【第三〇話】
遅くなってしまいすいません!
「……ぐぅ」
僕はチクチクとした感触を背中に感じながら目を覚ました。
どうやら藁の塊の上で眠っていたようだ。
「んん……どこだ、ここ?」
どこかの部屋にいるようだが、見覚えはない。
何があってここに来たのか整理しようとすると、何故か頭が割れるように痛くなる。
僕は近くに誰かいないかと辺りを見渡してみる。
すると、部屋の端に何かいるのを見つけた。
「モグラ……?」
そこに居たのはモグラだった。
モグラは部屋の端にポツンと佇み、こちらを見ている。
何の気なしに、モグラに頭を下げてみると、モグラも僕に頭を下げてきた。
何だこの子、かわいいぞ……!
立ち上がろうと藁に手を着くと、何か固いものが当たった。
なんだろうと思い見てみれば、僕が寝ていた横辺りにオーダーが置かれていた様だった。
僕はオーダーを剣帯に戻す。
……あれ? なんで僕はこの剣の名前が“狂った世界に安寧を”だって知ってるんだろう……
確か……僕は村に戻って剣を再封印しようとして、それから誰かと戦闘になって……
ぐっ、頭が……痛い
ダメだ、思い出そうとすると酷い頭痛に襲われる。
ひとまずいつまでもこの部屋にいてもどうしようもないから、部屋を出てみようかな。
「クゥアアアアアア!」
僕が藁のベッド? から立ち上がると、突然さっきのモグラが叫び始めた。
えっ、なんで?
急にどうしたんだろうか。
「クァアアア! クゥアアアッ!」
僕がモグラの近くに行こうとすると、鳴き声が変化した。
ていうか今更だけど、モグラってこんな鳴き声だったか?
村でも時々出たけど、もっと可愛い鳴き声だった気がするんだけど……
「お、目が覚めたのじゃな。気分はどうじゃ?」
僕がモグラをどうしようかと思っていると、部屋の扉が開き、外から十歳程の少女が入ってきた。
「えっと……? 君は?」
「ん? なんじゃ、貴様記憶が混乱しとるのか。……もしかしたら妾の血を飲んだことも影響しとるかもしれんの……」
血?
この子はなんの話しをしてるんだろう。
それにしても、この子どっかで見たことがある気がするんだよなぁ……
「そうじゃな、妾のことはその剣にでも聞いたらわかると思うのじゃ。それより、起きたのなら早速行くぞ」
そう言って、少女は部屋を出ていってしまった。
取り残されたのは、訳が分からないでいる僕と、奇声を上げ続けるモグラだけだった。
***
あの後すぐに、僕はモグラを抱えて部屋を出た。
最初はモグラも置いて行こうか迷ったけど、何となく一人で置いておくのも可哀想かと思って連れてきてしまった。
抱えたら奇声もあげなくなったので、これでいいのかな、なんて思いながらも僕は少女の後をついていく。
「目的地まではそこそこ時間がかかる。今のうちに忘れていることを剣に聞いといた方がいいのじゃ」
少女はこちらを振り向き、それだけ言うとまた進み始めた。
さっきから剣に聞くって言ってるけど、どういうことだ?
剣ってのはオーダーのことだろうし、こいつに意思があるとでも言うのだろうか?
いや……そもそもなんで僕はオーダーの名前を知っているんだ?
どうして僕は彼女を知っている?
あれ……? 彼女ってなんだ?
どうして……思い出せないんだ……?
「なぁ、君は剣に聞けって言うけど、この剣は話せるの?」
「ん? 貴様はそれすらも覚えておらぬのか? 妾の血がききすぎてしまったかの……? 記憶の混乱だけではなく消失まで起こっておる……」
少女は何かをぶつぶつと呟いて、それから顔を上げ、口を開いた。
「仕方がないから妾が少し説明してやるのじゃ。貴様と妾は戦った。そして妾が勝った。貴様の傷を妾が回復させてやった。貴様をここまで連れてきた。以上じゃ」
「えっ……えっと? 随分と簡潔な説明だね?」
「細かいことをチマチマと説明するのは苦手なのじゃが……貴様が記憶を失っているのは、妾が貴様を回復させるために血を飲ませたのが原因だと思うのじゃ」
地? 僕はこの子の血を飲んだの?
「——妾は吸血鬼じゃから、血を飲ませるのはそれほどおかしなことでもないぞ」
僕が聞くよりも早く、少女は僕の疑問に答えてくれた。
そのまま歩き続けて、僕と少女は一つの家の前に立ち止まった。
「っと、そろそろじゃ。これから会うのはとても偉いお方じゃから、くれぐれも失礼のないようにするんじゃぞ」
「わかった」
そして、少女が扉を開いた。
やっと30話ですね。
少し忙しかったので書いてる時間が取れず、間が空いてしまいました。
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