【第八七話】
昨日は更新をサボってしまいすいませんでした!
今日からまた頑張りますのでよろしくお願いします!
移動すること約十分、丘になっているところから平原を見下ろすと、そこには森の奥で出会ったモンスターの大群とは比べ物にならないほどの数の兵士たちがこちらに向かって侵攻してきていた。
「あれがアポトリシキ軍……」
動きは非常にゆっくりだが、少しの乱れもない統率の取れた動きだった。
「だいたい三万ってところですかね。報告よりも少しばかり数が増えていますが……まぁ問題ないでしょう」
三万で問題ないか……。
僕からしたらとてつもない数字に聞こえるんだけど、こういう多数対多数の戦闘では誤差みたいなものなんだろうか。
「僕たちはどうすればいいですか?」
「この後、我々の軍が防衛に入るので、そこに一緒に行って守ってもらいたいです」
「了解です」
できるだけ少ない被害でこの戦争が終わってくれると良いんだけど。
「相手方の要求してきた『双聖女』がどの程度の存在なのかわからないうちは何とも言えないですが、多少兵を減らしたところで撤退すると考えられません。今回の戦争はアポトリシキが目的を達するか、我々がアポトリシキ軍を滅ぼす以外の方法で終結はしないでしょう……」
「そんな……」
僕としてはエリカたちを渡すなんて論外だし、そうするくらいなら目の前の敵をいくらでも切ることができるだろう。
だけど他の兵士は違う。
僕みたいに傷が自然に癒えることはないし、たった二人を受け渡すだけでこの戦争が終結するのならそちらを選んだ方がいいと考える人もいるだろう。
「何とかそれ以外で終わらせる方法はないですか……?」
「戦争で得られる戦果は、ある一定以上の損害が生じたときマイナスになります。わかりやすく言うと、物を買うとき自分が持っている以上の金額の物を買うと借金することになりますよね。一定の損失というのがこの場合の所持金で、戦果が商品です。所持金以上のものを買うことはできないので、どこかで諦める必要が出てきますよね」
「つまりは、どっちにしろ多くの敵を倒すのが一番早く戦争を終わらせる方法ってことですか?」
「そうですね。問題なのは先ほども言ったように、アポトリシキにとって『双聖女』がどれほどの価値があるのかです。何が何でも必要という話なら、その方法では厳しいかとも思いますが……」
どちらにしろ、まずは目の前の敵をどうにかしてから考えるべきか……。
何かいい方法が見つかればいいんだけど。
***
「魔法部隊は呪文の詠唱を開始! 補給部隊以外の兵たちは配置に着け!」
ベルナルドさんがそう指揮を取ると、日ごろの訓練の成果なのかこれだけの多人数が行動しいているとは思えないほどに素早い動きで配置についた。
戦争のことはよく分からないが、それぞれの兵士たちが、皆一様に士気が高いということだけは今の動きを見て分かった。
「此度の戦いは相手の方が数は多い。しかし、兵の練度はこちらの方が圧倒的に上! 何も恐れることはない! 勝ち戦だと思って行け! 傷を負った者はすぐに撤退せよ。多少の怪我は回復魔法でどうにかなる。この軍を預かる者として、一人の死者が出ることも許さん! 全員生きて帰れ!」
ベルナルドさんがそう叫ぶと、兵たちは声をあげながら敵を迎え撃つ。
僕たちも最前線に立ち、向かってくるアポトリシキ軍の兵士たちに立ち向かった。
事前にベルナルドさんからこの兵士たちも森のモンスターと一緒で体を切られても死なないというこは聞いていた。
だから、僕が狙うのは相手の首。
頭さえどうにかできれば動きは止まるので、基本的には相手の首を切るように心がける。
マリアンナちゃんは少し後ろの方で全体に強化の魔法をかけつつ、負傷して後退してきた兵士たちを癒していた。
そして、魔法部隊の呪文詠唱が終わると敵兵の後ろの方が吹き飛び、戦闘はより過激になった。
しかし、それに比例して僕たちの戦いは簡単なものとなって行った。
どういうわけか、敵は全員ただがむしゃらに突っ込んでくるだけで、多少の個人差はあれどそこまで苦戦するような強さではなかった。
なんというか、そう命令されているから動いているだけ……そんな印象を受けた。
「敵の数が減ってきました!」
開戦から約三時間後、敵はそのほとんどの兵士を減らしており、残っているのは指揮を執っていたであろう大将とその取り巻きだ。
「ここからは逆に打って出るぞ!」
最初はこちらの方が人数不利だったのに、今では見る影もないほど敵の兵は死に絶えた。
それでも一向に撤退する気配がないのが、何よりも不気味だった。
「……ひゃっはっはっは、所詮死に損ない共だとこの程度かァ」
と、ほとんどの兵士が倒れると、やっと敵の大将が動き出した。
追い詰められているのは向こうのはずなのに、何故かうれしくてたまらないと言ったように笑いながら歩いてくる一人の男。
赤い髪で聖職者のような服を着た男だ。
その男は手に黒い槍を持ち、まるで散歩でもするかのようにこっちに歩いてきた。
「もう勝敗はついた! おとなしく降伏するなら命の保証はしよう」
「アァ? なーに雑魚ども殺したくらいで調子乗ってんだ? 勝敗はついただと? 一体どこを見てんだよォ!!」
男がそう叫びながら槍を地面に突き立てると、地面から数々のモンスターたちが這い出てきた。
その数は最初のアポトリシキ軍に匹敵するほど。
さらに、男の真下が大きく盛り上がると、その地面からは全身を腐らせたようなドラゴンが現れた。
「さぁ、おかわりだぜぇ!」
そうして人間対人間の勝負がついたと同時に、人間対モンスターの戦いが始まったのだった。
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