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【第七一話】

前回の投稿がちょうどひと月前ということで……


遅くなってしまい、誠に申し訳ございません!

 陛下たちが帰っていったあと、僕は男爵たちを探して近くの森にやってきた。

 逃がした時に確かこっちのほうに行ったからどこかにはいると思うんだけど……。


「――――ッ!」


 少し離れた場所から誰かの声が聞こえてきた。

 こんな森の中にいる人なんて男爵たちしかいないと思い、僕は急いで声のしたほうに走って行った。



 ***



 僕がたどり着いたのは、森の中とは思えないようなきれいな湖だった。


「お爺様ッ! お爺様ぁ!!」


 目の前では倒れている男爵と、男爵を抱きかかえて泣き叫んでいるマリアンナちゃん。

 モダンさんはそんな二人の傍でうつむき肩を震わせていた。


「これは……?」


 僕が声をかけると、マリアンナちゃんはバッとこっちに振り向いた。


「ルイスお兄様! お爺様が……!」


「落ち着いて。何があったの?」


「ここまで逃げてきて、それから少ししたらお爺様が急に倒れて! 急いで回復魔法をかけたんだけど私の魔法じゃ効かなくて……!」


 もともと体調のすぐれなかった男爵だ。

 こんなにいろいろあったら悪化することも分かったはずなのに……。

 新しい古代武器(アーティファクト)の所有者に出会えたせいで浮かれていた。

 冷静に考えればもっといい方法もあっただろう。


「状態は?」


「――もう、長くはない」


「お爺様!」


 僕がそう聞くと、マリアンナちゃんが答えるよりも早く、男爵が答えた。

 男爵が返事をしたことでマリアンナちゃんは一瞬明るくなったが、その言葉を理解すると、一変して絶望の表情に変わった。


「マリー……わしはもうすぐ死ぬ。わしの身体を犯しているのは不治の病だ。寿命だと割り切るしかない……」


「そんな……お爺様、そんなこと言わないでください!」


「モダン、後のことは頼んでもいいか……?」


「……はい。領地のことは任せてください! 旦那様の代わりは務まらないですが、お嬢様が帰ってくるまで必ず守り通して見せます!」


「お爺様っ!」


 マリアンナちゃんはとめどなく涙を流しながら男爵に縋りつく。

 どうすることもできないのが悔しくて、僕は爪が食い込むほど強くこぶしを握り締めた。


 《諦めるの?》


 ふとオーダーがそんなことを言う。


 僕にどうしろっていうんだ……敵を倒す力はあっても癒す力なんてないだろ。

 それとも、オーダーが何とかしてくれるのか?


 《私じゃどうすることもできないよ。癒しは私の担当じゃなかったから》


 じゃあ誰が担当なんだよ。そいつがこの場にいたら――なんてifストーリーなら今はいらないんだけど。


 《よく考えて。癒しの力は体系としては魔法に分類される。魔法と言えば何?》


 魔法と言えば……ッ!


「マリアンナちゃん! その杖を使うんだ!」


 僕の時と同じなら名前がトリガーだと思うんだけど、別の何かって可能性もあり得る。

 こればっかりはマリアンナちゃん本人に頑張ってもらうほかないからどうしようもないんだけど。


「僕の持ってるこの剣に名前があるように、その杖にも名前があるはず……杖を手に入れた理由を知れば、杖が力を貸してくれると思う!」


「つ、杖が……?」


「大丈夫、きっとうまくいくから……杖と心を通わせるんだ」


 僕の時は僕が意識を失っていたから向こうから接触できた。

 しかし今回は全く状況が違う。

 何とかうまくいってくれ……!


「…………」


 マリアンナちゃんは杖を握りしめたまま目をつぶった。

 すると、杖の周りに光の粒子が集まってきて、手から全身へとマリアンナちゃんを包み込んだ。


 それからしばらくして光が収まると、、マリアンナちゃんはゆっくりと目を開いた。


「“歪んだ結末に再生を(ザ・アナスタシス)”」


 そうつぶやいた瞬間に、視界が白銀色に染まった。

 光が収まると、そこには穏やかな表情で眠る男爵と、疲れた表情で座り込むマリアンナちゃんの姿があった。



 ***



「治ったの?」


「……うん、不治と言われていた病は治ったと思う。でも、今までで失われた体力は戻っていないから、回復しないと」


「僕に手伝えることはある?」


「少しだけ魔力が欲しいかな」


 魔力なら大して使わないから有り余ってる。

 いくらでも持って行ってくれていいんだけど……どうやってやれば?


「それはどうやって渡せば……」


「あ、どこでもいいので私に触れてさえくれればあとは必要なだけ吸わせてもらうね」


 どこでもいいと言われても、どこなら触れても問題にならないか……。

 とりあえず肩なら大丈夫かな?


「それじゃあ、魔力吸収(マナ・ドレイン)


 僕の中から魔力が抜けていく。

 だいたい五分の一ほど吸われたあたりで減少が止まった。


「次に、“幸運の光(ブエナ・スエルテ)”」


 普通の回復魔法とは違う特殊な光。

 その光に男爵は包まれ、収まると二十歳ほど若返った男爵がそこにはいた。


「えぇ……?」


 体力の回復どころかとてつもなく若返ってるんだけど?

 ここまでくると回復とかいう次元の話じゃなくなってこない?

 これが偉い人とかにバレたら大変なことになるんだろうなぁ……。


「まぁ今は、とりあえず何とかなったことを喜ぼうか……」


 無事に回復した男爵に抱き着いて、声を上げて泣いている少女を見ながらそんなことをつぶやいた。

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