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【第六五話】

明日も一本投稿します!

「大丈夫かね!?」


 呆然としていた男爵が我に返ってこちらに向かってきた。

 僕はそれに答えることもせず、ジッと杖を見続けていた。


「……毎回こんな感じなんですか?」


「い、いや……こんなことになったのは初めてのことだ」


 目線だけは外さずに男爵に尋ねると、男爵は困ったようにそう答えた。


 考えられる可能性としては、やはり僕がオーダーの契約者であるということ。

 もしくは僕がショペル家の人間でないからというのもあるか。


「僕には触れられないようなので一回戻りませんか?」


「あぁ、それは構わないんだが……その、大丈夫なのかい?」


「体のことなら大丈夫ですよ? それにこの杖は僕の探していたものでしたし」


 確証はないが、たぶんこの杖は古代武器(アーティファクト)だ。

 理由がなんとなくそう思ったからっていう曖昧なものなんだけど、前にオーダーから「古代武器同士は引かれあう。近くにあれば感覚でわかる」と言われていたのを思い出して本人? に聞いてみたところ、たぶんそうだという答えが返ってきた。

 どうして確証が持てないのか聞いたら、力の大部分を自ら隠蔽しているのか、存在をうっすらとしか感じられないらしい。


「そうか、目当ての物を見つけられたというのに触れられないのではどうしようもないのではないか?」


「そうですね……確かに僕は触れられなかったですけど、きっとこの杖を持つにふさわしい人がどこかにいると思うんです。だから次はその人を探そうかなって思ってます」


「なるほどな。何のためにこの杖を欲しているのかわからないがそこまでするとはよほど重要なんだな」


 重要か……。

 確かに重要だよなぁ……僕も強くなったとはいえ一人だと救える数に限りがある。

 そこを補って助け合える存在を見つけるのがこの旅の目的だし。


「まぁ、そういう話は上に戻ってからしようか」


 男爵のその一言で、僕たちは部屋に戻ることになった。



 ***



 鉄の扉に「ロック」とつぶやくと、来た時と同じようにいくつもの鍵がかけられていき、元通りの状態に戻った。

 それから僕たちは階段を上り、最初に通された男爵の寝室に戻ってきた。


 戻ってくる途中、男爵がモダンさんに何かを言って、途中でどこかに行ってしまったが、一体どこに行ったんだろう……?

 そんなことを考えていたらモダンさんが戻ってきた。

 ……背後に知らない少女を連れて。


「おじい様……なんの御用でしょうか……?」


「よく来たな、マリー。こっちに来なさい」


 男爵がそう言って手招きすると、モダンさんの横にいたマリーと呼ばれた少女は男爵のベッドまで近づいていき、何かを耳打ちされていた。

 すると少女は少し頬を赤くした後、僕の方を向いて頭を下げたかと思うと……


「は、初めましてっ! 私、マリアンナって言います! おじい様……ショペル男爵の孫娘です!」


 と、元気よくあいさつしてくれた。


「こちらこそ初めまして、僕はルイス・イングラムって言います。よろしくお願いします」


 この少女は男爵の孫娘だったらしい。

 どうやら地下で僕がお孫さんにぜひ会ってみたいといったのを叶えてくれたらしい。

 まさかお孫さんがまだ小さい女の子だとは思わなかったけど。


「あの……下の部屋で重い感じがしたと聞いたんですけど……」


「はい。確かに体が重くなるような感じがしました」


「怖い感じとかもしましたか……?」


 怖い感じ? あの圧のことを小さいうちは怖いと感じるんだろうか。

 それともマリアンナちゃんはまた違う何かを感じ取っている……?


「息が苦しくなるような感じのことですかね? それなら僕もありましたけど」


「いえ……声が、声が聞こえるんです。『こっち、こっち』って下から呼ぶ声が聞こえたんです」


 杖しかない場所から声が聞こえてきたと……。

 これはこの子が契約者になる子で間違いないんじゃないか……?


「すいません。突然なんですけど、この剣を見て何か感じませんか?」


「え……? 何でしょうか……なんだか不思議な感じですけど。気になるというか、知っているというか……」


 ……ッ!

 さっきの話を聞いている感じだとまだ杖と契約はしてないはずなのに、もうすでにオーダーが普通じゃないことに気付いてるのか。


「あの……」


 もう一度地下に行きませんか。

 そう言おうとした瞬間、屋敷のベルが鳴らされた。

 その瞬間、モダンさんは露骨に嫌悪感を顔に出しており、男爵からは濃厚な殺気が漂ってきた。


「……申し訳ありませんがしばらく別室にてお待ちいただけますか?」


「マリーもルイス君と一緒に行きなさい」


 有無を言わせぬその雰囲気に、僕は黙ってうなずくことしかできなかった。


 僕とマリアンナちゃんはモダンさんに連れられて広い廊下を歩いていた。

 もともと予定があったのかそれとも急な来客だったのか、別室にて待機することになったからだ。


「おやおやぁ、そこにいるのはマリアンナ嬢じゃあないかぁ! いきなり会えるとはまさに運命ッ!」


 廊下を歩いていると、よくわからない男がマリアンナちゃんに声をかけてきた。

 その男は太っていて、いたるところにフリルの付いた全身白タイツのようなものを着ており、顔に至っては鼻が顔面の半分を占めるという、一見したらモンスターと間違えそうな見た目をしていた。


「ひぅっ……」


 そんな男に話しかけられて、マリアンナちゃんはおびえて悲鳴を漏らしながら僕の背中にしがみついてきた。

 するとモダンさんが庇うように前に出てきた。


「ウルズ伯爵様、勝手に入ってこられては困ります」


「フン! さっさとわたしを入れないからわざわざこうして自分で入ってきてやったんだろう!」


「旦那様に伺ってくるのでその場でお待ちくださいと申し上げたはずですが?」


「このわたしの行動に文句でもあるのか……? 男爵ごときの使用人風情が? あまり調子に乗っていると殺すぞ?」


 ……なんだこの偉そうな男は。

 こんなのが伯爵?

 親切なショペル家の人たちを見下して、しまいには「殺す」だと?


 腰にぶら下げられた装飾ばかりが凝ったレイピアを抜き、ぷらぷらと切っ先を向けてくる男に、この隙だらけな首に一太刀入れてやろうかとオーダーの柄に触れたとき、ぎゅっと僕の手首が握られた。

 驚いて見ると、マリアンナちゃんが心配そうな顔で僕の手を握りしめていた。


 そこで僕は少し冷静になり、剣から手を離すとマリアンナちゃんの頭を優しく撫でた。

 それからモダンさんに「先に行きますね」と言い、マリアンナちゃんに案内されながら部屋に向かった。


 マリアンナちゃんと移動し始めたとき、ウルズ伯爵と呼ばれた男が何か喚き散らしていたが全て無視してきた。

 あんな奴の相手をさせてしまうモダンさんには申し訳ないが、不安そうなマリアンナちゃんをあのままにしておくこともできなかったので後で謝ることにする。

 移動している最中もマリアンナちゃんがずっと黙っていたのが少し気になった。

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