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【第一九話】

「んぐっ……重い……」


 僕は腹部にかかる圧力で目を覚ました。

 見れば、ミリカが僕に乗っかって眠っていた。

 エリカは寝た時と同じ場所で体を丸めて眠っている。


 部屋のカーテンから覗く空を見れば、まだ太陽も出ておらず薄暗かった。

 素振りをしに行くにしてもさすがに早すぎたので、僕はミリカを起こさないように横に下ろしてからもう一度目を瞑った。



 ***



「——九十八! 九十九! 百!」


 あの後二度寝をして、改めて目が覚めると日が昇って少し経ったくらいの時間だった。

 さっきしっかりと直したはずなのに何故かまたミリカが僕の上に登ってきていたが、起こさないように下ろしてきた。


 そして僕は今、宿の裏手にあるちょっとしたスペースで素振りをしていたところだ。

 と言ってもちょうど終わったところだが。

 時間的には六時かそこら辺だろう。


 エリカ達が起きてたら朝ごはん何食べたいか聞こう。

 まだ寝てるようなら卵焼きにしよう。

 何となく今日は卵焼きが食べたい。


 僕は持ってきていたタオルで汗を拭きながら、そんなことを考えつつ部屋に戻った。

 部屋に着き、二人がまだ寝てる可能性も考えて、ゆっくりと扉を開ける。


「えっ……」


 すると、目の前には正座しているミリカと腕を組んで仁王立ちするエリカがいた。


「どこ行ってたの」


 えらく不機嫌そうな声でそんなことを尋ねてくるエリカ。


「えっと……素振りをしてました」


 なんだろう、決して怖くはないのにこの逆らったらいけないような雰囲気。


「お兄ちゃん、ここに座って」


 するとミリカも目の前を指さして座れと促してくる。

 僕は逆らわずに指定された場所に座る。


「正座して!」


「は、はい」


 普通にあぐらをかいて座ったら、ミリカに怒られた。

 直ぐに正座に直す。


「あのー……なんで僕は怒られてるのかなぁって……」


「私が起きた時、お兄ちゃんがいなくて出てっちゃったんじゃないかって心配した」


 あ……


「私は心配してなかったけど、何も言わずにどっか行くのやめてよね」


 確かにそうだ。

 書き置きするとかすれば、二人に心配かけることもなかったのに、そんなこと全然思いつかなかった。


「ごめん」


 一人で過ごしていた時間が長すぎて、周りの人への配慮が欠ける時があるなぁ。

 気をつけないと。


 僕が二人に謝ると、ミリカは僕の方に飛びついてきてエリカは近くまで寄ってきたもののミリカと違い飛びついてくるようなことはなかった。


「二人とも、心配させたお詫びってわけじゃないけど朝ごはんは好きな物を作ろうか。何が食べたい?」


「……何でもいいの?」


「うん。僕も作れないものもあるから出来るだけってことになるけど」


 僕がそう言うと、二人はすこし悩んだ後に答えた。



 ***



「美味しい……!」


「昨日も思ったけど、美味しいわね……」


 僕が作ったご飯を食べて、二人がそう言ってくれる。


「そう言ってくれると作った甲斐が有るよ」


 結局二人が食べたいと言ったのは、エリカは昨日の夕飯に食べたコンソメのスープで、ミリカがからあげだった。

 二人に食べたいものを聞いたけど、やっぱり僕も卵焼き食べたいから全部作ることにして、足りない材料なんかを買い出しに行ってきて、作った。


 コンソメスープは昨日とほとんど同じで、今回はベーコンが入っている。

 からあげは結構上手く出来て、こんがりキツネ色に揚げて外はサクサク、中はジューシーというほぼ理想通りのからあげが出来た。

 卵焼きは僕の個人的な好みにより甘めだ。


「美味しかったぁ」


「満足」


 気がつけば、もう食べ終わっていた。

 からあげの消費が特に凄かった。

 皿を片付けながら、また作ろうと心に決めるのだった。


「二人は今日どうする?」


「私たちは、職業斡旋所に行ってみようかと思ってるけど」


「そっか、僕は図書館に行ってくるから今日は別行動になるな。お昼ご飯はどうする?」


「外で何か食べようかと思ってたけど」


「了解、じゃあ僕は先に出るけど戸締りよろしく」


 そうして僕は準備をして、王立図書館に向かうのだった。



 宿を出ると、もう既に外は結構な人が行き交っていた。

 僕は図書館を探すついでに街を見て回ることにし、歩き出した。


 さすがは一国の王都と言うだけあって、朝でも活気が溢れていた。

 屋台が多く立ち並び、朝食なのかそれらを買っていく人もちらほら見かける。


 何となくで人が流れて行っている方に進んでいくと、とてつもなくでかい建物が見えてきた。

 中心にそびえ立つ王城と比較してもすこしこちらの方が小さいかなと思うくらいの大きさの建物だ。


 壁には、『王立図書館』と書いた看板が貼り付けられており、この建物が僕が探していたものだと一目でわかった。

 もう開館しているようで、研究者風の人や、豪華な服を着た人達が出入りしていた。

 それをみて、僕も早速中に入って見ることにする。


 中に入ると、それは壮観で、壁には所狭しと本が詰められており、何階まであるか分からないが床が吹き抜けになっているので、今見ただけでここにはとてつもない量の本があることがわかった。


「こんにちは。王立図書館へようこそ。こちらの本をご覧になりたい場合は、貴族様であるか、その紹介が必要になります」


「あ、紹介状があります」


 僕が、本の多さに驚いていると、近くの受付に座っていた男性がそう声をかけてきた。

 僕は、アシュタルさんに貰った紹介状を取り出し、渡した。


「公爵様の紹介ですね。はい、問題ありません。それでは当館の説明をさせていただきます。当館では本の貸出は行っておりません。勝手に持ち出すと罰金になりますのでお気をつけください。館内で本を破損させてしまった場合も同じく罰金となります。館内は飲食禁止となっております。お探しの本があるようでしたら、あちらのタブレットから検索をかけて頂くと、どこにその本があるか導いてくれます。……説明は以上ですが、何か質問などはございますでしょうか」


「いえ、大丈夫です」


 とりあえず、本は持ち出さない、大切に扱う、これらを徹底すれば罰金はないだろう。

 飲食もするつもりはないし。


「それでは、どうぞお楽しみください」


 そう言って男性が頭を下げたので、早速僕はパネルの元に向かった。

 タブレットには、いくつかの枠があり、本のタイトルや該当するキーワードで検索をかけることができるらしい。


 タイトルは分からないので、キーワードで検索をかけることにし、『剣』『封印』『外せない』などで検索すると、三十本近くの本がヒットした。


「多いな……」


 全部調べ切るのに相当な時間がかかりそうだ。

評価や感想、ブクマなどして頂けると支えになるのでぜひよろしくお願いします。

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