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003―1 3回目の憑依 ~当事者意識って大事ですね~

―― 184年1月 春 ――


『蒼天已に死す!』


 中華全土を駆け巡った1つの言葉が漢王朝400年の歴史に終止符を打とうとしていた。


 自らを「大賢良師」と称し、蒼天――漢王朝に代わり天下を平定させるため教主張角は鉅鹿の地で立ち上がる。党員たちは黄巾を身につけ、各地で反乱を起こした。


 中華全土を巻き込んだ農民反乱に動揺する漢王朝は、すぐさま皇后の外戚である何進(かしん)を大将軍に任命し、事態の収拾をはかる。

 そして、各地に派遣された官軍と黄巾党員の永きに渡る戦いは、群雄たちの野心を刺激していった。


――西暦184年、中華全土を天下泰平へと導くため各地で群雄たちが声を上げた……。


「漢帝国の忠実な下僕の孔伷さんの終止符も打ちにきてますけどぉ!?」


 おう、3回目のオープニングだ。そのうち(そら)んじれそうだわ。


「孔伷様、ご命令を――」


 お馴染みになってきたけど、念のため名前をミスター(?)マイペースの確認しようか。


「フーアーユー?」


 鼻ほじほじ。


「――漢文官仕(かんぶんかんし)と申します。孔伷様、人に名を尋ねるときはそれなりの礼が必要ですゆえ……」


 ゴゴゴゴゴって背景に見えそうな圧……。


「怖ッ!? ――いやすまない」


 怖ッ! 今度の漢文、怖ッ!! 能面の圧、そんなに凄まれたせいで……孔伷さんの股間から尋常じゃない汗が吹き出てる。孔伷さんの名誉のためにもう一度言います、汗、です。


「孔伷様、ご命令を――」


 うん、情報大事。


 何を隠そうこの俺は、中華全土の群雄の動きに、都市、戦場のデータ、武将の居場所やステータス、忠誠心まで数値で見える超知識チート持っている。なんならゲーム三国志の経験者でもある、三国志2だけど。……うん、宝の持ち腐れ、知ってる。


 はあ、在野チェックからいきますかね……。いない、まあ居ても来てくれるとは限らないけども! 在野ってわりと簡単に登用できるイメージあったんだけどな。解せぬ。


「そうだ! いないのなら探せばいいじゃない! そう――【捜索】で!」


 さすがに今月から攻めては来ないだろ、1月に武将を1人登用、2月にご褒美接待、3月に徴兵&訓練でなんとか形を作りたい!


「――譙で人材を探してみますか?」


 あまり変にいじると怖い、適当に頷いておこう。


 つーかさ、君主自ら町中で人材探すんだぜ? そんな世界あり得ないだろ。



「わしの名は孔伷! 天下泰平のためわしの元で働く優秀な者を募っておる。今なら金をやろう。さあ、名のある者よ――出てこいやッ!」


 あ、最後の高田さんの物まねは俺が言わせた。住民きょとんだが後悔はない。


「残念だなぁ、わしの片腕になる者を探していたのだが……。あー、登用したときに渡す袋が重いなぁ、早く渡したいものだ」


 チラッ? 袋から金をチラ見せ。


「あれ、聞こえなかったか……。残念だな、わしの片腕になる者を探していたのだが……あ、そこのもの待て。あぁ行ってしまった……」


 ほら、今なら右腕確定だよ! めっちゃ大事にするよー! つーか声かけしても誰も立ち止まらない……。


「あーあー、残念だなー。チラッ、わしの片腕になる者をーチラッ探していたのだが……チラッ」


 おい、誰かこっち見ろよぉ! 酒場も商店街もなんなら民家の前でも、うちの孔伷さんが呟いてるだろ、プライド高いからこういう言い方しか出来ないってのは認める! 認めるから誰か手を上げてくれよぉ!!


 ほら、孔伷さんの目に涙が……、零れたよぉ? 誰か助けてやれよ!


――結果はお察し。


「――譙では人材を発見できませんでした」


 やめて、念押しで傷心の孔伷さんに確認するのやめたげて! あ、はい経費のことですね。以後気をつけます……。


 漢王朝を支え続けている漢一族、圧がすごいわ。もう武将になれよ! 熱くなれよ!


「孔伷様、ご命令を――」


 今月はもう疲れました。


◇◇◇


―― 184年2月 春 ――


 相変わらず各地で同盟活動が流行ってる。


『公孫瓚が徴兵を行っているようです』


 北平(ほくへい)の情報ッ! いらん!


「孔伷様、ご命令を――」


「もう【外交】の一択!」


 【進物】……金や米、アイテムを使って君主の敵対心を下げよう


 【同盟】……3ヶ月から60ヶ月の不可侵条約を締結しよう


 【研究】……同盟8ヶ月以上で一緒に兵器を研究して開発しよう


 【共同】……同盟軍を結成して一緒に敵対君主に戦争を仕掛けよう


 【援助】……同盟相手に無心しよう


 【脅迫】……同盟相手に脅迫して配下にしよう



 敵対70の張角様にお近づきになれれば死亡フラグの1つを断てる!


 そうだよ、最初から孔伷さんは黄色い巾をつければ良かったんだ。さらば漢王朝、よろしく太平道ッ! 同盟か進物か……脅迫? 無理ッ!


「張角殿と同盟を組みたい」


「――張角と何ヶ月同盟を結びますか?」


「そりゃ最大の60ヶ月だ、国の大事を決める交渉だ。わしが行くぞッ!」


 孔伷()しかいないんだけど、漢文よりも先に言ってやった! 同盟期間は長ければ長いほど生き残れる確率が上がるってもんよ!


「――手土産を用意しますか?」


「む、金か米か……」


 そういえば北平で公孫瓚が徴兵してたな、徴兵、戦争、つまり米がいる。


 張角軍も反乱祭りで戦争が必要、つまり米がいる。


「――米5000を手土産にする!」


 1回目のとき、陶謙たちは金を2000弱持ってきていた。ならばその倍の4000、でも4って験が悪いから思いきっての5000だ。どうせ持ってたところで……ねえ? 孔伷さんは首を捻ってるから同盟には反対なのか。



 はい、やって参りました。張角の現在地平原(へいげん)に。


 ぼさぼさの長髪を黄色い巾で束ねている全体的に黄色い男、大賢良師張角。興奮すると瞳孔がばっきばきに開くし、角膜(黒目)結膜(白目)が逆転して超恐いんだよ。え、どこで見たかって? 前回の斬首時です、はい。


「貴公か……本来なら殺してやるところだが、話ぐらいは聞いてやろう」


 怖い、孔伷さんがんばれッ! 気をつけないと股間から汗出ちゃうから!


「み、まみ、身どもどと共にて手ててを組み、てててんかたいへんをかたるぼ」


 ぜんぜん言えてないよ! 圧迫面接にへし折られた就活生でももう少し上手に言えるって! 天下大変って何だよ! 最後は噛むし! それでいて言ってる内容は同格以上の振る舞いという。誰か政治力が簡単に上がる裏技教えてくれ!


「……ふ、貴公の話など聞く耳もたぬわ」


 ですよね、鼻で笑っちゃいますね。


「ざ、残念だじょ……、きき貴公ほどのえいえい英傑ュならびゃわかってくれりゅと信じていちゃちぃ」


 えいけちゅって噛み噛みすぎて、ほとんど張角も聞いてないよ。まあ、まともに聞いてたら殺されてると思うけどね。


 黄色い人たちの蔑んだお笑い声と、微妙に聴こえる陰口をお土産に、譙へと帰る。孔伷さん、さすがに同盟失敗は俺も悲しい。


「――孔伷様、お帰りなさい」


 ちょっと漢文、聞いてくれよー!


「このわしがこれほどに頼んでも駄目とはな……、残念だ張角は先を見る目がない」


 なんでそんなにプライド高いかな? そういうとこだぞ孔伷さんッ!


「…………」


 いや何時もみたいに何か言えやッ! 逆に惨めだわ!


 そして米も受け取ってもらえなくて、敵対70のままなのがキツい。


 次(の月)行ってみよー!


◇◇◇


―― 184年3月 春 ――


『――この「桃園の誓い」こそが劉備、関羽、張飛、三兄弟の旅立ちであった』


 はーい。すうぅ――


「うっらましぃ――「孔伷様、ご命令を――」――んちくしょー!!」


 うおい、俺の心の叫びにカットインやめろぉ! 羨ましいなぁ、こんちくしょうだ、こんちくしょーめッ! せめて顔色の一つも変えて驚けよ能面マンめぇ!


 あーもう! なんだか疲れたよパトラッシュ……。気づけば気力が36、【計略】と【略奪】が出来なくなってる。


 そうか、気力が足りなくて【開発】が出来なかったのか。ならばやることは一つ――


「酒……」


「――はい?」


 お、初めて漢文の戸惑う表情見たかも。為政者だって酒を飲みたいときもある!


「――酒、飲も。この譙でさ」


「――誰を参加させますか?」


「俺と……漢文と漢武も飲もうぜ!」


 まさか上司のお誘い、断らないよな?(パワハラ)


「――金100と米500がかかります。本当に、譙で酒宴を開催しますか?」


「やる! つかお前らも飲めよッ!」


 有無を言わさない!



「いやあ、孔伷様分かってるよなぁ!」


「ああ! 俺ら一生孔伷様についてくぜ!」


「――はあ……また経費が」


「あっはっはっは!! 飲もう、漢文殿も! さあ、さあッ!!」


「――すみませんが、漢武殿はもう少し声量を抑えていただきたい」


「俺って地声が大きいからなあ、まあ飲もう!!」


 渋面の漢文を除けば、結構な盛り上がりを見せてるぞ。孔伷さんも赤ら顔で得意の詩を披露してる。曲解な詩を翻訳するとこんな感じ。


「あぁ、漢に仕えてもう何年になるだろう。駆け引きが下手くそで譙の田舎に送られて、生き残りをかけて交渉に望んでも、国賊だからバカにされる始末。嗚呼、哀しや、嗚呼――うっ! 気持ち悪ぃ、厠はどこじゃあ……うぼろぉ!」


 ……なんだろ、この悲惨な詩。


 しかも孔伷さん、飲み過ぎたせいか疲れが取れてないのな……。小窓にいる孔伷さんの目にも隈がしっかりと。


「――孔伷様、少ーしだけお時間貰えますか?」


 翌日、漢文に1日ずっと説教された。頭の頭痛が痛いとです!

感想お待ちしとります!

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