表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/26

まおう、かいふくさせておく


「き、傷物になったら売値が下がるんじゃないかしら?」


 ロープで縛られて身動きが取りにくい状態だけど狭い馬車の中、近づいてくる音から逃げるように後へと転がるようにして下がります。

 痛い! 頭打ちましたわ⁉︎


「へへ、そんなもんわかりゃしねえよ」


 いや、バレるんじゃないんですの? 普通。ほら膜とか……何とは言わないですけど⁉︎


 周りの人に助けを求めるよう視線を送ってみましたけどまるで関わりたくないと言わんばかりに皆視線を逸らしてるし。

 いけない! このまま『いたいけなお嬢様、人攫い物資総貰い作戦』の計画通りにしてたらわたくし、普通に初めてがなくなってしまいますわ!


 こうなれば計画を変更しないといけませんわ!

 とりあえずは勝てる、はずですが安全策でいきましょう。こいつらがわたくし以上の実力を隠してたら下手に反撃なんかした時には殺されてしまいますもの!

 いや、真祖の吸血鬼で魔王だからそう易々とは死なないはずですが……

 いえ、それよりも吸血鬼の真祖だなんてバレたらどうなるか……この世界での吸血鬼の立ち位置がわからない今は無闇矢鱈には動けないですわ。

 ここで暴れて吸血鬼討伐隊なんて作られた日には眠れない毎日を送る羽目になりそうですし。

 捕まって見せ物小屋にでも売られたらマオ学で流行ってた薄い本案件ですわ!


 ま、まずは落ち着きましょう。深呼吸です。


 ヒッヒッフー、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー


 ……とりあえず穏便に行きましょう。

 どうにかして血を吸えば吸血鬼としての能力で一時的な魅了状態に持っていけますし力も上がりますからなんとか自然な動作で血を吸いたいものです。


 ですが、ですが! 目の前の殿方はどう見ても! 控えめに見ても不衛生なんですの!

 血を吸うことで力を増すことができる吸血鬼な訳ですが、別にどんな血でもいい訳じゃありませんのよ?


 血にだって美味しい、不味いの差は存在しますし。

 健康な人間の方が少量でも吸血鬼の力になります。この辺は吸血鬼の個性にもよりますけどわたくしの場合は女の子、かつ処女なら能力値が爆上がりになります。あ、性格ブスは血がまずいので受け付けません。


 逆に男で、病気持ちだったりすると普通の吸血鬼なら何でもないんですけどわたくしの場合は能力が下がります。駄々下がりです。


 だから今、わたくしを襲おうとしているのが男の時点で能力が多少下がるのが確定しているわけですが、吸血鬼の特殊能力である魅力を使うためには噛んで多少は血を飲むしか選択肢がありません。

 あとは病気を持ってないことを祈るしかないですわ。

 ほら、盗賊とか人攫いって本(薄い本)で読んだ知識だけど色々犯ってそうじゃありません? 持ってたら嫌じゃありませんか。性病とか……わたくし一応、血に関してはグルメですし。


「へへ、じゃあ楽しませてもらおうか」


 はっ! 余計な考えをしていたら男がニヤニヤと気持ちの悪い笑顔でわたくしへと近づいてきてますわ!

 と、とりあえず病気かもしれないからなけなしの魔力で神聖魔法で回復させて綺麗な体にしておきましょう!


「……エクストラヒール」


 一瞬だけ縛られた状態だけど指先から目の前の男に向けて回復の魔力を飛ばしておく。


 エクストラヒールは神聖魔法でも最上級の回復魔法です。というかわたくし、回復魔法がこの最上級のエクストラヒールしか使えませんのよね。

 だから重症でもかすり傷でも回復させようと思ったらこの魔力消費が馬鹿みたいに大きいエクストラヒールを使うしかありませんの。

 だから保有魔力が化物級と言われても大して魔法がつかえないんでのよね。はぁ……


 とりあえず!大概の病気は余裕で治癒できますし、感染症なんかも防げるはずですわ! 吸血鬼が血を吸って感染したとか冗談にもなりませんし。

 これでわたくしの能力が下がるのは最低限に留められるはずですし。

 そんな自分の体が健康な状態に戻ったことなど知らない人攫いさんはというと邪な笑みを浮かべて手をワキワキとさせながら近づいてきていらっしゃいます。

 そんな手に向かい、鋭く尖った八重歯を突き刺すべく口を開けて待ち構えたのですわ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ