表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/17

3 初対面のおじいちゃん

 ミミがヒートスピリアルを解除して制服姿になると、逆にぬいぐるみの姿をしていた3人の妖精が人型に変わった。いつものように全裸だったが、ミミのカバンの中にはいつも3人分の服が入っている。

 つまり、ミミは教科書や筆記用具は学校に置きっ放しなのである。


「あっ……起きた」


 同年代の男子にしか見えない3人の着替えを見るのは、ミミには刺激が強い。

 背を向けて、他に見るものもないのでロバ人間を見続けていたミミが、真っ先に気づいた。


「おお……本当だ。おい、ロバ男、お前はドルイドが放ったモンスターじゃないのか?」


 普段はぬいぐるみで、ミミとヒートスピリアルに変身する少年姿の妖精ウィスプがやや乱暴に、目覚めたばかりのロバ男に声をかける。


「……んっ? ドルイドを知っているのか……」

「うん。迷惑しているよ」


 ミミが相槌を打つ。


「俺のせいじゃない。関係ないこともないが……ドルイドは妖精の女王タイターニアの力を狙う魔王オーベロンの配下の奴らさ。俺は違う。さっきも言ったろう。おじいちゃんだよ」

「ちょっと待って。ロバのおじさんが私のおじいちゃんってことは……妖精の女王がおばあちゃんなんでしょ? ロバのおじさん……妖精の女王と結婚していたってこと?」


 ミミは混乱していた。ぬいぐるみたちに妖精の女王タイターニアが祖母だと聞かされただけでも混乱していたし、未だに実感がないのに、おじいちゃんまでやってきたのだ。

 ロバ男はおずおずと切り返した。


「結婚はしていない。タイターニアと結婚していたのは、オーベロンだけさ。今じゃ魔王とか呼ばれているけど、昔は妖精の王って名乗っていた。力のタイターニアと知識のオーベロンで、昔の世界はうまく治っていたものさ……らしいよ。俺みたいな普通の人間は、誰が世界を治めているのかってことすら、知らないんだからさ」


「おじさん……おじいちゃんだっけ? 全然『普通』じゃないよ」

「ミミ、それは言ってはいけないんじゃないか?」


 水の精霊セルリーが冷静に突っ込む。

 ロバ男はブルブルと唇を震わせた。


「俺は普通の人間だよ。ただ……首から上がロバってだけさ」

「……普通じゃないじゃん」


「もともとは人間の顔だったんだ。パックっていたずら妖精の仕業だって、本にだってなっているんだぜ。元々は、ニック・ボトムって名前なんだ。まあ……本じゃあ、元の顔に戻って、タイターニアとオーベロンはよりを戻したってことになっているけど、それはいい感じに話をまとめるための創作だ。実際には……パックの奴、人間の頭を動物に変える方法は知っていても、戻す方法は知らないときているんだ。タイターニアはオーベロンと喧嘩ばかりしているし、俺はタイターニアのストレス解消にベッドに引き摺り込まれて、知らないうちに孫までできているって体たらくさ。本当は俺だけじゃない。俺の孫はあんただけだけど、他にもカエル男とか象男とか、タイターニアとオーベロンが喧嘩するたびに犠牲者が増えている。今じゃすっかり別居しちまって、オーベロンはタイターニアの力を手に入れるため、人間と契約して孫娘たちを襲わせているってところなのさ。その契約した人間たちが、ドルイドって呼ばれているのは、俺も知っているよ」


 ロバ頭のニック・ボリスは、長い言葉を言い終わると、再びブルブルと口を震わせた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ