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003―2 3回目の憑依 ~当事者意識って大事ですね~

―― 184年4月 夏 ――


『各地で住民反乱が起こっています』


 蒼天すでに死んでますしおすし。


『北平の住民が圧政に対し立ち上がったようです』


 公孫瓚、何やってんのよ。まあ、対岸の火事だし気になる情報でもないな。


「孔伷様、ご命令を――」


 やっぱり張角、だよなぁ。いきなり同盟だったのが不味かったのかもしれない。


「張角のところに進物を届けてこようと思う」


 全力で媚びていこう! 米5000ッ! 使者は孔伷()ッ!


「――では準備をして参ります」


「あ、そうだ。ほら先月受け取ってもらえなかった米俵あるじゃん。あれ持ってくから」


 食べ物は粗末にしてはいけない。地球と財布に優しいリサイクルだ。


「――あの米はもう賞味期限が切れておりますゆえ」


「賞味期限は美味しく食べれる目安、消費期限はまだ先だから大丈夫。どうせバレないって」


 そんな細かいところ気にすんな!


 んんんん~? って孔伷さん、そんなに首を捻ったらねじ切れるよ?



 またまたやって来ましたよー! 黄巾の人たち、ビビってるね。


――おい、あいつ先月あれだけバカにされたのに、また来たのか?


――しっ! 聞こえるぞッ! 鴨がネギって奴だろ、ほっとけ!


「ん?」


 え、何かこっち見てひそひそしてるから、視線を向けたら露骨に顔を逸らされた。まあ、敵対70なら兵士も孔伷さんの顔なんて見たくないか。


 孔伷さんはそ知らぬ顔で、執務室まで進撃してさくっと張角の前に進み出た。両膝折りの拱手しながら額を地べたにタッチング。最上級の媚び、姿勢がとても綺麗です!


「また貴公か……本来なら殺してやるところだが、その蛮勇に免じて話ぐらいは聞いてやろう」


 気のせいか張角が引いてる。つまり――チャンスだ。


「この孔伷、貴国との親睦を深めるため参上した。ぜひ受け取ってくださいませ、へへー」


 どうよ、この下から下からの媚び台詞は。孔伷さんが『この孔伷』って言い始めたから、俺が主導権握って修正した。危ないところだった。


「ふむ……」


 お、張角が顎に手をやって考えてるぞ! いいぞ、効果ありか?


 張角がちらりと視線を横にすると、なんかしかめ面のおっさんが口を開いた。


「――怪しいですなぁ。我が君におかれは言わずもがなではございますが、あえて申し上げます。ただより高いものはございません、そのような物受け取りなさるな。――それとその米俵、ずいぶんと汚れておりまする。もしや先月の献上品を使い回しておるのではないですかな?」


 こんのチョビヒゲ野郎ッ!! 誰だてめぇ! 米俵が先月の物とか、余計な事実を言うんじゃない!  ああ、もう名前が分からんっ! 孔伷さん、とりあえずガン飛ばしとけ! おぉん?


「金品で人の心を動かそうとは貴公、そこまで墜ちたか! さっさと立ち去るがいいッ!!」


 あ、やべ張角がマジ切れしてる。白黒反転やめて……。


「残念だぞ、貴公ほどの英傑な――「帰れッ!」――らばわかって――「こいつを叩き出せッ!」――くれると信じていたのにな……」


 城門でぺいってされた。米俵も受け取ってもらえなかったよ……。


 米俵乗せた早馬が譙に戻りますよー。


「――孔伷様、お帰りなさい……」


 あれ、もしかしてもう失敗した情報が届いてる? 顔がひくひくしてるけど、こないだのお説教リターンか? ここはうまく誤魔化さねば――


「わしの好意を無にするとは……先が見えぬ御仁ゆえ、誠意が伝わらなかったのだろう」


「――誠意のある者は贈り物を使い回しませんゆえ。孔伷、ちょーっとだけ、お時間いただきますね」


 あ、お説教確定……。このあとお説教ねちねちされて1ヶ月が終わった。


 と、思ってたら喬玄から外交の使者が来た。


 またご本人登場、金1840で同盟やろうぜって。


「たとえ喬玄殿の頼みとあってもこればかりは……」


 お断りしておいた。攻めてこない保障よりも救援を送ってくれる保障がほしいのよ。



『孫堅軍が寿春へ攻め込みました』


 あ、劉繇が負けて落ち延びた。


『張角軍が譙へ攻め込みました』


 あるぇ? 何で……。


 漢武官志――前の漢部きゅんと似て非なる武官が、俺にオーバーキリングマシーン張角の殺意ましましの兵力を伝えてくる。そして――


「――出陣武将を選んでください」


「俺しかいねぇ!」


 ここでお別れだよ漢文C。次にまた憑依するようなことがあれば、また会おう。


 悲壮な決意を持って孔伷さんは戦場へ向かう。まあ、首ちょんぱを生で見るのは精神的にキツいけど、今のところ俺自体は痛くない。むしろ戦場にいるときの汗臭さとか、緊張感の方がキツい。あいつら捕縛するときが結構扱いが荒いんだよな……。


 お城を取られる、森に隠れた俺の部隊が全面降伏する。これが一番スマートな負け方。ループも3回目となるといい加減慣れてくるよね。


 嫌な慣れだけど――


『孔伷軍のすべての城が陥落しました』


『孔伷軍の孔伷が捕らえられました』


 はい、ワンツー! 開始から3日でお城占拠からの捕縛ッ!!


 もう正直やる気ないし、出来れば憑依剥がしてくれんかな……俺をこんな目に遭わしてる誰かさんよおッ! ……俺が何をしたというんだよ。


『孔伷軍の敗北です』


 はあ、処刑台に孔伷さんが座らされ、張角と最期のフリートークからの首ちょんぱの流れ――


「……今日で貴公と会うのは三度目か、一度目はバカな条件の同盟、二度目は古米5000ごときでわしを懐柔しようと目論み、いざ戦いとなると臆病にも民と城を捨て(ほこ)を交えることもなく降伏するとは――情けないッ!」


 うわ、めっちゃ孔伷さんが怒られてる。動くのは孔伷さんだけど指示してるのは俺なんだよなぁ。でも結果的には兵士の命を守ってやったんたんだぞ、戦えば肉壁が傷つくし、ときには肉壁の一部が亡くなることだってある。


「どの口で天下泰平を語った? どんな志を抱いてわしの前に来たのだ? 貴公の覚悟の無さには虫酸が走るわッ!」


 ええぇ! だって孔伷さん、文官タイプなんですもん。枯れ木に花を咲かせる系のメルヘン腹黒ですもん。勝手なイメージだけど。


「…………」


 見てよ、べっきべきに心折られて諦めの境地にいる孔伷さんをさ。今からでも雇ってくれませんかねぇ? って俺が憑依してるせいで無理なのか? くそが、バカバーカッ!


「うっさい、はよ殺せよ! バカバーカ!」


 あ、やべ孔伷さんの口から飛び出ちゃった! 張角よりも周囲の奴らが剣に手をかけたね。張角はじっと孔伷さんの顔を見てる、こっち見んな!


「む…………なんだこの気配は? 貴公、いや貴様は何者だ?」


 え? 今の張角は()に話しかけた? ()を見ている? 白目と黒目が変えてまで凝視しないで……恥ずかしい。


「――なるほど、清談高論の得意な孔伷殿()とも言えぬ立ち居ぶるまい……。おかしいと思っておったのだ、どうやら貴公には別の魂が混じっておるようだ」


 これガチで俺のこと言ってるぞ。え、やめて孔伷さんの頭を掴まないでくれます? なんかごにょごにょと呪文を呟き始めたよこの人ッ!!


「ふむ、この乱世を生き抜く覚悟がないのは貴様だったか。死を孔伷殿に肩代わりさせるから恐怖がないのだな、良かろう。わしの力で()()()()()()()()させてやろうぞ!」


 これからの事を実感ってなんだよ! なんだやべぇ、語彙力が低下するほどやべぇぞ! なんか黒雲と風がびゅうびゅう吹き始めてるし、遠くで雷鳴が……。


「こおおおおおおッ! かああああああああッ!!」


――ピシャッ!


 あばばばばばばばばばッ! 熱くて痺れる痛みがあああああッ!!


「どうだ、これが痛みだ。よし、殺れッ!」


 え、ちょ……。ゆっくり振り下ろされる剣が俺の首に触れた。


「冷た――」


『孔伷は張角に斬られました』


 冷たい、痛い、恐い、死ぬぅ! って死んだあああああ!!


 なにこれ死んだのに痛みが終わらない、苦しい、辛い…………。


『世に聞こえし孔伷、今ここに散らん……』


 …………。


『孔伷の一族は、歴史からその姿を消した……』

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