15 一人相撲
窓ガラスに激突し、ヒートスピリアルへと変身したミミが床に落ちる。
「私、妖精の女王の孫なのに、窓ガラスに跳ね除けられた!」
「実体があるって、素敵じゃないか」
プーカがとてとてと歩いてきた。
「俺に任せておけ」
ぬいぐるみの姿のまま、セルキーが窓に飛びつき、鍵を開けた。
「わ、私だって、窓の鍵を開けるぐらいできるんだから!」
「ミミ、大声で主張することかい?」
「かえって虚しくなる前に、行った方がいいぜ」
セルキーが、鍵の外れた窓を開けはなつ。
「うんっ……私のこと、バカにしていないよね?」
「そんなはずないじゃない」
「もちろんだ」
プーカとセルキーが手を振った。
プーカはひょっとして、『バカにしていないはずがない』と言いたいだろうか。ミミは問い直そうとした。
だが、廊下から生徒が流れ込んでくるのを見つけ、窓の外に飛び出した。
今度は成功した。
大空を舞うまでは行かず、一階上の階にある音楽室に向かって飛んだ。
だが、ミミは基本的なことを忘れていた。
音楽室は、音楽をするための場所である。
歌にしても楽器にしても、大きな音を出すため、基本的に窓は閉めてある。
ミミは、音楽室の窓ガラスに激突した。
落下しなかったのは、壁の外側に掃除用の足場があったからである。
「い、痛い」
慰めてくれるぬいぐるみたちはいない。ウィプスも、ミミの鎧や翼、剣に変化している間は、話すことはできないのだ。
「モ、モンスターめ、やるわね……」
窓への激突をモンスターのせいにしながら、ミミは窓から教室を覗き込んだ。
誰もいない。生徒たちが逃げ出したのだ。全員揃って逃げるほど、モンスターは、はっきりと正体を表したのだろう。
先生もいない。
ミミは、再び飛び上がり、変身を解いて学校の玄関から入った。
教室に着くまで、裸足だったのは仕方がない。
ぬいぐるみたちは、今日だけは少し優しかった。




