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【第一五話】

「がっ!」


 ところが、衝撃は一向に来ず、金属が弾かれるような音だけが聞こえてきた。


 目を開けるとそこには、一振の剣が浮いていた。

 鞘付きで。


「なんだ……この剣……」


 どこかで見たことがある。

 というかついさっきまで身につけてたはず。

 なんなら僕が何をやっても外せなかった気がする。


「てめぇ! なんだその剣はァ!」


「知らないよ! こっちが聞きたいくらいだわ!」


「……えぇ?」


 大男が怒鳴ってきので、逆ギレすると困惑したような顔でこちらを見つめてくる。

 しかし僕はそれどころじゃない。

 もう外せないと思ってた剣が何故か知らないが僕の元を離れた。

 どうして浮いてるのかとか、この剣が僕を守ってくれたのかとか、色々とあるが何よりも外せたことが嬉しい。


「あっ!」


 喜んでいたら、剣は勝手に僕の手に収まり……


「どうしてだよぉぉお!」


 またしても剣は僕の手から離れなくなってしまった。

 くそ! さっきは完全に離れてたじゃないか!

 なんで戻ってきちゃったんだよ!


「おい」


「なに!? 今忙しいんだけど!」


「あっ……えっと、女共を……」


 女共ぉ?


「そもそもお前らがこんなことしてこなかったら何事もなく王都に着けてただろうが!」


「う、うるせぇ! 死ねぇぇ!」


 大男は大剣を横凪に振る。

 すると、剣が勝手に動き、僕の考えを無視して迫り来る大剣の腹を叩いた。

 すると甲高い音を立てて、大剣は叩かれた場所で真っ二つに折れてしまった。


「えぇぇぇぇぇぇ!?」


 叩き折られた本人である、大男は目ん玉が飛び出さんばかりに驚いて自身の大剣を見つめる。


 声こそ出さなかったが、僕自身も驚いていた。


「ふっ!」


 そして、先程まで大男と一緒にいたフードさんが死角から短剣を突き刺そうとしてきているのにも勝手に反応して、剣が……いや、僕の体が僕の意思とは無関係に動き、フードさんの短剣を弾き飛ばした。


「なっ……完全な死角だったはず……」


 いや、そうなんだけど……

 なんで反応できてんの?

 なんか僕の体のことなのに僕自身が一番ついていけてないっていう……


「くっ……てめぇ、今まで手ぇ抜いてやがったのか」


「えっ? あ、あぁ、そうだよ!」


 急に大男がそう言ってきたのでつい適当に答えてしまった。

 さっきは完全に本気で戦ってたんだけど……


「ちっ……こうなりゃしょうがねぇ。おい、てめぇら! ずらかるぞ!」


 そう言って大男たちは馬車から逃げていった。


 なんかよく分からないけど……何とかなった、のか?



 ***



 その後、御者の人達にすごい勢いで頭を下げられて、逆に馬車を壊してしまったことを謝ってから、穴の空いた馬車に乗り王都に向かって再出発していた。


「…………」


 しかし、さっきまでと違うところが一つ。


「ね、ねぇ、あんた名前は? さっきは、その……助けてくれてありがとう。ちょっとかっこよかったわよ……いや、別にかっこよくなかったけどね!?」


 僕が座っている右側に少女Aが座り、顔を赤くしながら何かをまくし立てている。


「……そ、その。えっと……ふぇぇ……」


 そして左側では少女Bが僕の服の袖を摘んでふぇぇふぇぇ言ってる。


 さっきまでの態度は何処へやら。

 いきなり距離が縮まって、こんなことになっている。

 ハッキリ言おう。

 どうしてこうなったッ!


「……いや、まず二人のこと教えて欲しいんだけど」


 僕はひとまず襲われた理由を知りたかったので、少女Aにそう聞く。


「えっ!? 私のことが知りたい!? そんな急に……恥ずかしいけど、あんたなら……まぁ。まず、スリーサイズが上から85——」


「待て待て! 違うから! 名前とか、なんで襲われたのかとか、そういうのが聞きたいだけだから!」


 ほんとにこの子は何を言ってるんだ……

 いきなり、す、スリーサイズとか……

 上からって言った? え? 85?

 ……ゴクリ。


 いや、違うだろ!

 なんでだよ!

 ゴクリじゃねぇわ!


「あ、えっ、あぁ……名前ね。えっと……私はエリカ」


「……わ、私はミリカ……でしゅ……」


 思考が変な方向に行きそうになっていると、少女Aもといエリカと少女Bのミリカが名乗ってくれた。


「エリカとミリカだな。僕の名前はルイス、ルイス・イングラムって言うんだ。ルイスって呼んでくれ」


「じゃ、じゃあ、ルイス」


「……ルイスお兄ちゃん」


 お兄ちゃん?

 呼びなれなくて恥ずかしいような気もするけど……


「まぁいいか。それで、二人はなんで狙われてたんだ?」


「……そ、それは」


「…………」


 肝心の狙われた理由を聞くと、二人は急に黙り込んでしまった。


「さっきまでは僕も無関係だったけど、今はもう無関係じゃ居られないだろ? どうしても話したくないって言うなら無理に聞かないけど、出来れば話して欲しいかな」


 確実に厄介事のような気もするが、もう既に巻き込まれてしまっている。

 正直、ここまで来たらこの二人を安全なところに送り届けたいとも思ってる。


「お姉ちゃん……」


「……そうね。ここまで巻き込んでしまったのだし、言うべきかも……」

評価や感想など支えになるのでぜひ。

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