【第九二話】
ギリギリ日付を超えてしまった……orz
「敗戦国という割にはそこまで荒れた様子はないですね?」
「あぁ、前に僕が来た時も今と大して変わらない感じだったよ」
とりあえず十日間ほど泊まれる場所を探さないといけない。
ベルナルドさんとアシュタルさんがいつごろ着くのかわからないけど、一、二週間ほど泊まれるようにしておくべきだろう。
「今日からお世話になる宿を探してから街を見回ってみようか」
「そうですね!」
エリカとミリカの情報も集めたいし、もともとはこの国の聖女だったんだから何かしらの情報は出てくると予想しているけど……。
宿らしき建物を探していると、前回も見た何を売っているのかわからない店を見つけた。
ここで買った謎の卵からイデアが生まれたんだよな。
当のイデア本人は今も僕のフードの中で眠っているけど。
最近イデアはよく眠るようになったけど、どうかしたんだろうか?
「あ、あれって宿屋の看板じゃないですか?」
そんなことを考えていると、マリアンナちゃんが一つの建物を指さしそんなことを言った。
見れば、木の看板に大きくベッドの絵が描いてある、これぞ宿屋! って感じの看板だった。
「多分っていうか、きっとそうだね。行ってみようか」
「部屋分けはどうしますか?」
「当然二部屋とるけど……」
「私は別に一部屋でもいいんですけどね?」
「未婚の女性が何言ってんの。いくらマリアンナちゃんが僕のことを兄のように思ってくれても、実際には血はつながってないんだからダメに決まってるでしょ」
「ぶーぶー」
マリアンナちゃんは不満そうな顔を隠そうともせずに僕の後をついてくる。
全く……そっちはよくても僕の方が問題あるから。
僕にはもうシャルがいるから浮気なんて絶対にしないってのは決まってるんだけど、何かしらの事故が百パーセント起こらないことにはならない。
少しでもそういう事故の可能性が下げられるなら部屋は別々にするべきだろう。
「そんな顔してもこればっかりは譲らないからね」
納得していない顔をしているが、僕がなんと言おうと考えを変える気がないというのが伝わったのか、おとなしくなった。
***
「あー……あっちにおいしそうなスイーツが売ってるけど食べる?」
「ふん! 私はそんな物に釣られるような安い女じゃないんです!」
結果的にあの建物は宿屋で正解だった。
僕たちはひとまず十日間部屋を借りて、それからさっき言ったように街を散策することにした。
部屋を借りるとき、マリアンナちゃんがこっそりと同じ部屋にしようとしていたので、何とか阻止したら「そんなに私と同じ部屋が嫌なんですか!」と拗ねてしまった。
なので今はマリアンナちゃんの機嫌取りに勤しんでいるところだ。
「でもほら、すごい美味しそうだよ? ほんとに要らないの? 今ならトッピングつけ放題なのに?」
「……ふ、ふん!」
こうして怒ってはいるけど、ちらちらとスイーツの方に視線が向かっているのを僕は見逃していない。
これはもう少しでいけそうかな?
「しょうがないな、それならいくつでも頼んでいいよ?」
僕がそう言った瞬間には、もうすでにマリアンナちゃんはスイーツの店の前に並んでいた。
「お兄様! 早くしてください!」
「早いなぁ……」
そうして薄めのパンケーキでいろいろなフルーツをサンドしたものを全部で五個も買うことになってしまった。
意外とお高めで思った以上の出費となってしまったのだった。
それから十分後。
甘いものを食べてすっかり機嫌も直ったマリアンナちゃんと、こんどこそしっかりと街を見て回ることにした。
「あっ、この店……」
いろいろな店を回っていた時、イデアの卵を見つけた店を発見した。
相変わらず店主は訳のわからないようなものを売っていたが、前回はお世話になったというのもあり、比較的普通そうなアクセサリーをいくつか購入した。
そのうちの一つをマリアンナちゃんにプレゼントし、シャルに渡す分と、あとはエリカとミリカに会えた時にいきなりいなくなってしまったお詫びとして渡すつもりだ。
「こんなかわいいアクセサリーをもらってしまってもいいのかな?」
「普段一緒に戦ってくれているお礼みたいなものだから気にせず受け取ってくれるとありがたいかな」
「そう言う事なら……ありがとうございます!」
僕がマリアンナちゃんに渡したのは赤い宝石のようなものが付いたブローチだ。
なんでも店主の言う話が本当ならこの赤い宝石の力で魔力が増加するとかなんとか……。
いろいろな魔法を使って戦うマリアンナちゃんにはピッタリだと思ってプレゼントした。
「……いつもありがとね」
***
そうして僕とマリアンナちゃんは街を一通り散策し、そろそろ宿に戻ろうかと話していた時、人混みの中に見覚えのある人影を見つけた。
「――あれは!」
僕はマリアンナちゃんにその場にいるように言い、急いでその人を追いかけた。
人にぶつかりそうになりながらもかき分けて、どんどんと先に進んでいくその人を追いかける。
僕の見間違いでなければ、あれはミリカだった。
いつも一緒にいたエリカはどこにいるのか、今までどこにいたのか、など、聞きたいことはたくさんあるけど、何より真っ先に無事でいてくれてよかったと伝えたい。
「ミリカ!」
ようやく追いついた少女の名を呼ぶと、少女が僕の方を振り向いた。
「お兄……ちゃん……?」
久々に見た義妹の顔は、ひどくやつれていたのだった。
急展開すまん!
自分の進行速度では完結まで途方もない時間がかかってしまうんじゃないかと、意味もないところで話が脱線してしまうせいで話数ばかり伸びていくのをどうにかしようと、そう思って話を進めることにしました。
急展開ではあったけど無理矢理感はできるだけ出ないように書いたつもりなのでそこまで違和感はないと思います。
楽しんでいただけたなら幸いです。
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