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大願/呪詛 9

 さて、いざ来てみたのはいいが、どこを探せばいいのやら。動画では『それっぽいところ』と言っていたが。

 紅色はあたりを見回しながら歩き出す。


 駅の近くと違い、辺りは喧噪とはほど遠い夜の静けさに包まれていた。電柱に下げられた街灯が不安げに道を照らしている。


 角を四つ五つ曲がったくらいだろうか、フェンスに囲まれた施設が現れた。内側に木々が立っていて外から様子は伺えないが、フェンスの外側の芝に石碑が一つ立てられていた。薄暗くて何が書いてあるのかははっきりとしないが、


(それっぽいところ、か――)


 再びその言葉を思い起こした紅色は側溝を超えて芝に一歩踏み込み石碑の裏側に手を伸ばした。ざらついた何かを掴む。まさかと思い、ゆっくりとそれを引っ張り出す。


 藁人形だった。風雨に晒され泥を被り、あちこちが酷く黒ずんで腐りかけていたのが暗がりの中でも見て取れた。顔と胸部に一つずつ荒い大穴が空いている。動画のそれと同じものだろう。


「何かあったんですか」

 道路で待っていた関内が声をかける。


「例の藁人形らしいものが置いてありました」


「見せて下さい」


「あまり見ない方がいいと思いますが……」


「いいから見せて下さい」


「その前に、箱をこちらに渡してください」


 紅色は箱を受け取ると、芝の上に置きわずかに開け、麻でできた白い袋を取り出した。さらにその中から半紙を数枚と、小さなビニール袋に入った塩を出し、半紙に人形を寝かせ全体にかける。呪いが本物であれば、塩による清めはそれをいち早く軽減できるということを、紅色は経験則で理解していた。


 一通り塩をかけ終え、関内に半紙に乗せたままの人形を見せる。


(まあ、清めをしても、こんなものを見れば――)


 それを見た関内は血色の悪かった顔をさらに悪くし、その場にしゃがみこんだ。

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