【第八四話】
投稿が遅れてすいません(定期)
何体いるのか数えるのも億劫になるほどのモンスターの軍勢を前に、僕はできることを考える。
こういう時に魔法が使えれば一気に数を減らせるのに、なんてない物ねだりをしてしまうほどには絶望的な状況ではある。
「地道に削っていくしかないかな……」
一体一体は弱いモンスターでも囲まれればそれなりの脅威にはなる。
マリアンナちゃんとの約束を守りながらこのモンスターたちを足止めしておくには遠距離から少しずつ減らしていくしかないだろう。
僕の戦い方で遠距離攻撃ができるものは限られているので、唯一と言っても過言ではないその攻撃の準備をする。
僕はどのあたりに撃ち込むのが一番効果的なのかを考えながらオーダーに魔力を込めていく。
やはり他より突出して前に出ている団体に撃つのがいいだろう、そう考えたところで魔力が溜まった。
「――ッ!」
居合の構えから一気に刃を抜き放つと溜められていた魔力が波紋のように広がりモンスターたちを切り裂いていく。
一度の攻撃で数十体のモンスターの上半身と下半身が泣き別れした。
普通のモンスター、いや、生き物なら目の前で味方が大量に死ねば少しは動揺するものだが、こいつらにそういう心はないのか、死んだモンスターを踏み台にして迫ってきている。
「そもそもこのモンスターたちってなんでこんなに統率が取れた動きしてるんだろう?」
基本的に違う種のモンスター同氏で共闘することはない。
例えばオークにとって狼系のモンスターは天敵であり、たとえ天地がひっくりかえろうとも一緒に行動することなどありえない。
これは数々のモンスター研究者が研究していることで、なぜ共存できないのかも証明されている。
詳しい研究内容と詳細は省くが、狼にとって豚が食料となりえる……と言うことだけ言えば十分だろう。
弱肉強食の世界はモンスターと言えども変わらないらしい。
それなのにも関わらず、こうしてこのモンスターたちは徒党を組んで街の方へ侵略している。
考えづらいことではあるが、何者かがこのモンスターを指揮していると考えた方がしっくりくる。
「……あれ? なんか動いてる?」
いろいろ考えていると、僕が真っ二つにしたモンスターたちが這いずってきていることに気が付いた。
下半身と他のモンスターに頭を踏みつぶされたものは動いていないことから、頭を切り離さないとこいつらの動きは止まらないらしい。
そういえば、アンデットなんて呼ばれるモンスターもこいつらみたいに頭をどうにかしない限り死なないって聞いたことがあるけど……何かしら関係があるんだろうか。
「まぁ、そんなことより今は目の前のことに集中しよ」
考えている間に第二撃の準備が整ったので敵の固まっている場所を狙って放つ。
今回は動くことも考慮して頭付近を狙った。
「体のでかいモンスターはこれでいいけど、ゴブリンとかちっちゃいのはこれだと当たらないんだよなぁ」
これだけいろいろな種類のモンスターがいると、身長差とかも考えないといけないからめんどくさいな。
二回目は高身長のモンスターに狙いを定めたから、低身長のモンスターはそのまま来ちゃってるんだよね……。
やっぱり高いモンスターを真っ二つにするくらいの高さが一番安定してモンスターを倒せる気がする。
「ハァ!」
三発目が溜まったので最初と同じように放った。
***
「……どのくらい経ったんだろう」
あれから僕はモンスターの群れを下がりながら斬るを繰り返し、ここ数週間で倒したモンスターより多い数のモンスターを殺した。
斬撃を放った回数は三桁から先は数えていない。
今日ほど魔力が多かったことをありがたく思った日はないだろう。
……魔法が使えたらもっとありがたかったんだけどね。
僕とモンスターたちの攻防は元居た場所から森を抜け、もうすぐ街が見えてこようかというところまで続いていた。
もう街の人たとは避難しただろうか、そろそろ戻っても危険はないか。
いろいろ考えたけど、答えは出ずにここまでずるずるとやってきた。
低ランクのモンスターたちはここの来るまでに僕がほぼ全滅させて、残っている奴らは、遠距離から斬撃を飛ばした程度じゃ怯みはしても死なないような強力な奴らばかりだ。
こんな奴らを街に行かせるわけにはいかないと、森の中で方向を変えようと誘導しようとしたが、簿奥が進行方向から外れると、モンスターたちは僕のことを無視して街を目指しだしたから、断念するしかなかった。
「ルイスお兄様ー!」
僕がどうしようかと悩んでいると、外壁の上からマリアンナちゃんの声が聞こえてきた。
斬撃を撃ってから振り返ると、外壁の上には数々の武器が並んでいた。
戦争に備えて準備されていたであろう大砲や、バリスタ、弓兵がいつでも撃てると構えていた。
「その場から離れてください!!」
僕はマリアンナちゃんの声が聞こえると同時に、その場から勢いよく飛び退さった。
すると、それを合図にモンスターたちに矢の雨が降り注ぎ、巨大なモンスターめがけて大砲が放たれた。
一度攻撃が止んだかと思えば、すぐに色とりどりの魔法が浴びせられる。
魔法が止むとさらに矢と大砲が降ってくる。
そのサイクルが三回ほど繰り返されると、動くものは見えなくなり、今度こそ攻撃が止んだ。
モンスターたちのいた場所を見ると、そこにはぐちゃぐちゃになったモンスターと思わしきものたちが転がっていた。
「はは……とんでもないな」
あんなに頑張って時間稼ぎをしなくてもよかったんじゃないかと思えるほど圧倒的な殲滅力だった。
一体僕の頑張りは何だったんだと思わなくもないが、こうして攻撃の準備をする時間を稼いだと思えば無駄じゃなかったんだと思える気がする。
とぼとぼと街に戻ると、門をくぐったところでマリアンナちゃんが突撃してきた。
「怪我はないですか!? いつまでたっても戻ってこないから何かあったんじゃないかって心配したんですからね!!」
「いや、いつまで時間を稼いだらいいのかわからなかったからさ、とりあえずできるだけやろうかなって思って。怪我に関しては善処するって言ったからね、頑張って無傷で帰ってきたから心配しないでよ」
まぁ、多少怪我してても、オーダーの力で自然に治癒されちゃうからわからないだろうけど。
今回はちゃんと怪我せず帰ってこれたということでね。
約束は守りましたとも。
「そうは言いますけど、心配なものは心配なんですよ」
ぼそっと「遠距離でも連絡を取れる手段を見つけないといけないですね」なんてことをマリアンナちゃんは言っていたが、確かにあれば便利だよな、と思いながらいまだしがみついて離れないマリアンナちゃんの頭をなでたのだった。
今日はもしかしたら夜にも一本投稿するかもしれないです。
されなかったら明日の朝ということでよろしくお願いします。
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