まおう、たびたつ
「す、すいません、です」
わたくしが膝をついてショックを受けているとフブキが凄く謝ってきています。
いえ、確かにショックではありましたがほら、元から攻撃力なんて無かったようなわけですから残念ではありますがね。フブキの方も申し訳なく思ってるからか犬耳はペタンとなって、金色の尻尾も心なしかシュンとしているような気がします。
「いえ、フブキが謝ることではありませんわ」
とりあえずは換装型というのが気になりますわね。
部下というか従者の能力を知るのは上に立つ者、いえ、魔王の務めですもの!
「とりあえずフブキ!」
「ひゃ、ひゃい!」
うーん、よく見てもこれがホムンクルスには見えないわ。
表情なんて完全に怯えた小動物にしか見えないわ。服装がどう見ても痴女のようなスクール水着とエプロンという格好ですけど……
「換装型というのが何かわからないわ」
そもそもホムンクルスが他とどう違うのかもわからないんですが。
「か、換装型というのはホムンクルスの性能を上げる事ができる換装パーツを身に付ける事ができるホムンクルスの事、です」
あら? その言い方なら攻撃力が上がるようなパーツを装備させたらフブキも戦闘ができるようになるのではなくて?
「ですので家事なら任せてください! です」
フンスっ!と胸の前で拳を作り鼻息荒く言ってきますわね。これはもう戦闘用のパーツを付けても戦える感じがしませんわね。なにより今まで話してる限り本人が全く戦闘向きの性格をしてませんもの。
「わかりましたわ。わたくし家事は苦手ですのでフブキに任せますわ!」
「はい!」
「じゃ、とりあえずは部屋の掃除をお願いしてもいいかしら?」
フブキに興奮したわたくしの鼻血が部屋のそこいら中に飛び散ってますから、何も知らない方が見たりしたら犯罪の行われた場所としか思われないんじゃないかしら?
最悪捕まるんじゃない?
「任せてください! フブキの47のメイド術でピカピカにしてみせる、です!」
「頼もしいわ」
47のメイド術って何かしら? 響きだけ聞くと暗殺術みたいな感じなのだけどフブキのあの様子では違うわよね?
掃除用具を宿屋の方から借りに行くためにフブキが部屋から出て行くとわたしくしは手近な椅子へと腰掛け……るまえにと。
「開け」
キーワードを唱えたことにより何もない空間から滲み出るかのように魔王の書が姿を表しました。
く、この間抜けな顔をしながら唱えないと魔王の書が現れない仕様、改善される見通しはないんですの⁉︎
いえ、とりあえずは魔王の書をちゃんと読むところですわ。
今まで勉強なんてほとんどしてこなかったから苦労してるわけですし、魔王の書の使い方くらいはきっちりと把握しておかないと命に関わりますし。
そう決意して手にした魔王の書を開き、数秒経ったらわたくしの意識は夢の世界に旅立っていたのでした。
スヤァ……