【第四九話】
遅くなってすいません。
ゆっくりと目を開けると、そこは灰色一色の空間だった。
左を向いても右を向いても、上や下も全てが灰色。
長時間いると気が狂いそうなそんな空間、
「やっと来た」
声のした方を見ると、一人の少女がその手に似つかわしくない剣を持って立っていた。
少女は黒色の髪をツインテールにしており、瞳は赤く、白色のワンピースを身につけていた。
「ごめん、最近ちょっと忙しくてあまり来れなかった」
「ん、まぁ許す。次はもっと早く来て」
「わかった」
不貞腐れたように文句を言ってくる少女の頭を撫でながら、そう約束を取り付けると、少女は僕を見上げて言った。
「それじゃあ、やろ?」
***
「はぁ、はぁ……ちょっと休憩させて……」
「軟弱。たったの十二回しかしてないのに、もう体力が尽きるなんて」
「いやいや、一回一回が激しすぎるんだって……」
「だってあれくらいしないと楽しくないし」
仰向けに倒れる僕にまたがって、そういう少女は頬をふくらませながらつんつんと僕の顔をつついてきた。
「もう少しでいいから加減してくれない? オーダー」
そう。この少女、実はオーダーなんだよね。
イーリスと最初に戦った時、声を聞いてそれから剣が抜けるようになった。
その後、キャメルさんたちとの修行中、夜に寝るとこの空間に来ることがあって、その時からこうして剣を打ち合っている。
「ダメ、あなたがもっと私を使いこなせるようになるにはこのくらいしないと」
今までの所有者全員の動きを覚えているオーダーは、僕に剣での戦い方を教えてくれる。
はるか昔、剣聖と呼ばれオーダーを抜いた人の戦い方や、歴代最強の使い手にして前代の所有者、その人の文献にも載っていないような戦い方まで、全て教えてくれる。
戦いにおいて、どういう動きが効果的なのか、それをこの身に直接叩き込んでくる。
「ほんとーに最初、私の封印を解いた時よりはかなりマシになった。あの時は酷かったから」
「そりゃあ全部独学て学んだ剣だったんだから仕方ないでしょ。上手い立ち回りだとか考えてる余裕もなかったし」
「それでも、だよ。私を使う以上、もっと強くなって。それこそこの世界であなたに勝てる剣士がいなくなるほどに」
オーダーのその言葉は言い知れぬ重みを感じさせた。
その重みは、現所有者である僕に直接降かかるわけで……本当になれるのかという不安と、オーダーに師事すれば今よりももっと強くなれるという二つの感情が僕の中を支配した。
「……そう慣れるように手伝ってくれ」
「ん。いいよ」
そう言ってオーダーが微笑んだ瞬間、灰色の空間が揺れた。
「もう時間」
「あぁ、もうマレガストについたのかね?」
分からないが、とりあえず起きた方がいいだろう。
「じゃあまた来るね」
「待ってる」
そう言って、僕は灰色の空間から消えた。
その場に残った少女は持っていた剣を床に刺し、次にルイスが来るのを待つようにその場で丸くなった。
「……ずっと待ってる」
***
「おぉ、ルイス! 起きたか!」
「ん……どうかした……?」
当たりを見渡すと、ガルド以外の人はどこにもおらず外からは金属同士がぶつかり合う音が聞こえてきた。
「賊だ。アーティファクト? だかなんだかって言って襲いかかってきやがった」
「うん? 古代武器? 外の賊がそう言ってたの?」
「あぁ、それを探してるらしいぞ。何が何だかさっぱり分からねぇが、襲われたからには戦わねぇわけにいかねぇからよ。数が多いから手伝ってくれ貰おうかと思って起こしに来たんだ」
なるほどね。
どこで僕が古代武器を持っていることを知ったのか分からないけど、狙いがオーダーだって言うなら僕が戦わないと。
オーダーは僕にとって大切な存在だ。
それを奪おうとするなら容赦はしない。
何とかギリギリって感じですかね。時間的に。
明日からはもっと余裕を持って投稿するようにします。
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