【第五一話】
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「ルイスよぉ、おめぇどうしてあんなに盗賊に対して容赦ないんだ?」
馬車が進み出し、少し経ってからガルドがそんなことを聞いてきた。
僕は首をかしげつつ考えてみる。
容赦がない理由……ではなく、何故ガルドは「命まで取らなくても……」みたいに聞いてきたかを。
理由はいくつか思い当たるが、いくら盗賊とはいえ殺すのは可哀想ってところが大きなところか?
人道的なことを考えれば盗賊が相手でも殺すまではしない、なんて考えているのなら考えが甘いと言わざるを得ない。
相手は殺す気で向かってくるのに、こちらが慈悲を与えて命までは取らないなんてそんな都合のいい話はないだろう。
「僕はさ、名前もないような辺境の村で生まれ育ったんだよ。その村はね、人口もそこまで多くなくて小さな村だった。僕が生まれて五年経った頃くらいかな……どこから来たのか知らないけど、盗賊団が現れたんだ」
数は十人いかない程度。
数は少なくて、大規模とも言えないような盗賊団だった。
それでも、年寄りの多かった村からすれば脅威だった。
その盗賊団は村で育てていた家畜を連れ去り、更にはそれを止めようとした村長の奥さんまで連れて行かれた。
僕の両親は村の中でも戦える方だったから、村の男衆を連れて盗賊団が根城にしていた場所へ向かった。
当然そこに村長もいたんだけど、みんなが帰ってきた時、そこに村長の奥さんはいなかったんだ。
「……盗賊達に、殺されてたんだよ。奥さんが殺されてから、村長は仕事漬けになった。まるで奥さんの死を意識しないようにするかのようにね」
思い出しただけで胸が痛くなる。
村長のあんなに沈んだ顔、初めてだったからずっと覚えてる。
「…………」
「これが僕が盗賊たちに容赦しない理由だよ。僕の村は、人口が少なかったからこそ、全員が家族みたいなものだった。盗賊に家族を奪われたから……これじゃ納得できない?」
「いや……」
「わかってくれたなら良かった。僕はもう一眠りするから着いたら起こしてね」
暴れだしそうな気持ちを押さえつけ、落ち着かせるために僕は目を閉じた。
そのままゆっくりと眠りについたのだった。
***
それからどのくらい経っただろう。
肩を揺すられて目を覚ますと、どこかの街だった。
外はもうすっかり暗くなっており、馬車に乗っているのは僕と、僕を起こしてくれたガルドだけだった。
「……ここは?」
「マレガストへと向かう途中にある街だな。夜に進むのはモンスターのこともあって避けたい。この街で一晩過ごしてからマレガストに向かうことになった」
「なるほど、泊まる場所はどこかにあるの?」
「あぁ、近場に空いている宿があったからそこに泊まるそうだ。夜朝飯付きで一晩銀貨五枚だとよ」
「わかった。僕もそこに泊まることにする」
そうしてガルドに連れられて宿にやってきた。
見た目は結構綺麗で、一泊銀貨五枚なんていう安さの宿には見えない。
受付でお金を払って部屋に行くと、部屋も広く窓からは賑わう街を一望できた。
夕食はもう少しあととの事なので、それまで何をしようか考える。
何をしようか、なんて考えても何も思い浮かばないのでとりあえず武器の手入れでもしようかと剣帯からオーダーと鉄の剣を取り外す。
まずは盗賊たちとやりあったオーダーから、バッグに入れていた洗剤とスポンジで、刀身についた血や油を洗い落としていく。
それから乾いたタオルで乾拭きして洗剤を落とし、オーダーは手入れ終了。
本来なら砥石で刃を研ぐんだけど、オーダーは特殊な金属で作られているから時間が経てば刃こぼれくらいなら自己再生するらしい。
そもそもが硬いので刃こぼれもしたことが無いのだが……。
次に鉄の剣を鞘から抜き、オーダーにやったことをもう一度行う。
こいつは長い間僕の身を守ってくれて、オーダーを手に入れてから使うことは少なくなったが、何となく手放せずに予備として持っている。
箱に乱雑に入れられ安物として売りに出されていたこともあって、こっちは刃こぼれもしてたし、剣にヒビも入っていた。
このままだといざと言う時折れてしまうかもしれないので、そろそろ買い換えるか打ち直してもらわないといけない。
僕が鉄の剣を研ぎ終わると、外から僕を呼ぶ声が聞こえてきた。
どうやら夕食の準備ができたようなので食堂に来てくれとのことだった。
僕は二振りの剣を腰に差し、部屋を後にした。
***
夕飯も美味しくいただき、その日は部屋に戻って眠りについた。
ガルド達は酒を飲んでいたが、僕はあまりアルコールが得意では無いので遠慮しておいた。
朝、カーテンの隙間から覗く陽の光で目を覚ますと、ベッドから降り軽く伸びをする。
それから身だしなみを整えて、食堂へと足を運んだ。
食堂に着くと、既にそこにはガルドたちの姿があった。
……というか、昨夜見た時から酒瓶の数が増えて何も変わっていないんだが。
もしや部屋に戻らず一晩中ここで飲んでいたのではないか?
「おはよう」
「んぁ? あー、ルイスか……おへよー」
寝ぼけているのか、言葉じりに声が小さくなって言って、そのまま机に突っ伏してしまった。
全く。
馬車の護衛なんじゃなかったのか?
仕事中に酒飲んで潰れるってどういうことだよ……。
なんて不安を胸に抱きながら、今日もマレガストに向かって馬車は進んでいくのだった。
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