【第五話】
こういう前書きとか後書きは五話毎に一回書けばいいかなって思っています。
もう少し頻繁に書いて欲しいなどあれば教えていただければ書くようにします。
シャルロットは扉を三回ノックした。
すると中から「入れ」という声が聞こえ、僕はシャルロットと一緒に部屋の中に入った。
「先に騎士から話は聞いた。まずはシャル。本当に無事でよかった。ファントムソルジャーに襲われたと聞いた時は一気に血の気が引いたよ。……そして、シャルを助けてくれたのがそちらの少年で構わないかな?」
部屋に入って正面に初老の男性が座っており、机の上には多くの書類が積み重ねられていた。
最初はシャルロットを心配するような話。
それから急に僕の話になったので、心の準備をしていなかった僕はビクッと肩を震わせた。
「えぇ、お父様。私はこちらにいるルイス様に助けられましたわ」
シャルロットはそう言ってチラッと僕の方を見てきた。
これは自己紹介をしろってことでよろしいか?
「えっと……ルイス・イングラムといいます。今回はたまたまシャルロット様を助けた形になりましたが本来はそんなに大層な人間でもないのでそこまで気にしないで頂けると……」
「ルイス君だね。こちらも自己紹介をしようか。私の名前はアシュタル・フォン・フォーサイス。このフォーサイス家の現当主をやらせてもらっている、が……そう畏まらずによろしく頼む」
「え、あ……はい。よろしくお願いします」
僕は畏まらずにと言われてもどうすれば、と思い焦って吃ってしまった。
アシュタルさんは一つ一つの動きに品があり、これぞ貴族! って感じの見た目だ。長く伸びた茶色の髪を後ろで一纏めし、前髪は七三分けにしたダンディーなおじさんだ。
「さて、では自己紹介も済んだところでルイス君へのお礼の話に戻ろう。君はたまたま助けただけだから、と言ったがこちらとしても娘の命を救ってくれた恩人に何も返さない訳にはいかない。公爵家としても、この子の父としてもね」
アシュタルさんはそう言いながらシャルロットを優しげな目で見る。
それは娘を愛する一人の父親の目だった。
……僕がもう二度と向けてもらうことの出来ない目だ。
「……分かりました」
「それなら良かった。お礼は何がいいか。簡単なもので言うとお金だとか宝物だとかそういったものになるけど。あ、今日はもう遅いし家に泊まって言ってもらうのはどうだろうか? いきなり何が欲しいか聞かれてもすぐには答えられないだろう。一晩考えて、明日にでも言ってくれればいい」
確かにアシュタルさんの言う通り、金は今後必ず必要になってくるものだし、宝物が宝石とかなら売ればそれもお金になるだろう。
もし金ではなく、別のものだったとしてもファントムソルジャーの死体——幽霊のモンスターなのでもう死んでいた訳だが——を持ってきているから然るべき場所に持っていけばこれも金になるだろう。
一晩泊まることに関しては、正直なんとも言えない。
今手持ちの金が少なかったから泊まれる宿があるかどうか心配であったのは事実だが、それと同時にこれ以上公爵家にお世話になるのも後々から何か言われるのでは……と、心配である。
アシュタルさんが思ったよりもフレンドリーに接してくれたので、多少は恐怖心も和らいではいるがやはり圧倒的に位の上の人が相手なので選択を間違えたら即打首なんてこともあるかもしれない。
「えっと、ご迷惑でなければ……お邪魔させていただきます」
僕は少し緊張しながらも、そう答える。
そしてその答えは間違ってなかったのか、シャルロットは笑顔でこちらを見てきた。
「迷惑なんてそんなことありません! ですよね、お父様?」
「あぁ、もちろんだとも。ゆっくりしていってくれたまえ」
「でしたら! 私がルイス様をお部屋まで案内してもいいですか?」
「そうだな。好きな部屋を使うといい」
なんか話がどんどんと進んでいく……
シャルロットみたいな子に案内して貰えることは嬉しいけど、そんな好きな部屋を使えって……やっぱり貴族なだけあって部屋は余っているんだろうか。
「ではルイス様、お部屋の方に案内するので行きましょうか!」
「あ、はい。それでは失礼します」
僕はシャルロットに連れられるまま、アシュタルさんの部屋を出て広い屋敷内を歩いて、部屋へ向かった。
なんでこんなに屋敷をでかくしたんだろうね。
部屋から部屋への移動が大変じゃないんだろうか?
「ここです。ルイス様に使っていただくのはこのお部屋です」
アシュタルさんの執務室から結構歩いて、ついに部屋にたどり着いた。
この部屋に来るまでに何回か曲がってきたので、僕はこの屋敷から出ることが出来なくなったかもしれない。
ほんと、家なのにこんな入り組んだ作りしてたら暮らしにくいでしょうに。
「あの部屋が私の部屋なので何か困ったことなどがあれば来てください。あ、別に用がなかったら来ちゃいけないとかそういうことでは無いですからね? いつでも来ていただいて構いませんからね」
どうやらシャルロットの部屋は正面右らしい。
まぁ、ドアに『シャルの部屋』と書かれたプレートが吊る下げられていたからわかってたけど……
なんだろう、この子のは警戒心がとても弱いな。
もしシャルロットを助けたのが悪人で、シャルロットに危害を加えようとする相手だったらどうするんだろうか。
会ってまだ数時間しか経っていない相手を信じすぎではなかろうか。
「……何か困ったこととかあったら聞きに行きます」
「そうですか……」
僕がそういうとシャルロットは少し残念そうな顔をしてそう言った。
いや、さすがに用もないのに行く気にはなれない。
なんで残念そうな顔をしたのか分からないけど、一応男女なわけだからそういう勘違いの起こりそうな行動は取らない。
誰が作ったのか知らないが、『君子危うきに近寄らず』という言葉があるように、危ないところには近づかないのが1番だ。
「それでは、ごゆっくり」
そう言ってシャルロットは自分の部屋に戻った。
「ありがとうございます」
と、一度頭を下げてから僕も部屋に入る。
中は広く、大きなベッドがひとつと、ガラスでできた机とソファが一セット。
備え付けの窓からは庭が渡せた。
僕は着ていた上着を脱ぎ、ハンガーに。それをラックにかけてフラフラとベッドに近づいていき、そのままベッドに倒れ込んだ。
「あー……疲れた……」
こんなに長い間立場の偉い人と一緒にいた事がなかったから、体力的にはそうでも無いけど精神的に疲れた。
「お礼って何を貰えばいいんだろう……」
そういえばシャルロットが剣のことをアシュタルさんに聞いてくれるみたいなことを言ってた気がするけど、さっきそんな話出なかったよね。
その情報がお礼とかでいいと思うんだけど……
「でもなぁ……お金とかの方が助かるよね……」
現実的な話をするなら生きていく上で一番大切なのはお金なんだよなぁ……
「ふわぁ……なんかこのまま横になってると寝ちゃいそう。」
少しだけ寝るにしても剣を外さないとゴツゴツして腰痛めそうだしなぁ……
つってもこの剣外せるのかっていう問題が出てくるんだよ。
もー……どうすればいいんだろう。
「考えても……わかんねぇ……」
どうしようもないから目を閉じると、段々と意識が遠のいてくる。
起きてないとダメだよなぁ……
「あー……でもなぁ……」
僕は睡魔に逆らいきれず、そのまま意識を手放した。
***
『シャルロット視点』
私はルイス様と別れ、自分の部屋に戻ってから外行の服から少し楽な服に着替えをして今日あったことを思い出す、
今日は大変なことが沢山ありました。
私はお父様の代理として他の街に視察に行っていたのですが、その帰り道、とても恐ろしいモンスターに遭遇してしまったのです。
私は馬車の中にいて、護衛をしていた騎士たちが守ってくれていたのですが、モンスターの方が数が多かったのもあって段々と追い込まれて行きました。
私には戦う力がないので、ただ馬車の中で震えていることしか出来ませんでした。
そしてそのまま戦闘は続き、騎士たちの体力も残り僅か、もうダメだと諦めかけたその時、どこからかいきなり現れた男性によって窮地は脱していました。
その時助けていただいた男性が先程別れたルイス様です。
私は命を救っていただいたルイス様に何かお礼がしたいと思い、お家に招待しました。
ですが、ルイス様は来たくなかったのか、少し嫌そうな顔をしながら断られてしまいました。
その時私はずるいとわかっていながらも、涙目+上目遣いでお願いしてみました。
すると、渋々でしたがなんとお家に来て頂けることになりました!
私はそのまま無理やり同じ馬車に乗せ、屋敷へと出発しました。
今になって考えてみれば、助けられたあの時からルイス様のことが気になり始めていたのかもしれません。
だって! もうダメだと思っていた所に颯爽と現れ、助けられなんてしたらそんなの気になってしまうじゃないですか……
それに顔もかっこいいですし……。
屋敷に向かう途中、ルイス様のお話を聞いていました。
最初は二人っきりの状況に緊張して話しかけることが出来なかったのですが、一つだけどうしても気になってしまったことがあって、つい聞いてしまいました。
ルイス様は現れた時からずっと右手に一振の剣を握っていました。
話を聞いていると、どうしても呪われているとしか思えない状態で、私にはどうすることも出来ませんでした。
それでも、私が呟いた内容でルイス様が喜んでいただけたので、私も自然と笑顔になってしまいました。
いえ、戦闘中はあんなにも凛々しかったのに、今はこんなにも無邪気に笑って……そのギャップがまたいいんですよ……
そんな幸せな時間も長くは続かず、体感時間5分くらいでもうお家に着いてしまいました……
外から騎士の声が聞こえ、二人きりの時間が終わってしまったと気づくとなんだか悲しい気持ちになってしまいました。
そして、お家に入りまずはお父様のところに今回のことの報告をしに行きました。
なんと! お父様がルイス様をお家に泊めようと言い出しました!
さすがお父様です! 公爵になるだけはありますね!
お部屋も自由に使うように言わたので、少し恥ずかしかったですが、私のお部屋の近くに案内しました。
そうして今に至るわけです。
もしかしたら今夜にでも私のお部屋に遊びに来ていただけたり……なんてっ!
自分の妄想で一人悶えている間に随分と時間が経っていて、もうすぐ夕食の時間になりそうでした。
私はさっきまでの妄想を一度、頭の隅に追いやりルイス様を呼びに行きます。
願わくばルイス様も私のことを少しでも意識して頂けたら……
シャルロット視点の話も書いてみました。
僕の持論なんですが、『一目惚れしたと言って告白してくる人』の方が、『中身が好きと言って告白してくる人』よりも信用出来る気がするんですよね。
その二つは注目するところが外見なのか内面なのかの違いでしかないんですけど、内面って「この人のこういう所好きだな」と思ってもその人の別の一面を見つけてしまうと急に冷めてしまうことがあると思うんですよ。
それに比べて外見ってそうそう変わるものじゃないじゃないですか。
だから内面よりも外見で好かれた方が安心できるかなって思ってるわけです。
まぁ、考え方は人それぞれなんで、こういう考え方もあるって知ってもらえれば良いと思います。(何の話だよって感じですけど……)
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