【第三八話】
僕が王都に行く途中で通った道を通り、街を出ると遠くの方で砂煙が上がっているのが見えた。
あそこならまだ花畑には到着していないと思うけど……。
できることならこの街の名物である花畑は荒らさせたくない。
「走って間に合うかな……」
僕はもう一度街を見てからモンスターの群れに向かって走り始めた。
***
全力で走り続けること約一時間。
何とかモンスターたちよりも先に花畑の端にたどりつけた。
僕はここからもう少し先に行ったところでモンスターを迎え撃とうと考えている。
そこでふと、ひとつの疑問が頭をよぎった。
……そもそもなぜモンスターが群れを作ってこの街に向かってきているのか。
普通モンスターは同族以外とは行動を共にすることは無い。
唯一の例外として、進化して知能の発達したモンスターが自身よりも弱いモンスターを調教し、戦わせることがある。
特にゴブリンは進化するとウルフよりも強くなるので、ゴブリンがウルフに騎乗した『ウルフライダー』なるものが現れることがある。
しかし、今回は同じくらいの強さのモンスターたちが集まって向かってきているという。
王都の図書館でモンスターについてなんかも調べたんだが、今回この街に向かってきているモンスターで、ゴブリンやオークは戦ったことがあるが、ワームやレッドキャタピラーは直接見たことすらなった。
後者について、ワームは地面を掘り進む細長いモンスターで、鋭い牙を持ち、地中から攻撃してくる厄介なモンスターだ。
レッドキャタピラーは動きが遅く、体も柔らかいのでダメージは通りやすい。が、他のモンスターたちと違い、火魔法を使うので注意しなければならない。
「そろそろかな」
モンスターについて考えていると砂煙が先程よりも近くに来ていた。
よく見れば、先頭を走っているのはゴブリンで、その後ろにオーク。
さらにそのオークがレッドキャタピラーを抱えていた。
ワームの姿は見えないので、今は地中にいるんだろう。
僕はオーダーを鞘から抜き、正面で構えた。
モンスターたちは僕を見つけたのか、ゴブリンが一斉に迫ってきた。
オーク達は止まる気がないのか、僕のことを無視して先に進もうとしている。
「……無視していられるのも今のうちだ、ぞっ!」
僕は向かってきたゴブリンのうち一体を切り裂き、流れるように次の相手をしていく。
一対多の戦闘で動きを止めるのは死を意味する。
強い個よりも弱くとも集団の方が強いと言われるのは、数のせいで個の方が後手後手に回ってしまうのが原因だと僕は思う。
ならば個が負けないようにするにはどうすればいいのか。
まずは囲まれないようにするのが前提条件。
今も、囲もうとしてくる一点から外へと切り出ている。
囲まれれば一斉に攻撃されてしまうからだ。
「ふっ!」
そのまま極力囲まれないようにしつつ、一体一の形に持ち込めるように立ち回って倒していく。
これらのことも全部キャメルさんから教わったことだ。
キャメルさんは何も知らなかった僕を『ゴースト』という物理攻撃のきかないモンスターの群れの中に放り込み、その戦い方を文字通り叩き込んでくれた。
あの時は本当に死ぬかと思った……。
着々とゴブリンの数を減らしていく僕に怒ったのか、オークも何体かこちらに向かってきた。
オークは体が大きく力も強いので正面から打ち合うと危険だ。
僕はゴブリンを切りながらオークの後ろに回りこみ、その背中を攻撃していく。
「ッ!?」
何回かオークに攻撃していると、そのうちの一体のオークから火の玉が飛んできた。
僕はその玉を紙一重で回避し、少し距離をとった。
「今のがレッドキャタピラーの火魔法か……」
近づけばオークの怪力で握りつぶされ、後ろに回ればレッドキャタピラーの火魔法が飛んでくる。
厄介な組み合わせではあるが……。
「僕には関係ないんだよなぁ」
僕はオーダーに魔力を込め、それを一閃。
魔力の斬撃が飛び、正面から数体のオークを切り裂いた。
斬撃はそのまま飛んでいき、オークの後ろにいたゴブリンたちをも切っていく。
三〇分ほど戦い続け、地上のモンスターは後二〇体くらいに減っていた。
ここまでワームは一度も地上に出てきていない。
だいたい倒したモンスターの数を見るに、ワームの数は三〇体前後だと思う。
僕的に一番めんどくさいのはワームだと思ってるから出来れば残りのゴブリンたちを処理してから出てきて欲しいんだけど……。
「——そうもいかないかッ!」
地面に揺れを感じ、その場を飛び退ると、さっきまで僕の立っていた地面から赤黒い何かが飛び出してきた。
赤黒い何か……まぁワームなんだけど、そいつは地中から出てきたにも関わらず粘液のようなものでてらてらと光っており、鋭い牙がびっしりと生えた口を僕の方に向けて止まっている。
地方によってはこのワームに畑を耕させている所もあるというのだから驚きだ。
「はぁッ!」
動きが止まっているの好機と見た僕は、一瞬でワームとの距離を詰め、その頭? のような場所を切り飛ばした。
ワームは頭を飛ばされても数秒体をうねらせていたが、じきに動かなくなった。
このまま少しづつ数を減らしていこう……と考えたところで、街の方から何人かの人間が向かってきているのの気が付いた。
どうやら援軍が来たらしい。
「人数的にもうちょい減らさないと危ないかな……?」
モンスターの数に対して、援軍はたったの一〇人しか来ていないようだ。
ていうか、見た感じフォーサイス家に報告に行ってた騎士風の人もいるっぽいんだけど、勝手に来たの怒られたりしないよね?
ま、まぁ……大丈夫だと信じるしかないが……。
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