まおう、うける
「うぅ、すいませんお嬢様」
「いえ、これが一番正解な気がしますわ」
わたくしはフブキを背中に背負い、冒険者ギルドの扉を潜ります。
何故かって? フブキが転げまくるからですわ!
一歩踏み出しては転ぶその姿はもう芸術かと思うくらいにバラエティに富んだ転び方をするんですもの。さすがに進まなさ過ぎて担いだ方が早いということに気づきましたわ。
フブキは小さいですし、わたくしも一応は魔王。小柄なフブキを担いで歩く事くらい容易い事ですわ。
そんなわけでフブキを担いで冒険者ギルドに入ったら凄く注目されましたわね。
そんな視線を無視しながらギルドの受付へと向かい歩いて行きます。
そこにはここ数日ですっかり見慣れた全く表情の変わらない受付嬢が座っており、わたくしに気付いたのかこちらへと視線を向けてきました。
「おはようございますメアリーさん。人攫いは感心できませんよ?」
「第一声がそれですの⁉︎ わたくしのイメージはどうなってますの!」
なんでわたくしが人攫いなどに手を染めないといけないんですの!
そんなに切羽詰まるほどお金には困ってませんわ。
「冗談です」
全く表情を変えずに言う冗談ってどうなのかしら?
「それで本日はどのようなご用件でしょうか? 雑草駆除なら山ほど指名依頼できてますが」
雑草駆除なのに指名依頼が山ほど来るというのはどうなのかしら?
ま、まぁ、それほど仕事が優秀だったと考えておきましょう。
「今日はしませんわ。とりあえずこのフブキの冒険者登録をお願いしますわ」
「かしこまりました。少々お時間を頂きます。その間に依頼を受けますか? 雑草駆除とか」
やたらと雑草駆除を推してきますわね。
ですが、今回の目的は街の外に出てからじゃないとできませんので却下ですわ。
「いえ、今回は街の外でできる簡単な依頼がいいですわね」
「そうですか」
あ、あら? 心なしか受付嬢さんの表情が無表情ながらに沈んでいるような気がするのは気のせいかしら?
「街の外での依頼でしたらこちらになります」
沈んだ表情を浮かべたのは一瞬だったようで元の無表情に戻った受付嬢さんは幾つかの紙をわたくしとフブキに見えるようにテーブルに置いてくれました。
「薬草採取と討伐系の依頼ですわね」
「はい。薬草は薬を作るのに必要なので需要は下がりませんので一定の金額で買取をしております。討伐系の依頼は討伐数が街の周辺の安全に繋がりますのでいくらでもあります」
なるほど。
どちらも常に必要とされている依頼なわけですわね。
「どちらも恒常依頼、常に受け付けていますので他の依頼のついでに達成する冒険者さんが多いです」
「他の依頼というと?」
「主に他の街へ行く時の護衛、もしくは賞金首などの討伐時でしょうか」
ふむふむ。
つまり恒常依頼だけを受けるような方はいらっしゃらないのですわね。何かを受けるついでの小遣い稼ぎといったところでしょう。
「なら恒常依頼を受けて外にいきましょう!」
「はいです!」
元気よく返事をしたフブキと共にわたくしは街の外に出る事にしたのでした。




