【第五五話】
今週も頑張るぞい
次の日、朝から何事もなく平和な船旅でゴルダンモア大陸に到着した。昨日は気にならなかったけど、今日は何故か船酔いしてしまい、ずっと部屋に籠っていた。
「お降りの際はお忘れ物等ございませんようご注意ください」
ゴルダンモア大陸に着いたことを知らせるアナウンスが船内に流れ、多くの人が降りていく。僕もその一人だが、他の人に比べて荷物が圧倒的に少ない。背中に背負ったバッグだけで、あとは腰に差した剣が二振り、基本的にあるもので何とかしていく方向なので、色々と持ってくる必要がなかった。まぁ、元々持っているものが少ないってのもあるんだけど。
降りる人達の流れに沿って僕も船から降りる。無断乗船が無いように、ここでチケットの片割れを渡すことになっている。乗る時にチケットを半分に切った訳をここで理解した。
なんの説明もないと間違えて捨ててしまう人が現れるんじゃないかと思わなくもないけど、僕はバッグの中にしまってあったので探し出して渡す。これで無事大陸を渡ることが出来たわけだ。
「大ウミヘビが出て、無事かどうかと言われるとなんとも言えないけど……」
何はともあれゴルダンモア大陸、到着だ。初めての別の国に、見て回りたい気持ちをぐっと抑え今はすぐに宿をとる事が先決だ。もうすぐ日が落ちる時間帯、早いところ宿を探さないと野宿することになってしまう。
「あの、ここら辺で安くて安全な宿ってどこかにありますか?」
「宿か? その条件だとこっから真っ直ぐ行ったところにある『ジャビン・エゾ・マルフォス』って宿くらいしか思いつかないね」
適当に近くにいた男性に聞いてみると、何やら長ったらしい名前の宿を紹介された。なんか貴族とかが行きそうな名前の宿屋なんだけど、本当に値段は安いんだろうか?
「ありがとう、とりあえず行ってみます」
僕は男性にそう言って言われた方に進んでみることにした。乗船所からまっすぐ進んで行くと、色々な種類の店が立ち並ぶ大きな道に出た。
辺りを見渡しながらその道を進んでいくと、それらしき宿屋? というより貴族の住む屋敷のような場所があった。
大きな看板もたっており、そこには『ジャビン・エゾ・マルフォス』と書いてあったのでここで間違いはなさそうだけど……。
そんなに安くない疑惑がまたしても出てきたけど、もしかしたらこの外観にそぐわぬ料金設定なのかもしれないし、試しに中に入ってみる。
最悪予想よりお高めでもお金に余裕はなくも無いから払えると思う……思いたい。
「すいません、一泊したいんですがいくら位かかりますかね?」
「いらっしゃいませ。ご宿泊ですね? 一泊ですと夕朝の食事付き、ノーマルクラスのお部屋で金貨一枚と銀貨八枚ですね」
おぉう……やっぱりそんなに安くなかった……。
ノーマルクラスでって言ってたからもっと上のクラスの部屋になるとさらに金額が上がるんだよね。
ここまで来たら最高クラスの部屋が気になるところではあるけど、お金もそこまで多くないしやめておこう。
ここに来るまでの露店を見てて思ったんだけど、やはり帝国、人口が多いせいかエレチナよりも物価が高い。向こうだと銅貨一枚で買えてたような串焼きも、ここだと銅貨三枚とかしてたし。
そう考えると金貨一枚と銀貨八枚で泊まれる高級そうな宿屋って安いのかな?
「じゃあそれでお願いします」
そう言って僕は財布から料金を出した。
「ノーマルクラス、夕朝食事付きですね。お部屋は三階の右端、一〇六号室となります。こちらがカードキーですので無くさないようによろしくお願いします。何かお困り事がありましたらお近くの係員もしくはフロントまでお声かけください。それではごゆっくり」
一通りの説明を聞いてから僕は部屋に向かった。
階段を上って三階まで行くと、そこから右にまっすぐ進む。
途中何人かの人達とすれ違ったが何となく女性ばかりだったような気がする。
いや、気のせいかな……。
そのまま橋まで行くと、一〇六と書かれたドアがあったので、カードキーを差し込み、鍵を開けてから中に入る。
部屋は広く、部屋に入ってすぐにリビングに出た。
いくつかドアがあったので、そこも覗いてみると寝室とお風呂、そして食事が出るから使うかも分からないようなキッチンがあった。きっと自炊が好きな人は自分で作るんだろう。
一通りの部屋の確認が出来たので、風呂に入ってサッパリしたら装備の手入れでもしようかな。
それが終わったら食事を摂って寝よう。
明日には街を見回ったり帝国のお偉いさんに会う方法を探したりしないとで忙しいからね。
***
「ふぁ……はふ……」
まだ明るさに慣れていない目を擦りながら起き上がる。
昨夜は装備を整え、よく分からない長い名前の料理を食べて寝た。
さっさといつもの服に着替えて荷物を持って部屋を出る。その際カードキーも忘れずに持っていく。
受付での注意点の中に、部屋を出る時にカードキーを中に置いて出てしまうと自動でドアに鍵がかかってしまうから気をつけてくれと言われていたからだ。
受付に行くと、昨日と同じ人が全く同じ姿で立っていた。僕はカードキーを返して『ジャビン・エゾ・マルフォス』を出たのだった。
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