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【第三九話】

 街から援軍が来ているのを確認してから僕はさらに五体のワームと一〇体の地上モンスターを倒していた。

 これで地上に残っているのはゴブリン二体とオーク、レッドキャタピラーが一体ずつだ。

 これだけ減らせばあの人数でも倒しきれるだろう。


「おい! 一人でなにをしているんだ!」


 モンスターたちを警戒しながら援軍の到着を待っていると、後ろから騎士風の人の怒鳴り声が聞こえてきた。

 どうやら相当お怒りなようだけど……。


 武器を持った人達が僕の横を通り過ぎ、モンスターに突っ込んで行ったので、騎士風さんの質問に答えることにした。


「えーっと、モンスターを倒してました?」


「なぜお前が疑問形なんだ! いや、違うわ! そうじゃなくてだな、こっちに来るなと言っておいたはずなのにどうして来ているんだ! それとこのモンスターたちを倒したのはお前なのか!? お前は何者なんだ!」


 騎士風さんは矢継ぎ早にそう訪ねてくる。


「そんなに一気に聞かれても困りますよ……一つずつ答えていきますけど、まずここに来た理由は僕なら被害を出さずに全滅させられると思ったからですね」


「ふ、ふむ……」


「なので、モンスターたちを倒したのも僕です」


「これだけの数を一人でか?」


「はい。最後の何者かって話は、ただの人間としか答えられないですけど……」


 《これだけのモンスターを無傷で屠っておいて、ただの人間は説得力ないと思うけど》


 騎士風さんの質問に懇切丁寧に答えてあげていると、久しぶりにオーダーが声をかけてきた。

 最近はあまり話してなかったから中身いなくなったのかと思ってたけど、ちゃんといたんだ?


 《ちょっと考え事が多くてね》


 そうなんだ。

 もし何か困ったことがあったら言ってね。

 これでもオーダーの持ち主だから。


「これだけのことをして普通にしているなんて……もしや、高名な冒険者なのか?」


 冒険者……。

 ギルドという組織に所属するいわゆる何でも屋。

 迷い猫探しから荷物運び、モンスター討伐など、報酬が出せるものなら犯罪でない限り引き受けてくれる集団だ。

 ランク付けがされており、最高ランクの者になると依頼料で国家予算が動くこともあると言う。

 まぁ……


「冒険者じゃないですけど」


「そ、そうか……お前、あ、あなたほどの人材がフリーだと……ま、まぁ、今はモンスター共の方が先だな。すまないが引き続き討伐に協力してもらえるか?」


「大丈夫ですよ」


「助かる。我々はここでモンスター共の足止めをするのが役目だったんだが……あなたのおかげで命拾いした」


 この人達がここで足止めしている間に街から人を逃がす作戦だったんだろうか?

 時間稼ぎなんて危険な役割、よくやろうと思ったな……。


 僕は前線に戻り、地面から飛び出してくるワームを切りながら一緒に戦っている一人の男性にそのことを聞いてみた。


「我らはあの街で生まれ、そして死ぬ。時間稼ぎなんて誰かがやらねばならないのなら未来ある若者より老い先短い我々が適任というもの。そんな考えを持つ者らが自ら参加しているのさ……。愛する人のいるあの街を守るために」


 男性は遠い目をしながらそう答えた。

 その目はどこか悲しそうで、しかし熱い何かがあった。


「そういう考え方……かっこいいですね」


「なぁに、年寄りの古臭い考え方さ」


「それでもですよ。必ず生きて帰りましょう!」


 話しながらモンスターを倒していると、地上にいたやつは全員死んだっぽい。

 残るはワームだけなので、さらに気を引きしめる。

 あんな話を聞いてしまったら誰も死なせる訳にはいかなくなった。

 僕もできる限り全力でサポートしよう。



 ***



 それから二〇分程でワームも倒しきった。

 今は倒したモンスター達から素材を剥ぎ取ったり、邪魔なものは地面に埋めたりしているところだ。

 作業を始める前に全員と一通り挨拶をして、軽く自己紹介をした。


「ルイス殿、改めて今回はありがとう。あなたがいなければ犠牲者が出ていたか、最悪の場合全滅していた可能性もあった」


「僕もあの街が大切なので当然のことです。誰一人欠けることなく無事に倒しきれて良かったです。それで……今回モンスターたちがあの街に向かってきていた原因なんかはわかってますか?」


 騎士風さん改め、エギンさんにそう尋ねるとエギンさんは首を横に振った。


「調べているが、未だに有力な情報はない。ただ、今回のようないくつかの種族が徒党を組んでいるケースは少ない。何か良くないことの起こる前兆なのか、それともう起こっているのか……」


「…………」


 もしかして龍が攻めてくるのとなにか関係しているんだろうか。

 もしそうならこれからもっとこういうことが増えてくるかもしれない……。

 早く僕が何とかしないと……!


「そう暗い顔をしないでくれ。ルイス殿は今回の立役者、エストブルの英雄なのだから。堂々と街に戻って貰いたい」


「英雄……」


「あぁ、……片付けも終わったようだし早速戻ろうか」


 こうして無事モンスターの群れは殲滅出来た。

 道中の花畑家を見て、ちゃんと守れたことに安堵すると同時に、これからこの世界がどうなってしまうのかその不安が胸の中で渦巻いていた。



 街の門に着くと、何人もの騎士が隊列を組んでいた。

 そのうちの一人、先頭の男? が僕達の姿を見つけると、慌てたように他の騎士に命令を出し奥の方に走らせた。


「なんで驚かれてるんですかね」


「本来はモンスターが来る予定だったのに、我々が帰ってきたからだな。イレギュラーな事態だから上の人間に確認を取っているんだろう」


 僕達は門に向かいながらそんなことを話していた。

 少しして、エギンさんは「ちょっと待っててくれ」と言い、騎士たちの方に走っていってしまった。

 僕は面倒なことにならないように少し離れたところで待っていた。


 数分が経ち、エギンさんが戻ってくると、僕はエギンさんに騎士たちのところに連れてこられた。


「エギン殿から詳しい話は聞かせていただいた。私はこの討伐隊の隊長を任されているケリー・マグダイトだ」


「エギンさんから聞いているかもしれませんが、僕はルイスです。その……勝手なことをしちゃったんですけど罰せられたりとかは……?」


「今、部下に討伐隊の指揮官をしておられる領主様を呼びに行ってもらっている。領主様はお優しい方だからそう酷いことにはならんと思うが、もうしばらく待っていただきたい」


 領主様ってことはアシュタルさんが来るのかな?

 なら罰とかは気にしなくても大丈夫か?

 なんならもう一度あの門番さんと話さなくて済む分ありがたいかもしれない。


「ルイス殿? 何をニヤニヤしているので……?」


「えっ?」


 やばいやばい、あの面倒臭いやり取りをしなくて済むと思ったらつい頬が緩んでしまった。

 危ないヤツだと思われないように気をつけないと。



 ***



「やはりルイス君だったか!」


「アシュタルさん!」


 あれから少し待って、さっき走って行った騎士の人の帰りを待った。

 騎士の人に連れられて来たアシュタルさんは、僕を見るなり走ってきた。


「王都に行ってから音沙汰無しだったから心配していたんだよ」


「連絡が出来ずにすいません。そのことについて話に行く予定だったんですけど、この街に着いた矢先こんなことになってしまったので……」


「詳しい話は屋敷に行ってから聞こう。今回のモンスターもルイス君が倒してくれたんだろう?」


「エギンさんたちのおかげですよ」


「そうか、ならその者たちには後に褒美を出そう」


 そう言ってアシュタルさんは、


「今回起きたモンスター進行はこのルイス君が阻止した。しかし、残党が残っている可能性もあるので警戒はしておくようにしてくれ」


 領主と親しげに話す僕に驚いたのか、全く動かないエギンさん達にそう言った。


 確かにあそこにいたモンスターは全滅させたが、他の場所にいる可能性も捨てきれない。

 用心しておくに越したことはないだろう。


「それじゃあ行こうか」


「はい」


 そして、アシュタルさんは踵を返し街に戻って行った。

 僕はそんなアシュタルさんの後を着いて街に入った。

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