【第二三話】
僕達は、レストランに入ってメニューを見ていた。
「ここのオススメは店長自ら作るカルボナーラよ、私たちも賄いで時々食べるの」
「へぇ……じゃあ僕は、そんなオススメのカルボナーラを頼もうかな」
「それなら私はピザにしようかしら。みんなで分けて食べられるし……」
「お肉食べたい……」
僕がカルボナーラで、エリカがピザ、ミリカは肉ってことだから……ステーキ? で決まった。
メニューを見たけど、何がどんな料理なのか検討もつかないので、とりあえずオススメを聞いた。
頼むものが決まると、エリカはテーブルの上に置いてあった金色のベルを押す。
しかし、音は出ずにベルの色が青色に変わっただけだった。
「今のは?」
「このベルを押すと店員さんを呼べるの。詳しいことはよく分からないのだけど、このベルの中に魔法陣が仕込まれてて、押すと起動して店員さんが来るって感じよ」
「ほぉ……」
やはり魔法ってのは便利だな……
ほんと、なんで僕には適性がないんだろうか。
魔法が使えれば、もっと戦闘の幅も広がるのに。
と、僕がすこし落ち込んでいる間に店員さんが来て、エリカとミリカはスラスラと注文していた。
さすが、働いているだけあって慣れてるんだろう。
僕なんてこういうお店に来たのが初めてだったから、何をどうしたらいいのか全く分からない。
完全に二人に任せっきりだ。
注文が終わり、品が届くまでに時間があるということで二人と色々なことを話し合った。
さっき見た劇の話しや、将来の夢など。
こうして考えてみると、二人としっかり話すのも久しぶりかもしれない。
今までは、僕は基本図書館に篭もりっきりだったし、宿に帰っても二人は仕事で疲れていたので直ぐに眠ってしまっていた。
そのためまともに会話するのは宿に泊まり始めた初日以来かもしれない。
いざこうして話してみると、一月が長いのかは分からないけど、それだけの期間一緒にいたのに、僕は二人のことを全然知らなかったのだと実感した。
話していると、思っていたよりも早く時間が経ってしまい、頼んだものが届き始めた。
最初に届いたのはミリカのステーキだった。
注文の時点で小さめのサイズを頼んでいたので、出てきたステーキもそこまで大きくなく、女の子でも十分に食べ切れる量だった。
次に届いたのがエリカのピザで、元々がファミリーサイズなのか、とても大きかった。
なんなら三人でも食べ切れるか不安な大きさだ。
そして最後に届いたのが、僕のカルボナーラだ。
チーズと牛乳をベースに作られたソースに絡められたパスタがとても美味しそうだった。
「それじゃあ食べましょ」
「うん。みんな美味しそうで待ちきれないよ」
そして、手を合わせてから食べ始める。
貴族なんかはここで「感謝を」とか言って食べ始めるんだろうけど、一般的にはこれから食べる食材への感謝を込めて手を合わせるだけだ。
いちいち口に出すのはそれこそ貴族や生命神の信者くらいだろう。
と、話がそれだけど、今は料理のことだ。
僕はまず、フォークにカルボナーラを巻き付けて一口。
口の中で、クリーミーなソースが蕩けて幸せだ。
濃厚なソースとは正反対に、味はサッパリとしていていくらでも食べられるような気すらしてきた。
二人はこんなに美味しいものを食べてたのか……
僕も少しは料理を嗜む者として、是非ともこのレシピを教えてもらいたいものだが、さすがに無理かな。
「どう?」
僕が食べたのを確認すると、エリカが不安そうな顔でそう聞いてくる。
「すっごい美味しい」
僕は感じたままに伝える。
ほんとに美味しかった。
是非ともまた来たい。
そんなふうに、楽しみながら昼食を食べた。
***
「んんぅ……そろそろいい時間だし、次がラストかしらね」
昼食を食べ終わって、会計を済ませてから僕達はまた街を見て回っていた。
王都の近くにある湖で釣れた、五メートル程の大きさの魚を捌いているのを見たり、服屋でいくつか服を見たり、大道芸を見たりしていたらもう空はオレンジ色に染まっており、もうすぐ日が沈んでしまいそうだった。
最後にと連れてこられたのは、この王都を見渡せる展望台だった。
またしても魔法が使われているのか、宙に浮く床で一気に最上階までやってくると、最上階はガラス張りになっており、暗くなり始めて、至る所で灯りがともり始めた街を一望できた。
「きれい……」
「綺麗ね」
「……あぁ」
あまりに綺麗な景色に、一瞬言葉が出てこなかった。
「ありがとな、今日はこんないいところに連れてきてくれて……」
僕が二人にそうお礼を言うと、二人は首を振る。
「ねぇ、ルイスはさ……もうすぐどっか行っちゃうんでしょ……?」
「ッ! 一度、村に戻ろうかとは思ってたけど。まだ言ってなかったのによく分かったね」
「図書館に用があるって言ってたから、調べ物をするために来たんだってわかってたんだけど……昨日の時点でその調べ物も終わったんでしょ」
全部バレていたようだ。
「それがわかってて、僕をここに連れてきたの?」
「最後だからよ! 私たちは助けて貰ってばかりで何もお返しができていなかったから……これで全て返せたとは言わないけど、少しくらいは返せればと思って……」
なんかさっきから二度と会えないみたいな感じになってるけど、僕としては王都には戻ってくる予定なんだよなぁ……
どうしよう、言うべきか言わないべきか……
いや、言うべきなんだけどさ。
「えっと……凄いいいこと言ってるとこ悪いんだけど、村には戻るけど、多分直ぐに王都に戻ってくると思うんだ」
僕が、エリカ達の勘違いを訂正すると、二人は段々と涙目になってきて……
「だったらもっと早くそう言いなさいよっ!」
「言うのが遅いよ……!」
一斉に突っ込まれた。
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