12 ぼーっと生きる
刈り上げられたチカの後頭部は、ぞりぞりとして気持ちがいい。思わず鳥肌が立つほどだ。
「誰があたしの頭を触っていいって言ったんだよ」
「えっ? 違うの?」
「ぼーーーーーーっと生きてんじゃねーーーーーよ!」
チカがミミの頭をペシペシと叩く。ぼーっと生きている自覚があり、事実ぼーっと生きていたいと思っていたミミは首を竦めた。
「じゃ、じゃあ、どこに触ればいいの?」
「ほらっ」
チカが右腕を差し出した。チカの手首に、真っ赤な腕輪のような痕がくっきりと残っている。
「ここに触れると、どうなるの?」
「そっちじゃないよ」
チカの頭から湯気が上がり、角が生えたような気すらした。
チカが差し出した右手を動かす。
チカの右手に、黒く細い紐の束が握られていたのだ。
「……これはなに?」
「わからない?」
「……うん」
「ぼーっと……いいか。あたしにもわからない。机の中から伸びた手に腕を掴まれて、机の中に引きずり込まれそうになったとき、顔を打ちながら、机の中に引き込まれた手で、触ったものを思いっきり掴んでやったのよ。あたしの顔を机にぶつけるのをやめるのと同時に、ぎゃって叫んだみたいな声も聞こえたの」
「……モンスターの体の一部かな? 少し、もらっていい?」
「調べるの?」
「……うん」
「ぼーっと生きているのに?」
「うん……ごめん」
「いいよ。あげる」
チカは意外にも、握っていた黒い束をミミの手に押し付けるように渡した。
「いいの?」
「あたしは、調べることが一杯あって忙しいの。世の中、ぼーっと生きている大人ばっかりなんだから。ミミはどう?」
「ぼーっと生きているし……ぼーっと生きていたい……です」
「なんで敬語なの?」
「怒られるように気がして」
「ぼーっと生きているのは気に入らないけど、あたしのクラスメイトよりはましかな。ミミ以外、誰も信じてくれないんだもん。何もすることがないなら、それが何か調べてよ」
「……うん。そうだね」
チカは忙しい。ミミのことを暇だと見込み、調査を押し付けたのだ。




