大願/呪詛 3
「この動画で映っていたのは私の友達で……まあ今さら友達とも呼びたくないですけど、この写真を見て下さい。動画と同じ、左の鎖骨のところに黒子があります」
次に関内が見せたのは芸能事務所の所属者個人のプロフィールが載ったページだった。名前は『佐咲久実』。
「一応その子女優で、本名は橋本久実っていうんです。あまり仕事が入ってないのでバイトしてるんですけど。動画で男の人の声が他に聞こえましたけど、たぶんこの子の友達だと思います」
代表作の欄には何らかの舞台の名前が二つだけ書いてあるだけで、あまり、というよりは、ほぼ仕事のないという印象だった。
「動画の相手がわかっているのであれば僕らに大枚を叩くよりも警察や弁護士を頼ったほうがいいと思いますが、どうしてですか?」
「二ヵ月くらい毎日同じ夢を見るんです……車のようなものに体を撥ねられて、固い地面にぐしゃっと落ちる夢。感触がリアルすぎて、そのせいでずっと眠れていないんです。医者に行って睡眠薬ももらいましたが、深く眠ると必ずその夢を見るから寝ることもろくにできないんです」
「それが藁人形の呪いのせいだ、ということですか?」
「動画がアップされたころからその夢が始まったんです。それしか考えられません」
「……成程。関内さんの今の状況は分かりました」
紅色は小さく頷く。だがそれと同時に、微かな疑問も抱えていた。
(動画で藁人形が釘を打たれた部位は、顔と胸の二ヶ所だけだったように見えたが……)