?今度は私にどうして欲しい訳?」


この子、本当に1コ下の小六なの?私なんかより余程しっかりしてるんですけど。


「ううん、別に真樹ちゃんにどうこうして欲しいって事じゃないの。ただ、真樹ちゃんにあの時の事情をちゃんと知っていて欲しくて。それからレイルのブロックの解除をお願い」


「…そう。そういう事情だったのならわかった。レイルのプロックは解除するから」


「ありがとう、真樹ちゃん」


真樹ちゃんは私のせいでやや乱れた襟元を直しながら「でも、」と続けた。


「美織ちゃんの事情はわかったけど、私はお兄ちゃんを傷つけた美織ちゃんには怒っているんだからね。必ず謝ってよ?」


「うん。それは必ず謝るから」


真樹ちゃんは「必ずだからね!」と念を押して友達の元へ戻って行った。その後姿を見送って、私はほっと一息吐く。これで一区切りが着いたと思う。


私は別に真樹ちゃんに私と勇樹の間を取り持って欲しいとか、欲しいとか、そんな事を期待している訳じゃない。ないったらない。私はただ当事者じゃない誰かに事のあらましと私の気持ちや決意を知っていて欲しいんだ。


そんな感じで新しい年が始まった。やがて4月となって私は二年生に進級、更に5月になると遂に私に勇樹と会える機会が巡って来た。


〜・〜・〜

それは中学二年生に進級し、ゴールデンウィーク後の中間テストも終わった後の事。始まった横浜市大会での事。


私は中学二年生になって第2剣道部の団体戦選手に、なれる訳は無く、今回は何故か参加各校から出される大会運営の係員に出されてしまっていた。なので男子剣道部の試合会場に朝早くから出向き、私と同じく役を振られた他校の生徒達と共に会場の設営に当たった。


私達係員は会場に四つあるコートそれぞれに付く他、アナウンスや会場外での選手・関係者の案内や誘導など役割は多岐に渡り、私は会場への案内係員を割当てられていた。


「出場校の剣道部員はこちらから入場して下さ〜い!」


私の相方となったのは私立浦星女子中学校で同い年の剣道部員、渡辺曜子ちゃん。ショートボブの可愛い見た目できびきびはきはきしていて、剣道部員だけに良く通る声をしている。その声に導かれてパラパラと五月雨のように会場に到着した参加校の剣道部員達が会場入りして行く。勇樹の五浦中学が区大会で優勝して市大会に出場する事は把握済み。となれば、勇樹の五浦中学もそのうち来るはず。


だけど、五浦中学は別の入口から入ったらしく勇樹には会えず、そうしているうちに試合が始まった。


試合が始まると案内係は会場内の手が足りていない部署へ割り当てられる。私と渡辺さんは元からタイムキーパーを割り当てられていた係員のヘルプに入る事となった。


そして始まる男子の試合。タイムキーパーは試合毎に交代し、1コートを3人で回す事に。タイムキーパーは案外と集中力が必要で、目の前の試合しか見られない。空き時間でチラチラと他コートの試合を見ると、センルチ男子中学第1剣道部はトーナメントを順調に勝ち進んでいた。え、第2剣道部?残念ながら2回戦敗退でした。


トーナメント表を見ると、何と勇樹の五浦中学も勝ち進んでいた。


凄いと思った。だって、失礼だけど地元の市立五浦中学って何の変哲も無い公立中学校だよ?剣道部だって他の部活と同様に今まで何ら成果を出していない弱小剣道部だった。それが今年は区大会で優勝し、この市大会でも勝ち進んでいるんだもの。


一度タイムキーパーの役を終えて五浦中の試合を見に行く事が出来た。勇樹は先鋒で、紺の道着と袴に漆黒の防具を纏った姿は凛々しく、立ち姿も美しくって、帯刀した佇まいはまるで若武者を見ているかのよう。


(格好いい…)


その竹刀捌き、試合運びは流れるよう。はぁ〜と見惚れていると、気が付けば面一本先取。続いての立ち会いでも相手選手の打突を捌きつつ相面で更に一本の二本勝ちを決めた。


(凄い…)


次鋒の選手と擦れ違い様にした軽いグータッチ、正座して面を取り「ふぅ〜」と息を吐き中堅の山田君と二言三言会話を交わして笑い合う。その笑顔も可愛い。


この時、初めて自覚した。


(あぁ、私、勇樹の事が好きなんだ…)


今更?と思うけど、私と勇樹はずっと一緒に育ち過ごして来た仲の良い家族のような幼馴染。カッコいいなとは思っていたし、小学五年生から多少は異性と意識はしていたけど、恋愛感情は抱いてなかった。だから自分の八つ当たり的な感情からその絆を自分勝手な感情から断ち切ってしまい、楽しかった勇樹との時間を取り戻そうと躍起になってた。仲の良い幼馴染に戻りたかった。でもそれだけじゃなかったんだ。


目頭が熱くなる。鼻の奥がつーんとする。


(勇樹、好き、)


でも自分の気持ちに気付いてしまった私はこれから一体どうしたらいいのだろう。まだ勇樹に謝る事すら出来ていない私が。


心拍が早い。胸の奥がズキンと鈍く痛む。勿論狭心症でも心筋梗塞でもない。


(好きだよ、勇樹。でも苦しくて、私どうすればいいの?)


その試合は五浦中学男子剣道部が圧勝した。そしてトーナメント表を更に上に進めて決勝戦に進出、対戦校は聖ルチア学園附属男子中学校第1剣道部だ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 他県に引っ越したわけでもないのに、何で家まで謝りに行かないんだ?
[気になる点] 3話前後で主人公視点⇔幼馴染視点を切り替える現在の投稿スタイルは、年単位で時間が巻き戻る上に 主人公の時間が先行しているので幼馴染視点の展開が予想しやすいため、幼馴染パートの投稿中は …
[一言] 読者からの幼馴染への好感度が更に下がってるの草 まあ描写された内容をどう見たって、岡田が一時間足止めしたわけじゃないからなあ…
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