まおう、まちがえる
「お嬢様、外に出たのはいいんですけどどうするんです?」
街から出てしばらくして周りに人の気配がなくなったからかフブキが尋ねてきました。
「とりあえずは適当に依頼をこなしながら魔王としての活動をしますわ。あ、絶叫草ですわ」
フブキに答えながら足元に生えている絶叫草を引き抜きます。
確かこれ傷の治りがかなり早くなる塗り薬になるんですのよね。そのかわり絶叫するくらい痛いらしいですけど。
「魔王としての活動、です?」
「ええ、魔王といえば当然、居城がいるわけですし」
マオ学で学んだ時も魔王は大体城に住んでましたわね。裏ボスくらいになると異世界に住んでたり、地底に住んでいたりするらしいですけど。
わたくしは地底になんて住みたくないですわ。だってジメジメしてそうですもの。キノコありそうじゃない? わたくしキノコ嫌いですし。食べられるキノコと食べられないキノコの違いもわかりませんし。
「でもそんな城なんて簡単に作れるんです?」
「そこは魔王の書がある程度はやってくれるみたいですわ」
さすが魔王になれば貰える書物である魔王の書。
魔王の活動拠点になる物の作り方まで書いてありましたわ。眠くなるのを堪えて読んだかいがあったというものです。
やり方としては魔王ポイントを使って選択した場所を支配地域にすることでその支配領域にポイントを使って建物を建てる事できるらしいですわね。
この支配地域はダンジョンとして扱われるため、この中で起こったことは魔王ポイントへと還元されると。だからこそ魔王は支配領域に建物、ダンジョンになりうる建物を作るわけですし。
ただ厄介なのはこの支配地域にするためにはかなりの魔王ポイントが必要になるということね。
元々の能力値が高い魔王なら適当に国なり街なりを潰して纏めてポイントが手に入るんでしょうけど攻撃手段がないわたくしにはなかなかに辛いですわ。
そう考えると戦闘能力の高い従僕を引けなかった事が痛いですわね。
あ、フブキはいいんですのよ? 可愛いですし。わたくしの代わりに家事全般やってもらう予定ですし。
でもそうなると戦闘能力皆無の二人組ですからポイントは稼ぎにくい、と普通なら考える事でしょう?
「わたくしに秘策がありますわ!」
「本当です⁉︎」
ええ、この作戦なら行けますわ!
「泥舟に乗った気でいてくれてよくってよ!」
「お嬢様、それ沈んじゃうです!」
「……大船に乗った気でいてくれてよくってよ!」
たまには間違えますわ!




