【第七五話】
内容が無いようです……ってね。
すいません。
「あのー、公爵……私たちにもそちらの方を紹介していただけるとありがたいのですが……」
僕がどうやってアシュタルさんを説得しようか考えていると、今まで空気だったアシュタルさんと話し合っていた人たちがそう言った。
そういえばここに来てからアシュタルさんとは話していたけど他の人たちのことはスルーしちゃってたな。
今回の戦争のことで話し合ってるのは分かるけど、この人たちは誰なんだろう?
「あぁ、すまない。少女の方はルイス君の紹介を聞いていたから必要ないね、彼はルイス・イングラムと言って、君たちにも話があったと思うけど、読師のウナさんは知っているよね? 彼女や国王様からアヴァリスに龍が出現するということを聞いたはずだ。彼がその龍討伐の鍵を握っている」
「なッ!? 彼が例の龍を倒せる可能性のある者ですと!?」
「歴代の勇者たちと同じ力を持つと言われている!?」
「なんでそんなすごい人みたいな呼ばれ方されてるの!?」
龍を倒せる可能性のある者?
歴代の勇者たちと同じ力を持ってる?
龍は何としても倒す気はあるけど、さすがに勇者たちと同じ力っていうのは言い過ぎなんじゃ……。
「彼の持っている剣……伝承に残っているものと同じなんじゃないか!?」
「ということは隣の少女の持っている杖もあの伝説の?」
「なんということだ! 勇者の再来じゃないか!」
「ちょっ! そんなすごい人と同じにしないでください! 勇者に比べたら僕なんて凡人に等しいですから!」
おとぎ話に出てくる勇者と同じ立ち位置に立つなんておこがましい。
オーダーがすごい武器だってことは分かったけど、僕が勇者かって言われるとそこまでではない。
歴代の勇者はたくさんの人たちを助けていたが、僕は自分の家族すら助けることはできなかった……。
海を割る剣術や、山を消し飛ばす魔法。
僕はそんなことできないし、守れるものも少ない。
「その話はここまでにしておこう。今はアポトリシキとのことに集中しよう」
僕が自己嫌悪に陥っているのに気付いたのかアシュタルさんが話を変えた。
「そ、そうだったな……いや、それなら彼に戦線に出てもらえばいいのではないか?」
「そうですよアシュタルさん! 僕も戦わせてください!」
援護射撃が来たから利用させてもらおう。
何とかこの人たちに味方してもらって僕もアポトリシキとの戦争に参加させてもらわないと。
「何度も言っているが、ルイス君を戦場に立たせることは許可できない」
「しかし、今はそんなことを言っていられない状況じゃないじゃないですか!」
「どういうことですか? エレチナだって決して弱い国じゃない。何かあったんですか?」
「宣戦布告があってからアポトリシキに偵察を放っていたんだが、あの国の兵士は異常らしい。もうすでに国境近くまで進行してきていて、その道中強力なモンスターと遭遇した。そこで数人の死者が出たんだが、何故か何事もなかったかのように動き出したとのことだ」
死んだはずの人間が何事もなく動いている?
死んだと思っていただけで本当は怪我で済んでいた?
それとも死んだ人と別の人を見間違えていた?
「なんか不気味な話ですね……」
「そんな不可思議なことがある今回の戦争では少しでも戦力があった方がいいと思うんです」
「すごい力があるのなら尚のこと助けていただきたい」
「しかし……」
アシュタルさんも同じことを思っているのか、さっきまでの勢いが嘘のように考えが揺らいでいた。
あともう一息で認めてもらえそうかな。
「アシュタルさん、僕が一人で戦うって言ってるわけじゃないです。周りに頼りますし、できるだけ危険な状況にならないように動きます。どうか参加させてもらえないですか?」
「…………できることならルイス君には戦場に出てほしくはない。が、実際そうも言っていられなくなるかもしれない」
「じゃあ」
「うん、少しだけ頼らせてもらおうかな」
「ッ! はい! 任せてください!」
何とか認めてもらえたか……。
もし断固として認めないって言われたら、一人で戦うことになったかもしれない。
僕は何があってもこの人たちを救おうと思っただろうし。
「よかったですね」
「あぁ、マリアンナちゃんにも助けてもらうことがあると思うけどよろしくね」
「はい!」
戦争なんて初めての経験だし、対人戦もはっきり言って好きじゃないけど、僕の大切なものを守るために戦う。
誰かが傷つくなら僕が傷つく方がよっぽどいい。
アポトリシキの人たちにはそっちなりの正義があるんだろうけど、僕は僕の正義のために戦う。
それがどんな結果になったとしても。
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