【第四七話】
遅くなってしまい申し訳ありません!
「お待たせしました。少し話したいことがあるので、場所を移しましょうか」
城門の前で待っていると、ウナさんがやってきてそう言った。
「いいですよ、どこに行きますか?」
「出来ればあまり人のいない所がいいんですけど……私の知っているお店で良ければそこへ行きませんか?」
人の少ないところで話さなければならない話か。
さっきの王様たちといた部屋なら他の人に聞かれることなく話せていたかもしれないのに、それをしなかったってことは、王様にも聞かれたくないってことか?
ウナさんが一体何を話そうとしているのか、気になりながらも、後をついて行った。
***
王城から離れ、裏道に行った場所にある静かな喫茶店。
その店内で、今僕はウナさんと向かい合って座っている。
「それで、話したいことってなんですか?」
注文した飲み物が届いてから、そう切り出す。
ウナさんは名前の長いよく分からないお茶を一口飲んで、それから話し始めた。
「城で私がものを読み取る力がある、と言ったのを覚えていますか?」
「ええ、その力で世界の動きを読み取った結果、龍が現れるということを知ったんですよね」
「そうです。そして、この能力、過去や未来の出来事を読み取るだけでなく、例えば武器だったり、人だったりの情報を読み取ることができます」
人の心も読めるだろうと予想していた僕からすれば、そこまで驚くことでもない。
なんなら過去未来の出来事を読み取るよりも、普通はそういったものに目がいくはず。
ウナさんは「どうです? すごいですか?」みたいな顔で僕のことを見てくる。
何となくわかっていたせいで、驚きは少ないがここは少しばかり驚いてあげるのが優しさだろうか?
「え、えぇ!? そんなすごい能力まであるんですかー!?」
どうだ、この名演技!
スラムで生活していた時に、パン屋のおじさんからパンを貰うために磨き上げたこの演技力。
おじさんはずっと僕の演技に騙されて、パンをくれてた。
「驚いたフリじゃないですか、もしかしてわかってたんですか?」
「なっ、どうして演技だと気づいた!?」
僕の演技は完璧だったはず……!
ならばなぜバレた?
ウナさんはそれほどまでに優れた観察眼を持っていると言うのか——いや! そうか、読まれたのか!
ウナさんは僕の心を読んだんだな!
だから演技だとわかったのか。
「どうしてって、どうして逆にバレないと思ったんですか? あんな棒読みだったのに……」
「ぼう……よみ……?」
「はい。棒読みです。……えっと、まぁ、話がだいぶズレちゃいましたけど、私の能力でルイス様の情報を読み取ることもできます。今現在、どのくらい自分が強いのか、知りたくはありませんか?」
僕の強さ?
知りたい。
知りたい、が!
それよりも、僕の演技が棒読みだったことの方が驚きだ。
「知りたいけどね!」
「どうして怒ってるんですか? あ、店員さん、紙とペンもらってもいいですか?」
いつか絶対に僕の名演技で騙してやろう。
そう誓いつつ、ウナさんにそう答えると、ウナさんは店員さんに紙とペンを持ってきてもらうようにお願いした。
「それでは、読み取った端から紙に書いていきますね」
そう言って、僕のことをじっと見つめるウナさん。
演技のことが残念ではあったけど、それでも実際に自分の実力を知れるというのはワクワクするもので、ドキドキしながら書き終わるのを待っていた。
「……書けました!」
「おっ、待ってました!」
待つこと数分、ウナさんは僕のことをずっと見ながら、器用に手元の紙に何かをサラサラと書いていた。
「はいどうぞ。これがルイス様の情報です」
そう言ってウナさんが見せてきた紙には次のように書かれていた。
【ルイス・イングラム】
・体力 :VI
・持久力 :VI
・魔力 :Ⅷ
・精神力 :IV
・瞬発力 :VI
魔法適正 :
契約 :【狂った世界に安寧を】
一番上は僕の名前で、一番下はオーダーの事だな。
契約ってのはなんなんだろうか。
そして、問題なのはその間の五つだ。
何がどれくらい良いのか悪いのか、さっぱり分からない。
「見ても分からないと思うので、詳しい説明をさせていただきますね。まず、これは分かると思いますが、一番上に書いてあるのはルイス様の名前です。そして、その下にある五つ。これらはルイス様の身体能力や精神的な力、それを数値化したものとなります。Ⅰ~Ⅹまであり、上に行くほどその能力が高いことを表します。ルイス様の場合、体力、持久力、瞬発力はVIと、平均よりも高い数字を出しており、逆に精神力はIVと、やや低めです。中でも魔力は飛び抜けて高いですね」
「魔力は昔から多い方だと言われてたから。それは合ってますね」
「ですが、魔法に適正がありません。数百人に一人のとてつもない魔力を持ちながらも、魔法が使えなかったのは辛かったのではないでしょうか?」
魔力は多いが、魔法は使えない。
その事で、何度悔しい思いをしたか分からない。
「そうですね……昔は辛かったです」
でも、もし魔法が使えたら、僕はオーダーと出会うことができただろうか?
シャルやキャメルさん、イーリスたちに出会うことは出来だろうか?
たった一つの違いで、運命なんてすぐに変わってしまう。
だから、今は適正がなかったこともそれほど辛くはない。
もっと大切なものを手に入れたから。
「けど、今はそれほど辛くは無いですよ」
僕はそう言って笑った。
「そうなんですね……ルイス様が辛くないというならそうなのでしょう。説明に戻りますね……と言ってももう最後なのですが、最後は契約です。これは普通の人には無いものなのですが、ルイス様の場合、その腰に下げられている剣。神器、古代武器が、所有者を決めた場合に発現するものだと思います。今までこのようなものがなかったので、憶測になってしまいますが、遠くはないと思うので」
「なるほど、了解です。ひとまず、この数値を全部Ⅹにできるように頑張ればいいんですか?」
「そうですね……現れる龍がどの程度の力を持っているか分かりませんから、高ければ高いだけいいと思いますけど……。でも、私が見てきた中で、いちばん高いのが帝国の軍隊長さんのⅨでしたね。多くの戦場で培ってきた精神力が、その数値を出していました」
ということは、僕はそれ以上に頑張らないとⅩなんて夢のまた夢ってことか。
何度も死にかける、くらいしないとそのレベルまでは行けなさそうだな……。
「全体的に、高い数値なのでこれからも努力していけば二年後には今よりももっと強くなれると思います」
「こんな大切なことを教えてくれてありがとうございました。今まで以上に努力して、Ⅹになれるようにします」
そうして、能力値を書いた紙を胸ポケットにしまい、飲み物を飲み干して、代金を渡した。
「それじゃあ早速他の所有者を探しに行こうと思います」
ウナさんにそう言って、僕は喫茶店から出た。
向かうは帝国。
そこに現れるであろう、古代武器の所有者を探して。
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