【第四二話】
遅くなりました。
「……っと、そろそろちょうどいい感じの時間ですね。夕食とお風呂、どっちからがいいですか?」
シャルとイチャイチャしながら時間を潰していたら、シャルが唐突に立ち上がりそんなことを言ってきた。
「んー、血は着いてなかったけど、モンスターと戦ってきたあとだから先に風呂に入ろうかな」
「背中流しましょうか……?」
にやけながらそう言ってくるシャルを見て、前にシャルが乱入してきた時のことを思い出してしまった。
「じ、じゃあ、お願いしようかな!」
顔が熱くなるのを感じつつ、それでもからかわれているのは分かったので、お返しにそう言うと……
「ふぇ!? え、えっと……その、本気……ですか?」
「…………」
「……そ、それじゃあ、入りましょう!」
なんて答えるべきか迷っている間に、シャルの心の準備が整ってしまった。
今更冗談だったなんて言えないし、僕自身も役得とか考えてるから言わないけど……。
そうこうしている間にシャルは部屋を出ていってしまった。
「ちょっ……待ってよ」
僕もそんなシャルを追いかけて部屋を後にした。
***
前回も来た風呂場。
その脱衣所にて僕はシャルと二人っきりで固まっていた。
ここに来た当初は、「さぁ入りましょう!」だとか「入るか!」とか、勢いで色々言っていたがいざ入るとなると羞恥心が表に出てきて、二人して黙り込んでしまった。
「お、お先にどうぞ?」
「いや……ここはレディファーストと言うやつだろ。向こう向いてるから先に入っていいよ?」
両者一歩も譲らない。
と言うよりはむしろ譲りすぎてどちらも入れない。
ただ見つめ合いながら先にどうぞ、と言い続ける。
「なんなら私が脱ぐのお手伝いしますよ?」
「さすがにそれは恥ずかしいって!」
「なら先に入っていてください! 好きな人がいる場所で服を脱ぐなんて、恥ずかしいんですよ!」
「ぐっ……分かった……」
それは僕も同じだよ! と、そう言いたいのをぐっと我慢して、僕は服を脱いだ。
僕が脱ぎ始めると、シャルはサッと後ろを向いてくれた。
しかし、その耳が赤く染っているのを僕は見逃さなかった。
「先に入ってるよ」
全て脱ぎ終え、置かれていたタオルを持って浴室へと向かった。
吸血鬼の里でも風呂には入っていたが、やはり公爵家の風呂場だけあってとてつもなく大きい。
風呂のマナーとして、湯船に浸かる前に体を洗うなんて常識中の常識なので、僕はシャワーのある場所に行き洗い始めた。
昔から、先に頭を洗ってから体を洗う、という順番で洗っていたので今回も頭を濡らしてからシャンプーで洗っていく。
洗っている途中、入口が開く音がしてシャルが入ってきたのが分かった。
泡が目に入るので目は開けられないが、何となく音でどこにいるのかは把握出来る。
「ここからは私が洗いますね」
「えっ!?」
真後ろに来ていたシャルは、僕が断る暇もなく何か柔らかいもので僕の背中を洗い始めた。
「ちょっ……シャル? 背中流してくれるのはありがたいけど、その……何で洗ってる……?」
「んっ、ただのタオルをですよ……? 逆にルイ君はなんだと思うんですか?」
「それは……」
そう聞かれた瞬間、咄嗟に思い浮かんだのはシャルの二つの山(意味深)だったが、このままの思考で行くといろいろとまずいと思い、その考えは否定した。
「い、いや、分からないな……」
僕が答えると、シャルが自称タオルを押し付けて来た。
「んぅ……あっ、こ、これでも分からないですか……?」
それからそんなシャルの艶やかな声が聞こえてきて、一瞬で僕の思考は先程のものに塗り替えられてしまった。
「し、シャル! 流すよ!?」
「えっ……? きゃっ!」
僕は本当にやばいと思い、お湯を貯めておいた桶を勢いよく頭からかぶった。
シャルの悲鳴が聞こえて、咄嗟に振り向いてしまったそこには……
「あ……その、み、見ないでください!」
お湯のせいで透けてしまったタオルを体に巻いたシャルが座っていた。
僕は突然だったのと、さっきまでの思考のせいでどうしたらいいかわからなくなってしまい、ただ呆然とシャルのことを見ていた。
「ッ!? ご、ごめん!」
シャルの消え入りそうな声で、ハッと我に返り慌てて前を向いたが、時すでに遅く脳裏には先程の光景が焼き付いていた。
「……えっち」
ぼそっと呟かれたシャルの言葉に、僕は言い返すことが出来ずに黙り込むことしか出来なかった。
毎週月曜更新でやろうかと思っています。
それ以外の更新もあるかもしれませんが、今はそう思って置いて頂ければ問題ないかと……。
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