紳士のお迎え
ブックマークが増えるたびに悶絶しています。
そんな人達が"エンジンは世界の夢を見るは俺(私)が育てた"と言い張って頂くためにも日々精進してまいるます所存かしこみかしこみ
その後到着したおっさんは妖精の操縦者と共にサンパンを載せ、俺たちはアジトに帰り着く。
泥の様に眠った翌朝、いや、昼前か。
「起きてきたか」
「カナは?」
「まだ寝てるよ。オメェは本当によくやった。しかし気になる事もある」
「あん?何だやぶからぼうに」
「そもそもサンパンがあんな動き出来ると思っていなかった。いや、多分誰もあんな動きが出来るなんて知らないはずだ。お前、何モンだ」
ここまで流されてきたのもあるが、俺の話は常に曖昧になっていた。
出自を話した時も笑ってたしな、多分言いたくない事があるから濁している、だなんて思っているのだろう。
きっとおっさんの優しさなんだろうが、このまま付き合いを続けるのであればそろそろハッキリさせないといけないかもしれない。
「そうだな、そろそろ腹割ろうか」
「やっぱり何か隠してンのか」
「そうじゃないんだけど、」
話始めようとした所で玄関をノックする音が割り込む。
ジンが頭を掻きながら扉を開くと、ピシッとした制服に身を包んだ男が3人、こちらを見据えていた。
「4UOサンパンのパイロットは貴殿か?」
俺はジンと顔を見合わせると、渋々ながら頷いた。
「こちらは帝国国軍第2師団ES特務遊撃隊 タイシ タチバナ少佐だ。我々に同行願いたい」
先頭に立つ男がそう伝えてくる。
国軍…
俺たちのような民間ではない。同行という言葉の裏にあるのは連行だろう、と勘繰ってしまう。
そもそも俺の知っている少佐というのは艦長とかやってる階級のはずだ。こんな小間使いをさせて良い階位ではない。
「心配すんなタチバナ少佐が出張ってきたって事はおかしな事にはなンねぇはずだ」
ジンが俺にだけわかる小声で呟く。
有名なのかな?タチバナ少佐。
「なに?お客さんー?」
絶妙のタイミングでカナも起き出してきた。
パイロットと言っているし、カナは巻き込まない方がいいだろう。
気丈でしっかりしていてもまだまだ"女の子"だ。
「君は?」
「あ、カナです。ESの操作手兼整備工見習いです」
「操作手…昨日、サンパンに乗っていたのか?」
「いや、俺だけだ」
慌てて割って入る。
が、無駄な抵抗だったな、とすぐに思い返す。
ツッコミを受けたら応えられるだけのタネが手元にない。
「悪いようにはしない。むしろ力を貸して欲しいんだ」
タチバナ少佐は少し苦笑しながらそう告げた。
嘘を否定するでもなく、信じるでもなく、しかし自分を下げる。
なる程、おっさんの言葉はこういう事か。きっとこうした高圧的でない人柄が知れ渡っているのだろう。
「家にはこの3人だけか?心配なら全員で来てもらって構わない。関係者なのだろう。2人も3人も変わらんよ」
男は柔和な顔でそう提案する。
軍人ってのは融通の利かないカタブツってイメージだったけれど、なかなかどうして期待を裏切ってくれる。
「今日のうちに帰ってこれるンだよな?」
「恐らくそれなりに長くはなるだろう。無為に拘束するつもりはないが、移動を含めて4日間はみてほしい」
最初から期間を明言するのは誠実だ。
どの道俺たち3人では同数の軍人から逃げられるとも思えない。
俺たちは頷き合って了承の意を見せた。
そういえばカナって漏らしたのかな?