21 もう、君に合わせる顔がない……
勝手に高田先生に話してしまった。
しかし、まだ話していないことは山ほどある。
妹の美桜が音楽大学を考えていること。
だから、私立中学を受験することにしたこと。
偏差値の低い学校には行きたくないこと。
音楽の高校や中学を考えていること。
それから、美桜が慎一を好きなこと。
慎一には小さな恋人がいること。
美桜は自分の想いが彼に届かないこと。
しばらくふさぎこんでいたこと。
静かに荒れていたこと。
お父さんが新しいピアノの先生を見つけてきたこと。
偉い先生だとかで、もう引っ込みがつかないこと。
お父さんが言うには、私立の先生は高いだろうからと、会社の知り合いの知り合いの先生である、国立大学の偉い先生に頼んだこと。
レッスンに行ったら、自分は人気があるから、自分に習っていることを他人に口外しないよう言われたこと。加藤さんでもう枠が一杯だから、他の生徒をとれないからねと。願書などに◯◯先生に師事など、本来は書く必要がないため、自分の名前を書かないようにと言われたこと。
僕は、それ絶対ちがうだろ!と言いたかった。
言われたレッスン代は非常に高額で、お母さんはびっくりしていた。
「私立の先生の方が高いだろう!もう断れん!タケルの友達に教わっている場合じゃない!タケルもその子に、もう頼むんじゃないぞ!話もするな!」
お父さんがこんな感じだ。
美桜の進度が遅いので、偉い先生から下見の先生を紹介され、週に何度もそのレッスンに通い、その上で国立大学の先生のレッスンにも通っていること。
当然、下見の先生のレッスン代もある。偉い先生よりは少し安いとはいえ、回数が回数だ。それもお母さんを不安にさせ、悩ませていること。
それに、ピアノ以外にソルフェージュや視唱や聴音とかの科目はまだ手をつけていないので、そちらの先生も紹介されるとのこと。
そして、もうすぐ高田先生にお別れをすることになるであろうこと。
僕は、本当はシンイチに何もかも話したかった。
何よりまた、シンイチと仲良くしたかった。
中学は、クラスが増えた。二人ともクラス委員長をやるタイプだ。シンイチとは別のクラスになった。
僕は1組、シンイチは9組だ。
家も遠い。
シンイチは部活動には入っていないらしい。
もう、接点がなかった。
合わせる顔もなかった。




