俺は知らない世界でクラッチを踏む
「いや、俺は…」
何と説明したものかと悩んでる間にも自然、足はおっさんにつられて動く。
「これがウチに置いてある一等上もののES、2JZ"スーパーグライダー"俺が本気カリカリチューンした極上ツインターボだ。
エンストだけしなけりゃあとは何でもいい!移動操作だけ何とかしろ。マニピュレーターは俺がやる」
「えっと…え?ツインターボ?エンスト??」
俺は言葉に既視感?を感じつつコックピットに押し込まれた。
そして今度は既視感ではなく、確かによく知った光景を見る事になる。
「おいこれ…車の運転席と大差ないぞ…イグニッション、アクセル、ブレーキ、クラッチ…クラッチ!?マジかよMTかよ!!」
「ストールさせたら再起動は多分無理だ。つまりコイツは鉄クズになっちまう。そこンとこだけ注意してくれたらあとは全部こっちでフォローしてやる。こっから出たいならキッチリ仕事しろや」
未だ続く建物の揺れを感じながら、俺は覚悟を決める。
大丈夫、ただの車だ。
いざとなれば逃げて隠れればいい。
よし!
※2JZ(作中イメージは2JZGE) トヨタ自動車製直列6気筒ツインターボエンジン。トヨタ最強エンジンとの呼び声高い。
同エンジン搭載車種は多いが、ソアラ(由来 最上級グライダー)から"スーパーグライダー"に。
スポーツカーと高級車の合いの子の様な凄い車だった。
今でもレクサスブランドにその車名は残る。