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まおう、しゅといりする


「あの壁の向こう側が首都ノーヴァスだ」

「あれが!」


 馬車を操りながらアシュリーさんが眼前に見える巨大な壁を指しながら教えてくれます。

 聞いた話では首都ノーヴァスはグルリと巨大な壁で覆っている城塞都市であるとか。

 なんだか都市の発展を壁が邪魔するような気がしますけど外敵である魔物から身を守るためには必要不可欠らしいです。

 まあ、大きな都市を安全にするにはそれが一番ですわね。


 魔王とか攻めてきたら意味はなさそうですけど。

 エリザベスちゃんとか攻めてきたら無理ですわね。

 一瞬でこの都市は生きるものが誰もいない氷の彫刻だらけの死の都市になるもの。


 そんなわけで首都に入るために壁に設置されている検問所へと馬車は向かいます。

 なんだか、ドキドキしますわ。

 ここでわたくしが魔王だということがバレたら、もうわたくしは死ぬのが確定したようなものですし。

 しかし、アシュリーさんと検問所にいる兵士は知り合いなのか和やかに会話をするだけで特に何かをチェックすることなくあっさりとスルー。

 いや、魔王のわたくしが言うのも何ですがこの国大丈夫かしら? あっさりと魔王の侵入を許してますわよ?


「ここが冒険者ギルドよ」

「おー」


 馬車が止まり、ようやく地に足をつけたわたくしにアシュリーさんが建物を指差して教えてくれます。

 剣と盾が描かれた看板が吊るされている大きな建物がそうみたいですわね。

 かなりの大きさの入り口には扉などなく外からでも中の様子が窺えるようになっていますわ。


「それじゃいくよ」


 馬車から人攫いさん達に攫われた人達を降ろしたアシュリーさんがみんなを引き連れるようにして冒険者ギルドの中へと入っていったのでわたくしも慌てて追いかけて行きます。


 冒険者ギルドの中は思ったよりも広いようですね。

 あとマオ学で習ったように昼間っからお酒を飲んでるような人も見えませんわ。

 まあ、習った事と違うなんてことはよくある事だし気にしないことにしましょう。


「誰かいないのー?」

「いや、いないってことはないからね?」


 アシュリーさんが大きな声を出すと、慌てた様子で一人の男性がカウンターから姿を現した。


「依頼達成したから賞金頂戴」

「ああ、人攫い討伐の依頼受けたのアシュリーだったんだね。確か勇者協会の勇者と一緒じゃなかったかい」


 すいません。その勇者さんはわたくしが消し飛ばしました。なんて言えるわけがないですわ!


「あのクズ勇者なら魔法の暴発で消えちゃったわ。まあ、人を巻き込むような勇者技を使おうとしたんだから自業自得ね」

「最近の勇者協会は酷いと聞くけどそんなにかい」

「ええ、街のチンピラのほうがまだ善良に見えるわ」


 チンピラより酷いって……勇者ってそんなに酷い連中なのかしら? なんだか今の話を聞いてると普通に人質とか取りそうなんだけど。


「まあ、事故で死んだなら仕方ないよ。……あいつはいつか事故に見せかけて殺してやろうと思ってたのに」


 あら、なんだか一瞬寒気がした気が……

 なんだか朗らかな笑顔で何か物騒な言葉が聞こえた気がしましたが気のせいですわよね?


「それより後ろのお嬢さん方は?」

「ああ、人攫いに攫われてた人達よ。あとこの子は冒険者志望よ」


 そう言ってアシュリーさんはわたくしの頭に手を乗せながら朗らかに笑ったのでした。

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