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首謀者

間が空いてしまい申し訳ありません。

今回、少し残酷なシーンがございます。

 ゴールドバウム王国第二王子にして、臣籍降下後はゴールディング大公として兄王を補佐し共に国を護ってきたアルヴィンは今、粗末な椅子に座り後手に縛られている。


「このような事をして、よもや無事で済むとは思ってはおらぬだろうな」

 アルヴィンの口元には擦過痕があり、唇には乾いた血が残っている。


「そっくりそのままお返しいたしますよ、大公閣下」


 目の前の銀髪の整った顔立ちの男は楽しそうに笑った。


 アルヴィンは周りの様子を伺った。質素な室内には小さな窓があり、粗末な机とベッド、扉がひとつ。出入り口はその扉のようだ。

 そして向かい合う椅子には、長い足を組んで座る若い男がひとり。

 アルヴィンは心の中でほくそ笑む。


(なんだ、こいつ一人か。造作もない)

 

 アルヴィンは体内の魔力を集め、手の縛めを解こうと試みた。しかし、きつく結われた縄はびくともしなかった。どうやら、魔道具で封じられているようである。


「そう、カリカリしなさんな。この場でアンタの命を奪う事はありませんから。

 もっとも俺にすれば、仇のアンタを殺るのに何の躊躇いもありませんがね」


「お前は……近衛にいたな。会場で我らの側に控えていた気がする。仇とはどういう意味だ?」


「お、流石。しかし残念ながら俺は近衛ではないので、アンタの命令を聞いて説明する義務はない。さて、そろそろか」


 ガチャリと音がして室内に入ってきたのは黒髪の男女だ。

男は痩せて背が高く、縛られているアルヴィンと同世代のようであり、男に似た面差しの若い女は、どうやら男の娘のようである。

 彼らを迎え入れると、若い男は後は任せたとばかりに椅子から立ち上がった。


「ジェマーソン、くれぐれも生きて返してくださいよ。大公閣下にはまだ仕事が残っていますから」


 ヴィルヘルム・ジェマーソンとその娘シェイラは、ジョシュア・ノックスに一礼をし、彼が立ち去るのを見送った。


「あれは何者だ?まあいい、それよりジェマーソンよ、この縛めを解け」


「アルヴィン様、貴方の命運は我らが握っているのを理解されたほうが宜しいな」


 父の言葉に頷いたシェイラは、アルヴィンの頬を思い切り平手打ちした。


「血の繋がった妹まで殺したんだってね。妹君のアリア様は大層お美しく方で絵姿がたくさん残っているわ。こんな風にね」


 シェイラが念じると、彼女の姿は一瞬にして儚げな金髪の美女に変わった。シェイラの魔力はその高い変身能力である。貴重な魔力持ちの中でもとりわけ珍しい能力であり、国が欲しがる人材の一人だが、ジェマーソン父子はその能力を隠し通して生きていた。

 そもそも父親のヴィルヘルム・ジェマーソンは国に利用されるくらいなら死んだ方がマシだと言って、祖国を飛び出してこの国へやってきて、アルヴィンと知り合ったのだった。


 シェイラが変身したアリアのドレスの腹部は膨らんでおり、子を宿しているのが一眼でわかる。しかしドレスは所々破け、顔や頭から血が滴っていた。

 シェイラはよろよろとアルヴィンに近付くと、血塗れの手で先程平手打ちした頬を包み込んだ。


「ねぇ、お兄様、どうしてわたくしを殺したの?」


「…ひっ、ア、リア、、」


「お兄様、痛いわ。身体が、ああ、お腹が焼けるように痛い。お腹の中の子が苦しんでいるわ」


「黙れ、お前は幻覚に過ぎぬ。アリアは死んだ。腹の子だって死ねば良かったのだ、いや死んだ筈だったのに生きていたとは」


「お兄様。どうして?ねえ?殺すほどわたくしが憎かったの?」


 アリアに変身したシェイラは、ドレスの腹部をビリビリ破く。まん丸に膨らんだ腹を見せ、ナイフの刃先を当てた。


「死ぬ前にこの子を取り上げてと侍女に頼んだの。侍女はお腹を裂くなど出来ませんと泣き喚いたから、わたくし自分で、こうやって……」

 

 アリアの白い腹部に血が浮き、それが一筋になって、つつ、、と流れた。


「やめろっ!やめるんだ!!やめてくれーっ。済まなかったアリアっ。お前を殺すつもりなど無かったのだ。頼む、やめてくれ………」


「いえ、お兄様は見なくてはいけないわ。わたくし、自分でお腹を切り裂きましたのよ。

 流石は我が妹だと、よくやったと褒めてくださらないの?」


 アルヴィンはガクリと首を倒して気絶した。


「シェイラ、やり過ぎたようだ。アルヴィン様は冷酷な癖に血には弱いのだよ。早くその血糊を拭きなさい」


「ええ、お父さん。こんな奴にわたしの肌を晒すのは勿体無いわ」



 アルヴィンがジェマーソン父娘に精神的に嬲られている頃、銀髪の若い男、ジョシュア・ノックスは王城へ赴いていた。

 夜会当日、使命を受け近衛騎士として王族の側に仕えていたジョシュアは、アルヴィンが引き起こした爆発騒ぎの際、ジェマーソンを手引きしていた。

 死んだと思っていたジェマーソンの登場に驚くアルヴィンを捕獲して、隠れ家へと連れて行ったのはジョシュアだった。


 アルヴィン・ゴールディング大公のかつての罪とその企みは陛下の前で暴かれねばならないとジョシュアは思っているが、

その大公について調査している過程で偶然知り合った、『漆黒の旅団事件』の首謀者にされてしまったヴィルヘルム・ジェマーソンに協力するのはやぶさかではない、とも思っている。

 ジェマーソンは大公の糾弾の際には、貴重な証人として召喚される事になる。その前に()()()()()でじっくり話す機会があっても良いではないかと。


「死なない程度に、苦しめてやればいいのさ」

 

 


お読みいただきありがとうございます。

変身能力について。魔力の消費が激しいのでジェマーソン親子は滅多に使いません。

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