7 シンイチが、学校でどんなかって?
「タケル、いい?」
「うん」
お母さんが僕の部屋に入ってきてドアを閉めたた。
「どうしたの?」
「今ね、美桜のピアノの先生から電話が来て。すごく頑張っていて嬉しいって」
「よかったじゃん」
それを何で僕に言うんだ?
「それで、何かあったんですか?って聞かれたから、タケルのお友達に教えてもらったって言ったのよ」
「今までが今までだから、そりゃおかしいと思うだろうね」
「そうしたらね、教えてもらうのはいいんだけど、あのシンイチくんて、天才なんですって?あ、先生はそう仰らなかったけど、とにかくすごい子だし、性格もいいから、教えてくれるでしょうけれど、御礼をしてくださいねって」
「ふーん、じゃお礼したら?」
お母さんは、小さい声になった。
「まあ、タケルにこんなこというのはアレだけど、音大の先生って、一回のレッスンで何万もするらしいのよ」
「はあ……」
何の話だ?
「シンイチくんのお母様はそういう先生で、その教えを直々に受けているから、シンイチくんも既にそれだけの力があるし、いずれそういう先生になるから、そういう御礼をしてって……」
「ふーん、すごいなとは思ってたけど、そんなにすごかったんだ」
僕に言われてもな……。
「正直、美桜は趣味だし、続くかわからないし、若い音大生なら安いかなって思ったからあの先生にしたんだけど……。ねぇ、シンイチくんて学校ではどんな子なの?」
「シンイチ?すごくいい奴。性格もいいし真面目だし、班のリーダーをいつもやらされてる。誰かに注意する時も、言われた方がちゃんとしなきゃって思わせるような、自然な……とにかくいい奴。運動もできるし、成績も上の方。10番から20番位にいつもいて……たまに僕が負ける時もある。クラブは僕と同じ読書クラブで、いつも何か調べてノートに書き写してる」
「タケルと同じくらいできるなんて、すごいのね。この前来た時も礼儀正しくて感じがよかったし……ありがとう。あ、美桜には言わないでね。頑張るなら応援したいから。シンイチくんがよければまた連れてきて」
「わかった」
本当はわからなかった。
呼んでいいのか、いけないのか。もちろん、呼んでみてもシンイチが来るかどうかはわからない。
学校から反対方向だし、シンイチの家からここまで、二時間弱か?
この前は学校が早く終わって、翌日が休みだったから誘えたんだ。来てくれただけでも本当にラッキーだった。
また、電話してみよう。
僕は終わらせた夏休みのドリルを閉じて、夕食に降りていった。




