漫才「落語」
A=ツッコミ B=ボケ
A「どーも○○(コンビ名)です」
B「待ってました!」
A「お前が言うな!」
二人「よろしくお願いします」
A「ところで最近ハマってる事があってさ」
B「なに?」
A「趣味で落語を聞き始めたんだけど、これが結構面白いんだよ」
B「落語?あの、おじいさんが座布団に座って昔話を垂れ流す、あれ?」
A「いや言い方!悪意あるな。たしかに江戸時代の話が多いけど、なんか現代に通じる面白さがあるんだよね」
B「ふーん、そんな昔話の何がいいんだか。それより聞いてくれよ。オレの友達に子どもが生まれてさ、オレに子どもの名前を考えてほしいって言うんだよ」
A「へぇ、何かもう考えたの?」
B「『青龍・白虎・鬼神王・エグゼクティブ・フラペチーノ太郎』っていうんだけど」
A「何その名前!?」
B「かっこよく育ってほしいって言ってたから、かっこいい言葉ありったけくっつけて、かっこいい名前にしてみた」
A「かっこよくないだろ!フラペチーノって言ってるし。なんか落語の『寿限無』みたいだな」
B「じゅげむ?」
A「初めて子どもが生まれた男が子どもの名前を考える話なんだけど。長生きしてほしいからって縁起がいい言葉を全部つけちゃうんだよ。そしたらとんでもなく長い名前になって、それで騒動が起きるって話」
B「ふーん。昔はバカなヤツがいたんだなぁ。まっオレには関係ないけどな」
A「え?」
B「それより聞いてくれよ。この前、職場の先輩にカラオケに誘われてさ。でもこの先輩、めちゃくちゃ音痴なんだよ。断りたいんだけど、普段世話になってるから断りにくくて…どうしたらいいかな?」
A「なんか落語の『寝床』みたいだな」
B「何それ?」
A「義太夫が趣味の大家さんが、店子っていう家を貸している人たちに義太夫を聞かせようとするんだよ。でもこの大家さんの義太夫がめちゃくちゃ下手で。なんとか断ろうと店子が悪戦苦闘する話」
B「ふーん。昔はそんなパワハラじみた大家がいたんだな。まっオレには関係ないけどな」
A「いや、義太夫ってのは今でいうカラオケみたいなもんで…」
B「それより聞いてくれよ。160円のソバ食いたいんだけど、手元に十円玉が15枚しかなくてさ」
A「お前どんだけ落語みたいな状況に陥るんだよ!?」
B「どういうこと?」
A「さっきからお前、落語みたいになってるぞ。今のもまんま『時そば』だし」
B「なにそれ?」
A「そういう落語があるんだよ。16文のソバを、1文ごまかして15文で食う話が」
B「そんな昔の話はいいから、今の状況をどうすればいいか教えてくれよ」
A「しかも全然気づいてない!?」
B「今のオレは、160円のソバをどうやって食うかで頭がいっぱいなんだよ」
A「その価格どっからきてんだよ!?もはや落語の方に寄せにいってるだろ」
B「落語落語うるさいな。じゃあその落語で何とかしてみろよ」
A「じゃあ実際やってみるから、十円玉15枚貸せよ。お前がソバ屋やれ。オレがお前になるから」
B「お前がオレ?じゃあオレはいったいどこの誰なんだ?」
A「それも『粗忽長屋』って落語みたいになってるよ!いいから話進めるぞ」
B「わかった。オレがソバ屋ね」
(コントに入る)
A「ごちそうさま。ソバ一杯いくらだっけ?」
B「はい、160円です」
A「ちょっと細かいお金しか持ってないから数えるね。1,2,3,4,5,6,7,8…今、何時?」
B「九時です」
A「10,11,12,13,14,15,16。はい、160円」
(素に戻る)
B「えっ何が起きた…あっ!お前、時間聞いて1枚ごまかしやがったな!?」
A「リアクションも落語の登場人物そのまんまじゃん」
B「なるほど、九時っていう時間を利用して、九時のところで1枚ごまかしたのか」
A「お前本当は知ってるだろ!現代人は9時を九時とは言わないよ!」
B「すげぇ!こんな落語あるんだ!」
A「まぁ実際やっちゃダメだけどな」
B「確かに実際こんなことやったら、大門で止められて奉行所に訴えられるな」
A「お前本当は落語大好きだろ!落語ワードめちゃくちゃ出てくる」
B「この前みたいに奉行所で天狗にさらわれるのも嫌だし」
A「もはやお前、落語国の住人だろ!天狗にさらわれるヤツなんて落語にしか存在しないよ」
B「その天狗を逆に捕まえた、と思ったらお坊さんだった、なんてのもコリゴリだしな」
A「…それもどうせ落語なんだろ!?マニアックすぎて元ネタ分からないけど!」
B「いやー、確かに落語って現代に通じる面白さあるな」
A「お前は通じすぎだよ!いいかげんにしろ」
二人「どーも、ありがとうございました」