まおう、すいこむ
結果から言いましょう。
作戦はうまくいきました。ええ、うまくいきましたわ!
で、す、が!
「うぇぇぇぇ……」
わたくしの横でフブキが美少女が出してはいけないキラキラしたものを出してます。あれですわ。ゲ○ですわ。
まあ、戻しても仕方ありませんわよね。
なにせ目の前の街道が血の海と化してる訳なんですもの。
いえ、詳細に言えば馬と馬車と人のブロック肉が散乱しているのですが……
まさかここまで上手くいくとは思ってませんでしたわ。
わたくしが取った作戦というのは至ってシンプルな物。
それは街道を挟んで並んでいる木に魔鉄の糸をくくり付け、街道を魔鉄の糸で通れなくするというものでした。
精々馬車を引いてる馬が切り裂かれて死ぬくらいかと思っていたのですが、馬車が思ったよりもスピードを出してたからか、もしくは魔鉄の糸の硬度が凄まじかったからかはわかりませんが張り巡らされた魔鉄の網に向かって突っ込んでいった馬車は残骸とブロック肉という酷い光景へと早変わりしてましたわ。
その光景を見てフブキは戻してるわけですわ。
わたくしは一応は吸血鬼ですし、血の匂いで気分が悪くなったりはしません。
まあ、馬の血とか不味いので多少は不快感はありますがその程度ですわね。
「開け」
屈辱的な格好をしながら唱えると魔王の書がわたくしの手元に姿を現します。現れた魔王の書のページをめくり、ポイントを確認するとそこそこにポイントが増えていましたわ。
「ポイントが増えましたわ!」
「よ、よかったですねお嬢様……」
顔を蒼くしながらもフブキも手を叩いて褒めてくれてますわ!
馬車が壊れて馬がブロック肉になった瞬間に何かが体に入ってくるような感じがしましたし、あれが魔王ポイントなのかもしれませんわね。
「お嬢様、この殺人現場どうするんです?」
あら、わたくし魔王ポイントが入った事で少しばかりハイになってたみたいですわね。
確かに魔鉄の網に突っ込んで来たんですから事故というか殺人現場と言われても間違いじゃありませんわね。
実際馬車に乗ってた方は死んだみたいですし。
「魔王の書で物なら吸い込んで魔王ポイントに還元できるらしいわ」
「なるほど、殺した物を最後まで有効活用するという事ですね!」
あら、なぜかしら?
凄く人でなしみたい言われ方をした気がするわ。褒めてますわよね?
「回収」
キーワードを唱えると魔王の書が紅く怪しく光り輝き、ページが自然にめくられていく。
ページがめくれる度に馬車の残骸やブロック肉が宙に浮き上がり、魔王の書へと吸い込まれていってますわ。
そして少しですがポイントが入ってきている感じもしますわね。
魔王の書を開いて十秒程経つと街道にはブロック肉や馬車の残骸はほぼ消えていましたわ。
「お嬢様」
そう、ほぼ、ですわ。
魔王の書で吸い込んでポイントに変換できるもののみ。
「あの死にかけどうするです?」
つまりは死にかけでも生きているエルフは死体というものではなかったがために回収できなかったという事ですわ。




