まおう、ごかいされる
本日2話目
「……」
「……」
痴女さんは無言。
わたくしも無言。
ただ無言で勇者が消しとんだ場所を見ているわけですけど……
だって勇者が敵と仲間を一緒に攻撃してくるなんて想像していなかったんですもの!
事故! これはまごうことなき事故よ!
そう考えないと魔王なんてやっていけませんわ! まだ誰にも魔王ってことはバレてないですけど!
へっぽこ魔王だからミスをしても仕方ないですわ。
「これ、なにかな? あたしの秘められた力が発動しちゃった感じ?」
「そ、そうなんですか?」
すいません。わたくしの魔法です。
まさか完璧にカウンターが入るとは思ってなかったんです。
お仲間が死んでしまって痴女さん、もしかして悲しんでるのかしら?
だとしたら悪いことをしましたね。
「まあ、あのクズ勇者が死んでせいせいしたわ!」
いや、憑物が落ちたみたいにすっごい爽やかな笑顔でした!
「あの勇者は人攫いと相打ち、人攫いの自爆玉で肉片一つ残らず消え去ったことにしてしまいましょう。これで攫われた人達をあたしが連れて帰れば功績も賞金もあたしの独り占めよ!」
も、揉み消しですわ⁉︎
横にいるわたくしの手を取り上下に凄い勢いで振る痴女さん。ついでにお胸も上下に凄い勢いで揺れてぷるんぷるんです。
わたくし的には自爆玉という物騒な物の方が気になりますがこの世界では一般的な物なんでしょうか?
「あ、安心してね。あなたたちはちゃんと街まで連れて行くから」
しばらく手を振っていた痴女さんがようやくまともになったようでわたくしから手を離すと照れたように顔を赤くしながらそう告げていますわね。
それにより人攫いにあったらしい他の女性陣からは歓喜の声が上がってます。
わたくしも能力とか魔王だとかバレずに済んだから嬉しいんですけど他の子達と違って元いた場所というのがこの世界にはないわけですし。
みんながウキウキとした様子で痴女さんと勇者(故)が乗ってきたらしい馬車へと乗り込んでいっています。
わたくしはというとみんなと一緒に馬車の中、ではなく、御者台に座る痴女さんの横を陣取りました。
「どうしたの?」
痴女さんが隣に座ったわたくしを不思議そうな目で見てきます。
そんな痴女さんに向けてわたくしは意を決して口を開きます。
「あのわたくし、あなたみたいになりたいんですけどどうしたらいいですか!」
「え、痴女になりたいの?」
「違います!」
飛んだ誤解ですわ⁉︎
それにしても自覚あったんですのね……