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10 ミミの教室で起きた異変

 翌日、学校では不思議なことはなにも起きず、このまま平和な日が続けばいいと、ミミもぬいぐるみたちも思っていた。

 異変が起きたのは、さらに次の日である。


 教室の片隅に、ヒガンバナが一輪、花瓶に生けて置かれていた。透明の細長いガラス整の瓶は、誰も持って来ていない。誰のものかもわからない。

 だが、誰も気にしなかった。


 その日の授業は何事もなく、ただ、3時間目の授業は理科の実験室に移動し、休み時間に全員が戻ってきた。

 ミミの右側、二つ離れた席の上に、朝教室の片隅にあったはずのヒガンバナが置かれていた。


「えっ……なに?」


 机の生徒である、ミミの同級生ロボカが丸顔を怪訝そうに歪めた。


「どうしたんだいロボカ」


 金持ちで優等生のモーオが話しかけるが、ロボカはヒガンバナの入った花瓶を額の上に乗せてバランスをとることに夢中で、反応しない。

 ミミからは、ロボカの魅惑的な膝が丸見えになっていた。


「ロボカちゃん、あんなに膝を出して……早く隠さないと、クラス中の男子が魅了されちゃうのに……」

「どうして?」


 ぬいぐるみのウィプスがこっそりとぼやいた。


「膝がチャームポイントなんだろう」

「……わからないよ」


 セルキーとプーカも、身動きをせずに疑問を口にしていた。

 休み時間が終わるまでロボカはバランス感覚を鍛えることに集中し、授業が開始されるとヒガンバナの入った瓶を机の端に置いた。


 片付ける時間がなかったからではない。いつでもバランスを取る練習ができるからである。

 ミミは授業に集中した。正確には、教科書にいたずら書きをすることに集中した。

 授業が始まって10分後、それは起きた。


「ギャアァァァァッ!」


 ミミの右側の二つ離れた席、つまりロボカがいる場所から悲鳴のようなダミ声が上がった。

 月のイラストを丸い雀に書き換えていたミミは、驚いてロボカに視線を向ける。


 まだ絶叫をあげたまま、熊すら驚いて逃げるような形相を崩さないロボカの手首を、骨ばった真っ白い手が掴んでいた。

 一昨日、チカちゃんから聞いた通りだ。机の中から出てきた白い手が、ロボカの手首を掴んでいた。


「なに? これ?」


 突然真顔に戻り、ロボカは自分の手首を掴んでいた手を眺める。


「まっ、いっか」


 ロボカが力を抜いた瞬間に、机の中から伸びた手が縮んだ。まるで机の中に引きずり込もうとするかのように、ロボカの手首を掴んだまま机の中に消えようとする。

 チカちゃんは、この動きのために机に何度も顔面を叩きつけられたという。

 そのことを聞いていたミミは、ロボカが危ないと察した。


「ロボカちゃん、危ない」

「ちょっと、やめてよ」


 だが、ロボカは軽々と自分の手を引き寄せ、机の中から伸びた手は再びズルズルと伸ばされた。


「ちょっと、ロボカ、どうしたの?」


 同級生が流石にロボカの異変に気づいた。ロボカは常に異変を起こしているので、やや気づくのが遅れたようだ。


「ミミ、モンスターだ」

「うん。わかっている。ドレスコード・スピリット」


 ミミは炎の翼を持つ戦士の姿に変身した。

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