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Educator  作者: 槇 慎一


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23/30

23 早くしゃべれ!


 僕は、シンイチに話したかったが父親に止められていて話せない。



 ある時、坂井を見つけた。坂井も附属上がりでシンイチの友人だ。小学校では、加藤が二人いたから僕はタケルと呼ばれていたし、槇は下の名前が「マキ」って女子がいたからシンイチと呼ばれていた。坂井は坂井だった。

「坂井!ちょっといい?」

 僕は坂井に駆け寄った。

「あぁ。タケル、何組になった?」

「僕は、1組。坂井は?」 

「こっちは4組」

「シンイチは?」

「シンイチは……あ、出てこない。忘れたー」

「ごめん、クラスじゃなくて元気かどうか。最近見た?」

「昼に図書館行くとこ見たけど普通だったぞ」

「そっか……」

「おい、お前が元気ないように見えるんだが」

「うん、ちょっと……今言えないんだ。ごめん、ありがとう」



 どうしようかなぁ……。その翌日も翌日も、僕は、妹とお母さんのことで頭を悩ませながら、早く帰宅する気になれず、毎日違う部活動をぼんやりと見学していた。


 月曜日は将棋部。

 火曜日は合唱部。

 水曜日は弦楽部。

 木曜日は囲碁部。

 今日、金曜日は……。


「加藤君?今から吹奏楽行くけど、見学行かない?」

 名前は確か……名札を見た。倉上か。

「行く」

「よかった。一緒に行こう。坂井君!また明日ー!」

「あ、倉上に……タケル、じゃな!」


 坂井は走っていった。速いなー。 


「倉上君、坂井と知り合い?」

「うん、子供の頃サッカーチームが一緒だったんだ」

「へえ?それで吹奏楽に?」

「うん。サッカーはもういいや。吹奏楽は女子もいるし、男子も結構いるしさ。音楽も好きなんだ。加藤君、音楽関係を見てたみたいだから。好きなの?」

「うーん、やったことはないけど、楽譜が少し読める位で……」


 吹奏楽部が使う音楽室は、教室棟から離れた棟にある。中学の校舎にはまだ慣れていない。階段を降りて、渡り廊下を、新しく友達になった倉上君と話しながら歩いた。


 そこまで言った時、角を曲がってきた人とぶつかりそうになった。シンイチ?


「すみません!……あ、タケル!探してたんだ!」

 僕を、探した?走ってきて、息を弾ませているシンイチを見て、僕は……僕を悩ませ、緊張していたものが一気に解けて、泣きそうになってしまった。


「タケル、どうした?まだ怒ってるのかな?って、心配になって……怒ってない?」

 何のことだよ……何でもいい。

「怒ってなんか……ごめん、倉上君、今日行けない。また今度行く」

「加藤君?うん、わかった。また今度」 

 倉上君とシンイチは、お互いにどうも、みたいに頭を下げた。


「タケル、今日僕の家に来ない?」

「行く」


 僕は、もうそれだけでシンイチの優しさに救われた思いだった。


 吹奏楽部の見学に行ったことにすれば、多少遅くなってもいいか。そこまで思ってから、僕のことはあまり心配されていないことに気がついた。


 歩きながら、シンイチは優しく聞いてくれた。

「前に、話したいことがたくさんあるって言ってただろ?まだ、ある?」 

「ある」

「よかった」

「シンイチ、聞き出すの上手いな」

 僕は、何だかシンイチの弟になった気分だった。

「かおりは、ほとんどしゃべらないんだ。でも、音と表情でわかるから」

「まるで恋人だね」

 僕は素直に羨ましかった。可愛かったその子を思い出した。僕の妹ももちろん可愛い。そして大事な妹だ。


 僕がそう言った時、シンイチは意外なことに照れていた。シンイチとは、幼稚園からずっと友達だったけど、初めて見る表情だった。



「誰にも言うなって言われたことがあって、辛かったんだ」 

「誰に口止めされたんだよ?」

「お父さん……」

「お父さん?意外だな。僕は会わないし、言わないから大丈夫。タケルの心がヤバそうだから、早くしゃべれ!」

 僕は、シンイチの口調が可笑しくて笑った。



 僕はシンイチの家に向かいながら、高田先生に話したことと、その続きを話した。


 美桜がシンイチを好きなことは話さなかったが……。


 話し終わると、シンイチは少しの間黙っていた。


「僕もタケルに話したいことがあったんだが、こっちが解決してからだな」





















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